日本語版Highlights
Volume 35, Issue 1-3 (2025)
Issue 3 (March 2025)
Issue 2 (February 2025)
Issue 1 (January 2025)
Volume 35, Issue 3 (March 2025)
- 東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査では、成人を対象に自記式の食物摂取頻度調査票(TMM-FFQ)を使用している。
- TMM-FFQの各項目にある選択肢「体質的に食べられない/飲めない」を回答した割合は、いくつかの食品項目で高かった。
- TMM-FFQから推定した食品群の摂取量と秤量食事記録による実測値を比較した結果、TMM-FFQは中程度以上の妥当性を示した。
- 2回のTMM-FFQから推定した食品群の摂取量を比較した結果、TMM-FFQは中程度以上の再現性を示した。
- 「体質的に食べられない/飲めない」という選択肢を有するTMM-FFQは、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査で利用可能であることが示唆された。
- 配偶者のがん罹患後に、男性と女性のいずれにおいても、全死亡リスクは上昇しなかった。
- 配偶者のがん罹患後に、男性において自殺リスクが有意に上昇した。この上昇は、配偶者のがん罹患後、5年以上後の期間まで継続して認められた。
- 配偶者との死別後に、全死亡、心血管疾患による死亡、呼吸器疾患による死亡、外因死のリスクが男性において上昇したが、女性においては上昇しなかった。
- 配偶者との死別後の、男性における心血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクは、喫煙状態によって異なっていた。これらのリスクは、喫煙歴のある人で上昇し、喫煙歴の無い人においては上昇しなかった。
- インドでは、乳がん検査(9/1,000)、子宮頸がん検査(20/1,000)の受診率が低い。
- 乳がん・子宮頸がん検査受診の社会経済的格差は、都市部に比べて農村部で大きい。
- 受診率は、インド南部で最も高く、東部と北部で低い。
- 検査受診の教育歴による格差は、すべての地域で顕著である。
- 決定要因:教育歴、社会経済状態、過体重、地域の教育レベル、居住地(南部・都市部)
Validation of Self-reported Medical Condition in the Taiwan Biobank (台湾バイオバンクにおける自己申告による医学的状態の検証)
- 台湾バイオバンクの自己報告と請求記録との一致度は、ほとんどの臨床診断について概ね中程度の一致を示した。
- 一致度は、高学歴者ほど高く、既婚者ほど低かった。
- 請求データベースから補完的なデータベースを統合することで、カスタマイズされたアルゴリズムを通じてより精度を高めることができる。
Non-cancer-related Deaths in Cancer Survivors: A Nationwide Population-based Study in Japan(がん生存者におけるがん以外の死亡:日本における全国人口ベースの研究)
- がん生存者のがん以外の死亡は時間とともに増加し、診断から6か月後で10.2%、4年後で31.6%であった。
- がん以外の死亡原因として、心疾患、脳血管疾患、および肺炎が主要な原因であった。
- 自殺による死亡リスクは、男性では診断後2年で、女性では診断後2.5年で一般人口集団と同等になった。
- がん患者におけるがん以外の死亡が時間とともに増加した結果は、併存疾患の管理の必要性を強調している。
Changes in Mortality During the COVID-19 Pandemic in Japan: Descriptive Analysis of National Health Statistics up to 2022(新型コロナウイルス感染症パンデミックにおける日本の死亡率変化:全国レベルの保健統計による2022年までの分析)
- 日本では2022年の年齢調整死亡率は前年に比べて男性で6.0%増加、女性で6.5%増加し、地域別にみても全都道府県において男女とも年齢調整死亡率は増加していた。
- 年齢調整死亡率増加に寄与していた死因の上位は男女計で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、老衰、心疾患、女性では加えて悪性新生物であった。
- 年齢調整死亡率増加の寄与は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が第一位で、男性で+29.1(人口10万人あたり)、女性で+13.4(人口10万人あたり)であり、老衰が第二位で、男性で+14.1(人口10万人あたり)、女性で+12.5(人口10万人あたり)であった。
- 新型コロナウイルス感染症パンデミックの公衆衛生および保健医療システムへの長期的な影響について継続的にモニタリングすることが必要である。
Volume 35, Issue 2 (February 2025)
Review Article
Seasonal Variation in the Intake of Food Groups and Nutrients in Japan: A Systematic Review and Meta-analysis (日本人成人における食事摂取量の季節間変動:系統的レビューとメタアナリシス)
- 日本人成人における食事摂取量の季節間変動を明らかにすることを目的に系統的レビューを実施した。
- 各研究で報告された季節間変動は、ほとんどの栄養素と食品群で一貫していなかった。
- 2季節ごとに摂取量の平均値を比べたメタアナリシスでは、野菜、果物、いも類に有意な季節差がみられた。(6比較中5比較)
- 含まれた研究の異質性が大きく、摂取量の平均値の差は必ずしも季節の違いのみによらない。
Changes in Alcohol Consumption During and After the Covid-19 Pandemic From 2020 to 2023 in a Prospective Cohort of Italian Adults [COVID-19流行下および流行後(2020年から2023年)のアルコール摂取量の変化 :イタリア人を対象とした前向きコホート研究]
- 高リスク飲酒者割合は、ロックダウン前は26.4%、ロックダウン中は23.4%、ロックダウン後は30.0%で維持され、パンデミック後、高リスク者が増加した。
- 経済状況が悪いほど、高リスク者割合が低下した。
- 若年層、経済的地位の高い女性、既婚者において、高リスク飲酒者割合が高かった。
- 不安や抑うつ傾向ありの者、向精神薬使用者、タバコ常用者では、高リスク飲酒の傾向を認めた。
- これまで一般高齢者における早期低栄養リスクを簡便に評価するツールはなかった。
- 本研究では、厳格な尺度開発プロセスを経て、4因子13項目からなる指標を開発した。
- 本指標は良好な内部信頼性と基準関連妥当性を有し、早期低栄養リスクを評価できる可能性が示された。
- 幼児期(5.5歳)の子どもの身体活動に対する妊娠前から育児期(妊娠前、妊娠中、産後1.5年、3.5年、5.5年)にかけての母親の累積身体活動の影響を検討した。
- さらに、どの時点の母親の身体活動が子どもの身体活動に関連するかについても検討した。
- 母親の身体活動の累積レベルが高ければ、5.5歳時点の子どもの身体活動レベルも高かった。
- 妊娠中および産後5.5年の母親の身体活動レベルと5.5歳時点の子どもの身体活動レベルには正の関連が認められた。
Much Lower Prevalence and Mortality of Chronic Obstructive Pulmonary Disease in Japan Than in the United States Despite Higher Smoking Rates: A Meta-Analysis/Systematic Review [日本では高喫煙率にもかかわらず慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率および死亡率が米国よりもはるかに低い:メタアナリシス/系統的レビュー]
- 日本は米国と比べ、特に男性で喫煙率がはるかに高いにもかかわらず、慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡率が有意に低い。
- 日本におけるCOPDの有病率に関する系統的レビューとメタアナリシスを行い、米国と比較した。
- COPDの有病率は、年齢層や性別に関係なく、日本では米国よりも一貫して10%以上低い。
- 日本におけるCOPDの低い有病率および死亡率の要因を調査することは、より効果的な予防戦略の策定に役立つ可能性がある。
- 日本における麻疹ワクチン接種率の地域格差とその関連要因を明らかにするために生態学的研究を行った。
- 各市町村の麻疹ワクチン接種率および潜在的な関連要因に関するデータは、日本の公的統計から取得した。
- 全市区町村のうち、54.3%は麻疹ワクチン接種率が95.0%未満であった。
- 負の二項回帰では、麻疹ワクチン接種率は人口密度と正の相関があった。
- また、麻疹ワクチン接種率は父子世帯、母親の年齢、地理的剥奪指標と負の相関があった。
Volume 35, Issue 1 (January 2025)
Special Article
Methodological Tutorial Series for Epidemiological Studies:Confounder Selection and Sensitivity Analyses to Unmeasured Confounding From Epidemiological and Statistical Perspectives(交絡因子の選択と未測定交絡に対する感度分析:疫学および統計学の視点から)
- 観察研究では、交絡因子をしっかりと同定し調整することが曝露の因果効果を正確に推定するために重要である。
- 本レビューでは、疫学および統計学の視点から交絡因子を選択する原則・アプローチについて網羅的に紹介した。
- また、重要な交絡因子を十分に測定することが困難な場合に有用な感度分析(E-value, Robustness Value)について紹介した。
- これらの原則とアプローチを統合することで、観察研究における交絡因子の選択と対応への理解が深まり、将来の疫学研究に役立つことが期待される。
- 連続変数である曝露と二値変数であるアウトカムで、多くの操作変数が利用できる状況において、いくつかの操作変数法を比較検討した。
- これらの手法に伴うバイアスに、完全に対処することはできなかった。
- 主要分析と感度分析で異なる操作変数法を使うなど、複数の操作変数法を用いることが有用と考えられる。
- 疾病特異的死亡率を疾病発生(媒介変数)と死亡率(結果変数)に分けることで、HCVの自然経過を特徴づけた。
- 3つの肝疾患(例:肝硬変、肝癌)と9つの非肝疾患(例:敗血症、腎疾患、内分泌疾患、高血圧)がHCVによる死亡率を媒介することを特定し、それらの相対的な寄与を表す媒介割合を算出した。
- 直接作用型抗ウイルス剤へのアクセスが限られている発展途上国において、特定の疾病(肝疾患を除く)のスクリーニングを行うことで、HCV感染者の死亡を減らすための保健政策に役立つ可能性がある。
- 所得と大腸がんリスクとの関連は国によって異なる。
- 大腸がんのハイリスク集団である2型糖尿病患者において、大腸がんリスクにおける所得動態の役割は不明である。
- 低所得状態が5年以上継続したまたは所得減少を経験した2型糖尿病患者は、大腸がんリスクの増加を示した。
- 逆に、高所得状態が5年以上継続した2型糖尿病患者は、大腸がんのリスクが低いという関連があった。
- 日本の地域在住高齢者における代謝物のパターンと認知機能低下との関連を検討した。
- アミノ酸を有することは認知機能が良好である方向に関連していたが、ケトン体を有することは認知機能の低下と関連していた。
- メタボロームをモニタリングすることは、将来の認知機能低下を予測・予防するのに有用である可能性がある。
- がん検診および健康診査の自己申告受診歴をがん検診・健康診査の自治体の記録と照合し、その信頼性を検討した。
- 大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がんのがん検診の自己申告受診歴は中程度の信頼性であった。
- 肺がん検診では受診記録のある者で受診したと申告する者の割合がやや低く、健康診査では受診記録のない者で受診したと申告する者の割合がやや高かった。
- がん検診および健康診査の自己申告受診歴を用いて、受診率などを算出する場合にはその解釈に注意が必要である。