日本語版Highlights
Volume 30, Issue 1-12 (2020)
Issue 12 (December 2020)
Issue 11 (November 2020)
Issue 10 (October 2020)
Issue 9 (September 2020)
Issue 8 (August 2020)
Issue 7 (July 2020)
Issue 6 (June 2020)
Issue 5 (May 2020)
Issue 4 (April 2020)
Issue 3 (March 2020)
Issue 2 (February 2020)
Issue 1 (January 2020)
Volume 30, Issue 12 (December 2020)
- 中国の小児・思春期における意図的な/意図的でない外傷の特徴はほとんど知られていない。
- 暴行の59%は鈍的外傷によるものであった。自傷の37%は創傷、23%は中毒によるものであった。意図的でない外傷で最も多かったのは転落(50%)であった。
- 性別、地域、年齢、発生時間、職業、発生場所が意図的な外傷発生の追加的危険因子であった。
- 外傷のメカニズムや発生時間は年齢によって異なっていた。
- より良い医療アクセスによって、収入をベースとした自己申告による口腔状態の格差が是正されたかを検討した。
- 韓国健康栄養調査 (Korea National. Health and Nutrition Examination. Surveys, 2007-2015) の反復横断調査データを解析した。
- 観察期間中、子どもと思春期の若者の平均的な口腔状態が最も改善した。
- ほとんどの群において口腔状態の絶対的格差は改善した。
- 対照的に、口腔状態の相対的格差にあまり変化はなかった。
- 個人レベルのデータを用いた福島第一原子力発電所事故とCTの関連を調べた初めての研究である。
- こどもの軽症頭部外傷患者に対するCTの撮影率は原発事故後に有意に減少した。
- 放射線被曝に関する懸念は不要なCTを減らす可能性がある。
- 一般人口集団を対象とした全国調査による加熱式タバコの喫煙率は報告されていない。
- 本研究では全国調査を用いた日本における成人の加熱式タバコ喫煙率の推計をおこなった。
- 2018年2月時点で、加熱式タバコ喫煙率は男性8.3%、女性1.9%と推計された。
- 縦断研究で歯磨き習慣と代謝疾患との関連性を検討した。
- 歯磨き習慣は肥満や高血糖の発症と関連していた。
- 口腔の健康状態を考慮し、歯磨きの時間と代謝疾患の発症の関連を包括的に検討した点で、本研究は先行研究を発展させた内容を含んでいる。
- 日本人一般成人を対象に、受動喫煙の曝露と抑うつ症状との関連性を検討した。
- 受動喫煙の曝露は抑うつ症状の有症と関連した。これは非喫煙者において有意であった。
- 受動喫煙の規制はメンタルヘルスの観点からも重要な可能性がある。
Volume 30, Issue 11 (November 2020)
- インドを含む発展途上国では、子どもの低栄養は依然多い。
- 多くの疫学研究は平均値を用いて解析をしているが、対象となる子どもの決定要因が根本的に異なる場合、子どもの栄養状態を改善するための努力を過小評価することになりかねない。
- 子どもの体格やヘモグロビン値における集団間および集団内の分散の違い、そしてこの違いを説明する共変量の違いについて考慮することが、現実的な健康政策に必要である。
- インドの高い子どもの低栄養状態に関して、平均値の改善とその分散の変化は連続して起こるもので別々に起こるものではないが、想定する対象集団はより明確に定義されなければならない。
- 本研究では、高齢期において、ライフコースの中での主観的社会経済的地位の推移と死亡の間の関連に男女差があることを初めて明らかにした。
- 男性では、過去の社会経済的地位より高齢期の社会経済的地位が下降していると死亡リスクが高くなるが、女性では同様の関連は認められなかった。
- 女性では、過去の社会経済的地位より高齢期の社会経済的地位が上昇していると死亡リスクが低くなるが、男性では同様の関連は認められなかった。
- 農村部在住の高齢者を対象に、加速度計で評価した座位行動・身体活動と認知機能との関連を検討した。
- 活動の共依存性を考慮した分析において、中高強度身体活動割合が少ないことは認知機能が低いことと関連した。
- 10分以上継続した中高強度身体活動ではなく、10分未満の細切れも含めた中高強度身体活動割合が認知機能と関連した。
- 一方、座位行動割合および低強度身体活動割合は関連がみられなかった。
- 日本人女性において出産経験と循環器疾患死亡リスクとの関連について検討した。
- 出産回数と循環器疾患死亡リスクとの間にU字型の関連が認められた。
- 初産年齢が高い群(28歳以上)で循環器疾患死亡リスクが高かった。
- 初産年齢の高さと循環器疾患死亡リスク増加との関連は、出産回数が3回以上の女性において認められた。
- 成人の中国人を対象とした本研究では、自己申告で把握された 2型糖尿病の情報は大規模な疫学研究で利用可能であることを示した。
- 女性、高齢者、糖尿病の家族歴がある者で特に妥当性の指標が高かったが、教育歴の違いや肥満の有無では妥当性の指標は異ならなかった。
- 糖尿病薬の使用と空腹時血糖値で糖尿病を定義すると、 自己申告で把握された2型糖尿病は良好な感度、特異性、陽性的中度、陰性的中度およびカッパ係数を示した。
- 糖尿病薬の使用、空腹時血糖値およびHbA1c検査を用いて糖尿病を定義すると HbA1c検査を使用しない場合と比較して、未診断の糖尿病症例を把握できたが、 自己申告で把握された2型糖尿病の感度、陰性的中度 、カッパ係数が低下した。
- 日本においてCOVID-19の症例が増加を始めた2020年2月末と4月初旬において地域住民における精神健康度の変化を検討した。
- 精神健康度不良者の割合は9.3%(2月末)から11.3%(4月初旬)へ増加がみられ、特に低年収の者および呼吸器疾患を有する者で悪化した者が多かった。
- COVID-19の予防対策とあわせメンタルヘルス対策を特に低年収層に対して行うことが重要である。
Volume 30, Issue 10 (October 2020)
- 中国、上海市にある小児医療を提供している50の病院において、川崎病の児4452人を対象に調査を実施した。
- 川崎病の罹患率は大幅に増加していたが、冠動脈病変の割合は著しく減少していた。
- 冠動脈狭窄と血栓形成の有病率を初めて詳細に記述した。
- 血小板数が多いこと、低アルブミン、男性、不全型川崎病、免疫グロブリン療法不応、初回の免疫グロブリン療法の施行期間が4日以下あるいは10日より長いことは冠動脈病変のリスクファクターであった。
- 本研究は日本における大学在籍時の教育ローン利用と心理的ストレスの関連を報告した初めての研究である。
- 教育ローンを利用しなかった者と比較して、教育ローンの総額が400万円以上の大学卒業生は深刻な心理的ストレスを有するリスクが1.44倍高かった。
- 一方で現役大学生では、教育ローンの利用と心理的ストレスは有意な関連を示さなかった。
- 日本とフィンランドのいずれにおいても、無配偶高齢男性の死亡リスクは有配偶者より有意に高かったが、女性ではそのような関連は認められなかった。
- 日本とフィンランドのいずれにおいても、大学卒業以上の無配偶男性の死亡リスクが最も高かった。
- 婚姻と教育との組み合わせが死亡にもたらす影響は、各国における健康の社会経済格差の度合いにより異なる可能性が示唆された。
- 2歳未満の子どものほとんどの事故によるケガは自宅で発生する。
- このため、親の行動は事故防止に関して重要である。
- 乳幼児の事故防止において政策レベルのとりくみの有効性を調べた先行研究の結果はまちまちでよくわかっていない。
- 安全チェックリストを通じて親に情報を提供するという市区町村のとりくみは、1歳半前後の子どもを持つ親の事故防止行動の一部を促進する可能性がある。
- 糖尿病と全呼吸器疾患死亡との間に有意な関連を認めた。
- 糖尿病と呼吸器感染死亡との間に有意な関連を認めた。
- 糖尿病とCOPD死亡との間には有意な関連を認めなかった。
- 糖尿病と全呼吸器疾患死亡との関連は、喫煙歴のない人の方が喫煙歴のある人よりも強かった。
- 糖尿病患者に対して呼吸器疾患の予防は必要である。
- 日本の家庭において、3歳半の幼児のおしりをたたくのは、「時々」が62.8%、「よく」が7.9%であった。
- 2001年生まれの子どもの親と比較して、2010年生まれの子どもの親では、おしりをたたく割合が低下していた。
- おしりをたたく割合は、兄弟がいる家庭で高く、三世代世帯では低かった。
- おしりをたたく割合は、主婦や、不安定な職業(パートタイム、自営業、内職)で高かった。
- 父親が育児参加している家庭はおしりをたたく割合が低かった。
- 新型コロナウイルス感染症の流行初期の中国において、国民の意識や個人の予防行動、心理的影響を評価した最初の研究である。
- 感染経路や潜伏期間を知っている人、手指衛生行動を実践している人の割合が高かった。
- 特に湖北省では、かなりの数の人々が不安を感じていた。
Volume 30, Issue 9 (September 2020)
Commentary
Professional Commitment to Ethical Discussions Needed From Epidemiologists in the COVID-19 Pandemic
Professional Commitment to Ethical Discussions Needed From Epidemiologists in the COVID-19 Pandemic
- COVID-19をめぐる様々な倫理問題が議論されている現状を受けて、疫学においてどのくらいCODIV-19の倫理問題が議論されているかについて、PubMedデータベース上で「COVID-19」と「ethics」の2用語を用いて論文検索を行った。
- 抽出論文424編のうち、疫学・公衆衛生領域の雑誌に掲載されたものは39編、さらにそのうちの疫学を冠する雑誌に掲載されたものは1編のみであった。
- COVID-19に関わる倫理問題についての疫学者の関与は、現状ではあまり多くないことが示唆された。
Special Article
Understanding Marginal Structural Models for Time-Varying Exposures: Pitfalls and Tips
Understanding Marginal Structural Models for Time-Varying Exposures: Pitfalls and Tips
- 周辺構造モデルと逆確率重み付けは区別すべきである。
- 周辺構造モデルは推定対象とする因果母数への仮定を表す一方で、曝露確率モデルは観察分布に対する制約を与える。
- 周辺構造モデルと曝露確率モデルは用いる目的が異なっており、それぞれのモデルの誤特定によるバイアスの生じ方も異なる。
- 現実のデータ解析でモデルを特定する際に直面する課題は、周辺構造モデルと曝露確率モデルでは異なる。
- g-公式は、因果効果の識別には逆確率重み付けと同じ条件を要するが、g-公式で周辺構造モデルが推定できるのは飽和した場合に限られる。
- 本研究では、人事データを活用し、職務不満足と長期疾病休業との関連について、生存分析を用いて縦断的に検討した。
- 職務不満足は長期疾病休業のリスク上昇と有意に関連した。また、この関連は心理社会的職場環境によって説明された。
- 心理社会的職場環境の改善は長期疾病休業の予防に有効な可能性がある。
- 女性における雇用形態の健康影響に関する研究において、社会的状況(例:家事や家庭における責任、仕事と家庭の葛藤)や経済状況の影響を検証した研究はない。
- 日本の中年期女性において、非正規雇用者ならびに自営業者は正規雇用者よりも自覚的健康感が良い傾向がみられた。
- 非正規雇用者が正規雇用者よりも自覚的健康が良いことは、非正規雇用者の仕事と家庭の葛藤が正規雇用者よりも低いことによって説明される可能性が示唆された。
- 本研究は日本の地域における子供・青少年の身体活動レベルに関する最初の報告である。
- 日本の子供・青少年の20.1%のみが世界保健機関の身体活動ガイドラインを満たしていた。
- 身体活動は、学年、性、身体活動の好みおよび人口密度と関連が認められた。
- 日本における「就職氷河期」(1993-2004)の健康への影響を検証した。
- 厳しい就職活動期の経験はその後の人生に持続的な影響を及ぼす。
- その影響の大半は社会経済的要因によって媒介されず、直接的に働く。
- 労働市場の硬直性を軽減する必要性が示唆された。
- 3つの大規模集団(初回供血者集団、住民健診受診者集団、人間ドック受診者集団)の1931~1985年出生年別HBs抗原陽性率・HCV抗体陽性率をメタ回帰分析により統合した。
- 統合HBs抗原陽性率は1941-1950年出生コホートで最も高く、その後の出生年では減少傾向を示した。
- 統合HCV抗体陽性率は1931~1935年出生コホートで高く、その後の出生年では減少傾向を示した。
- 本研究の結果は肝炎排除に向けた肝炎対策の一般集団の基準データとして有用である。
Volume 30, Issue 8 (August 2020)
- 本研究は、DHQとBDHQは日本人成人を対象として、でんぷん・糖類のエネルギー調整済み摂取量を個人間でランク付けすることが十分に可能であることを示した。
- 1回のDHQと16日間食事記録のそれぞれで推定した摂取量の相関係数は、調査した全ての炭水化物(女性における麦芽糖とトレハロースを除く)に関して許容範囲であった。(スピアマン相関係数:0.31~0.67)
- 同様に、1回のBDHQと16日間食事記録のそれぞれで推定した摂取量の相関係数も、調査した全ての炭水化物(麦芽糖とガラクトースを除く)に関して許容範囲であった。(スピアマン相関係数:0.32~0.64)
- 各4回のDHQまたはBDHQで評価した摂取量の平均値に関しても、同様の相関係数が得られた。
- DHQとBDHQはともに、調査したほとんどの炭水化物に関して、個人と集団の両方のレベルにおいて摂取量の推定は困難であった。
- 新規に血糖降下薬を開始した非高齢糖尿病患者の6.0% が腎機能の検査を受けていた。
- 腎機能検査群と非検査群でその後の腎機能を比較した。
- 腎機能検査の実施の有無はその後の腎機能低下と関連しなかった。
- 高齢者の運転中止は要介護リスクの増加と関連している。
- 運転中止後の要介護リスクは自律的代替交通手段(公共交通や自転車)を利用することで軽減するかもしれない。
- 高齢者には安全運転と代替交通手段の確保に必要な支援を提供すべきである。
- コーヒーの高摂取は抑うつ症状の有病率低下と関連していた。
- カフェインの高摂取は抑うつ症状の減少とわずかに関連していたが、統計学的に有意な関連ではなかった。
- この横断研究は65~94歳の日本人女性1,992人を対象に実施された。
- 中国人妊婦132,832人のデータを用いて、妊娠週数に応じた体重増加モデルを構築した。
- 妊娠初期の身長体重から低体重、普通、過体重、肥満に区分し、Zスコア曲線を作成した。
- 作成した体重増加曲線は、より的確な妊婦の体重管理に有用である。
- 本研究は、中国における高血圧の診断、治療、管理に関する地理的差異の経年的変化を調査した最初の研究である。
- 中国の高血圧者に占める未診断、未治療、コントロール不良の者の割合は、いずれも2011年、2013年、2015年で徐々に低下したが、都市部と地方での地理的格差があり、また、社会経済的指標の地域差との関連が認められた。
- LINEのチャットボット機能を利用した、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する個別情報提供システム(COOPERA:COvid-19. Operation for Personalized Empowerment to Render smart prevention And care seeking)の206,218人のデータを解析した。
- COOPERAは、COVID-19の疫学的傾向をモニターする初めてのシステムであり、このシステムは、政策決定の支援や医療資源の最適配分のための有用な洞察を提供する可能性がある。
- 参加者の96.93%がいかなる症状も無いと申告した。一方で、発熱の発症日(自己申告)と日別PCR陽性者数との間に0~3日の時間差を伴う有意な相関が認められた。COOPERAで報告されている発熱は、COVID-19の疫学状況を部分的には捉えており、リアルタイムでCOVID-19の流行規模を推定するための有用なツールとなる可能性がある。
Volume 30, Issue 7 (July 2020)
- 新潟県十日町市において農村部高齢者の健康の社会的決定要因を詳細に検討する目的でNEIGE(The Neuron to Environmental Impact across Generation)調査を開始した。527名を対象として、平均年齢は 73.5 ± 5.6 歳、47.3%が男性であった。
- 基本属性において、山間部では教育年数が短かった他は山間部と市街地で差がなかった。
- 生活習慣において、山間部で飲酒率が高かった他は山間部と市街地で差がなかった。
- 身体能力において、筋肉量と握力は山間部で有意に高かったが、歩行速度とバランスは市街地で高かった。
- 日本人労働者において、健康的な生活習慣と抑うつ症状との関連を前向きに調べた。
- 健康的な生活習慣を多く持っているほど、抑うつ症状のリスクが有意に低下していた。
- 健康的な生活習慣の指標と抑うつ症状との関連に寄与する主な要因は、睡眠時間、飲酒、BMI、余暇の運動、喫煙であった。
- 妊娠前後の喫煙状況について記述した研究は少ない。
- 妊娠前後の縦断的な母親の喫煙率について記述した。
- 出産前後に喫煙していた母親の60%は禁煙に失敗していた。
- 若い母親は、有意に出産後再喫煙しやすかった。
- 福島県では2011~2013年に甲状腺検査先行検査が実施された。
- 先行検査を「受診した、受診しなかった(非受診)」に関連する要因を評価した。
- 女子の非受診割合は男子より低かった。
- 震災時の居住市町村から転居した人々の非受診割合は高くなっていた。
Short Communication
Alcohol Drinking and Bladder Cancer Risk From a Pooled Analysis of Ten Cohort Studies in Japan
Alcohol Drinking and Bladder Cancer Risk From a Pooled Analysis of Ten Cohort Studies in Japan
- このプール解析には、日本人集団をベースとした10個のコホート研究が含まれている。
- 飲酒と膀胱がん発症には、男女ともに有意な関連は認めなかった。
- 本研究の否定的な結果は、東アジアにおけるアルコール代謝酵素遺伝子多型の情報を考慮した将来的な研究の必要性を強調するかもしれない。
Volume 30, Issue 6 (June 2020)
- 本研究では、2016年の国民生活基礎調査の情報を用い、代表性のある労働者サンプルにおける援助希求行動と心理的苦痛との関連を検討した。
- 精神科を受診していない20~59歳の労働者78,284人のうち、20~39歳では約9%、40~59歳では6%の者が強い心理的苦痛を報告した。
- 援助希求行動をしていない労働者の割合は40~59歳でより高かった。
- 生活・職業要因の影響を調整した解析の結果、援助希求行動をしていない労働者は年齢階級にかかわらずより心理的苦痛を報告した。また、この傾向は20~39歳でよい強いことが示唆された。
- 認知機能と蛋白尿・推定糸球体濾過量(eGFR)との関連はさらなる知見が必要である。
- 本研究では蛋白尿・eGFRのカテゴリ毎に、認知機能スコア調整値を算出した。
- 蛋白尿と低eGFRとは互いに独立して低い認知機能と関連していた。
- 両者が共存する群で最も認知機能が低かった。
- 中等度の蛋白尿・eGFR低下であっても認知機能低下と関連することが示唆された。
- 親の生活習慣と子供の食習慣との関連について調査した。
- 子供の食習慣には、親の生活習慣に関連するものと子供の生活習慣に関連するものがあった。
- 望ましくない親の生活習慣は、親の食への関心不足と子供の朝食の孤食とに関連していた。
- 本研究では、日本人の一般住民29,375人を対象としてシスタチンC換算eGFR ( GFRcys)とクレアチン換算eGFR (GFRcr) を比較し、リスクモデルから予測される心血管疾患リスクの上昇との関連性について検討した。
- 背景因子で調節した多変量解析の結果、GFRcysは、心血管バイオマーカーである高感度トロポニンT、NT-proBNPと関連していた。
- 吹田スコア高値群のROC曲線 (receiver operating characteristic curve) 下面積はGFRcrよりGFRcysの方が高値であった。
- GFRcysは、GFRcrと比較し心血管疾患の高リスク群の検出に有用であった。
- GFRcysは、GFRcr単独評価に比し、心血管バイオマーカー、吹田スコア高値群とより強く関連し、心血管疾患高リスク者の検出能が優れていた。
Statistical Data
Characteristics of Sports-Related Emergency Transport: A Population-Based Descriptive Study in Osaka City
Characteristics of Sports-Related Emergency Transport: A Population-Based Descriptive Study in Osaka City
- 大阪市において、スポーツ時に発生した救急搬送症例の疫学特徴はスポーツ種目によって大きく異なっていた。
- 症例数の多かったスポーツ10種目は、野球、サッカー、フットサル、バスケットボール、ラグビー、長距離走、ソフトボール、バレーボール、テニス、柔道であった。
- 外傷で最も多かったのは骨折/骨挫傷であり、疾病では熱中症/脱水症であった。
- 心原性心停止の約半数は長距離走時に起こっていた。
Volume 30, Issue 5 (May 2020)
- BMIレベルとメタボリック異常の組み合わせは医科の外来日数や医療費の調整平均値や中央値と関連した。
- BMIレベルとメタボリック異常の組み合わせは歯科の外来日数や医療費の中央値と関連した。
- 医科医療費は肥満/メタボリック異常あり群で、歯科医療費はやせ/メタボリック異常あり群で、最も高値であった。
- やせ/メタボリック異常あり群では肥満/メタボリック異常あり群よりも医科の入院日数と医療費が高値であった。
- やせを考慮したBMIレベルとメタボリック異常の有無で分けた肥満の分類はより正確に医科と歯科の医療費を予測できる可能性がある。
- 本研究は、妊娠回数と妊娠糖尿病との関連を調査した最初の研究である。
- 2012年から2014年に中国で7008人の妊娠中の女性を対象として分析し、潜在的交絡因子を調整後、妊娠3回以上が妊娠糖尿病のリスク上昇と関連していた。30歳以上または妊娠前のBMIが24 kg/m2未満において、関連が顕著であった。
- 本研究は、妊娠糖尿病リスクを評価する際、特に30歳以上または妊娠前BMIが24 kg/m2未満の女性において、妊娠回数を考慮に入れるべきであることを示唆した。
- 日本の地域集団において残存歯数と死亡率の関連を検討した。
- 残存歯数の低下は全死亡率と肺がん死亡率のリスク増加と関連していた。
- 残存歯数と肺がん死亡率の関連は非喫煙者群で弱まらなかった。
- 本研究の結果、日本の診断基準による20歳代と30歳代の千人年当たりのメタボリックシンドローム罹患率が、女性で2.2と5.5、男性で26.3と40.5であった。
- また、40歳代と比較して、女性20歳代と30歳代のメタボリックシンドローム発生のハザート比は0.2と0.5、男性では、約0.5と0.7であった。
- 若年メタボリックシンドロームの発生は、喫煙、食べる速度、運動及びアルコールとの関連があった。以上結果から若年に早期の生活習慣改善が必要であることが示唆された。
- 沖縄野菜は機能性成分を豊富に有しており、抗糖尿病作用が期待されている。
- 沖縄野菜摂取とⅡ型糖尿病リスクとの関連性について、住民ベースの大規模な前向きコホート研究における沖縄地域のデータを用いて検討した。
- 沖縄野菜摂取量はⅡ型糖尿病リスクと関連しなかった。
Volume 30, Issue 4 (April 2020)
Special Article
Causal Diagrams: Pitfalls and Tips
Causal Diagrams: Pitfalls and Tips
- 疫学者は、対象とする因果構造に関する既知の事柄を表すツールとして、因果ダイアグラムを用いてきた。
- 因果非巡回有向グラフは、適切に用いられるならば、因果推論をする上で有用なツールである。
- 因果非巡回有向グラフを用いる際には、避けるべき多くの落とし穴がある。
- 因果ダイアグラムは、研究の様々な段階で非常に役立つものであり、研究デザイン、データ収集、分析、研究結果の解釈などの際に用いられる。
- 因果推論における教育的ツールとして、因果ダイアグラムの価値はとても大きい。
- 血清γ-GTPと慢性腎臓病発症との関連を検討した。
- 血清γ-GTP上昇は飲酒とは独立して持続蛋白尿発症リスクを増大させた。
- 血清γ-GTP値と飲酒を組み合わせて解析すると、非飲酒者でγ-GTP高値群の持続蛋白尿発症リスクが最も高かった。
- 血清γ-GTPと腎機能低下については関連を認めなかった。
- 魚沼CKDコホート研究は、CKDの発症と進行の予防を目的としている。
- この研究は、CKDに関する大規模な住民ベースの前向きコホート研究である。
- この研究は、CKDの個人および社会への負担軽減に有用なエビデンス構築に貢献し得る。
- 本研究では,中高年の日本人集団において,血清microRNAと慢性腎臓病との関連を探索した。
- 血清miR-17,miR-21,miR-150の発現量はそれぞれeGFRと正の関連を示した。
- これら3つのmiRNAについて,低発現群と比較して高発現群においてCKDのオッズ比が有意に低かった。
- 吹田研究対象者において、心臓超音波検査で測定した指標と心房細動発症リスクの関連を前向きコホート研究で検討した。
- 吹田研究の心房細動発症リスクスコアで使用される危険因子を調整しても、左房径は心房細動の発症リスクと有意な関連を示した。
- 左房径を含む、心臓の構造と機能に関する指標を用いて、各指標の1標準偏差ごとの心房細動発症リスクを比較すると、左房径が最も高いハザード比を示した。
- 本研究はアジアの一般住民集団において、心臓超音波検査で測定した左房径の拡大が心房細動の発症リスクになることを示した、最初の前向きコホート研究である。
- 一般住民集団の健康診査等において、左房径は心房細動の発症リスクが高い者を同定する際に有用である可能性が、本研究により示唆された。
- 山形県コホート研究は日本人一般住民を対象とした前向き研究で、本検討では40歳以上の健診受診者17,152例について解析した。
- 笑う頻度は自記述式質問票を用いて調査し、「1週間に1回以上」「月に1回以上1週間に1回未満」「月に1回未満」の3群に分類した。
- 笑う頻度が低い群では、全死亡率および心血管イベント発生率が有意に高かった。
- この関連は、背景因子調整後も変わらなかった。
- 未治療の重症化ハイリスク者を対象に、「受療行動促進モデルを用いた保健指導」による受療促進効果を検証するため、全国43自治体を対象としたクラスターランダム化比較試験を実施した。
- 一般的な保健指導と比較した「受療行動促進モデルを用いた保健指導」の介入効果を検証するための研究データの収集が完了した。
Volume 30, Issue 3 (March 2020)
- 故平山 雄博士は共同研究者と共に、大規模コホート研究として、わが国の6府県(宮城県、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、鹿児島県)での死亡追跡調査を実施し、この地域住民のライフスタイルと死亡との関連を調べた(6府県コホート研究または平山コホート研究と呼ばれる)。
- このコホートのベースライン調査は、1965年の国勢調査に基づく40歳以上の住民を対象に行われ、264,118人(全体の94.8%に相当)が1982年末までの17年間追跡された。
- この研究から得られた最も重要な知見の1つは、受動喫煙(二次喫煙)曝露と肺がん死亡との関連であり、この成果は、その後の屋内の公共の場や職場での禁煙の世界的な広がりのきっかけとなった。
- 本稿は、平山コホートから産まれた主要な研究成果を簡潔に紹介し、わが国だけでなく世界に影響を与える研究成果を得て情報を発信された故平山雄先生の先見的な洞察力とリーダーシップにあらためて敬意を表するものである。
- 鎮咳薬使用後の重篤な呼吸抑制発生は非常に稀であった。
- コデイン含有鎮咳薬と重篤な呼吸抑制発生の関連を認めなかった。
- 本研究は日本におけるコデイン含有薬品の使用規制に際し追加的なエビデンスを与える。
- 日本人男性集団において認知機能と空腹時血糖の関連を検討した。
- 認知機能はCASIで評価した。
- 糖尿病のない男性では血糖値が3.97-6.20mmol/Lの範囲で認知機能が最も高かった。
- 糖尿病のある男性では、血糖値が高いほど認知機能が低かった。
- 血糖値と認知機能との関連は糖尿病の有無により異なっていた。
- 水の摂取量と過体重になるリスクとの間に負の量反応関係を認めた。
- 1日にコップ4杯(1リットル)以上の摂取は過体重となるリスクの低下と関連した。
- 水の摂取量と過体重リスクとの関連は、社会経済要因や生活習慣とは独立したものであった。
- 職業とは独立して、低学歴は日本人の喫煙と有意に関連していた。
- 喫煙の学歴格差は高齢者よりも若い世代、特に20-39歳の女性で大きかった。
- 職業に関しては、学歴などの変数の調整後、ホワイトカラー労働者よりもブルーカラー労働者で喫煙者が有意に多い傾向は20-64歳の男性のみに認められた。
- 65歳以上の女性ではブルーカラー労働者はホワイトカラー労働者よりも喫煙者が少なく、20-64歳女性では職業は喫煙とは関連していなかった。
- 本研究は日本国民の喫煙率だけでなく喫煙の社会格差も留意する必要性を示唆している。
- 21世紀出生児縦断調査のデータを用いて、3-5歳の子どもに対し施設型保育(幼稚園、認定こども園、保育園)を利用しない家庭の特徴を探索的に調べた。
- 社会経済的に不利な家庭(親が低所得、低学歴など)ほど施設型保育を利用しない傾向が示された。
- 子どもに健康や発達の問題(早産など)がある家族も、施設型保育を利用しない傾向が認められた。
Volume 30, Issue 2 (February 2020)
- 特定健康診査では、生活習慣および生活習慣病を調査している。
- 株式会社JMDCの特定健康診査データベースの集計結果を国民健康・栄養調査の結果と比較した。
- 特定健康診査集団の方が若く、良好な生活習慣を有していた。
- 特定健康診査集団の方がメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧症の有病割合が低かった。
- 健康政策を策定する上で、適切なデータベースを選択することが重要だ。
- 10年間の追跡の結果、聴覚の喪失と二重の感覚喪失(聴覚・視覚の両方の喪失)が全死亡の危険因子である可能性が示された。
- 聴覚の喪失は主にがん死亡率の上昇と関連していた。
- うつ状態・歩行障害・社会的参加はメディエータとして、聴覚喪失・二重の感覚喪失と死亡の間の関連を多少説明する程度であった。
- 平成27年度乳幼児栄養調査の協力率は64.1%であった。
- 協力率は、居住地域、世帯構造、母親の特性などの社会経済的要因による違いが見られた。
- 調査協力の有無に起因する調査推定値のバイアスが見られたものの、その程度は小さかった。
- 地域在住高齢者574人を対象とした13年間の前向きコホート研究を用いて,口腔状態と要介護認定の関連を検討した。
- 交絡因子の影響を低減する目的で,傾向スコアマッチングを用いて両者の関連を検討した。
- 残存歯数20歯未満は,要介護認定の独立したリスク因子であることが示唆された。
- 虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)は虐待死の主要因であるが、本邦におけるその発生率は今まで報告されていなかった。
- DPCデータを用いて、2010〜2013年における3歳未満の頭部外傷による入院率とその月齢分布を分析した。
- 1歳未満入院児において、AHTを強く疑う症例は7.2 人(10万人出生あたり)、AHTの可能性がある症例は41.7人の発生率であった。
- AHTを強く疑う症例、およびAHTの可能性がある症例の両者で、月齢2ヶ月と8ヶ月頃に最も多い分布を認めた。
- 日本人を対象とした研究でDIIスコアとCRPに有意な関連が認められた。
- この関連はほぼすべての性別・年代サブグループにおいて観察された。
- DIIは日本人においても適用が可能であると考えられる。
Volume 30, Issue 1 (January 2020)
- 中年期から老年期までの15年間の握力の低下率の増加に伴い、全認知症とアルツハイマー型認知症の発症リスクは上昇した。
- 老年期の筋力を維持することは、認知症発症の予防に重要である。
- 日本の袋井市の10歳と13歳の小児の血清脂質の2007年から2017年の動向について検討した。
- 高LDLコレステロールを持つ者と低HDLコレステロールを持つ者の割合には、性、年齢に関わらず明らかな変化はなかった。一方、高non-HDLコレステロールを持つ者の割合は男児において増加していた。
- 10歳の男女においてはLDLコレステロールとHDLコレステロールの値は僅かに増加していた。13歳の女子においてはHDLコレステロールの値は僅かに増加していた。
- 血清抗体検査と尿中抗体検査両方の結果を用いることで、対象者である中学生のピロリ菌感染診断の正確さの向上を図った。
- 分析した対象はピロリ菌感染者8人と非感染者171人である。
- 非感染者に比べ、感染者ではペプシノゲンⅠ、Ⅱとも高く、ⅠとⅡの比は低かった。
- 中学生のペプシノゲン値の分布は、成人の分布とは異なった。
- 非感染者では、ペプシノゲンⅠ、Ⅱとも、男子が女子より高値であった。
- 沖縄県在住者を対象に野菜、果物および沖縄野菜摂取量と循環器疾患リスクとの関連を多目的コホート研究(JPHC study)において検討した。
- 野菜、果物および沖縄野菜摂取量のいずれも、循環器疾患リスクとの間に統計的に有意な関連は認められなかった。
- 個別の沖縄野菜摂取量(チンゲン菜、からし菜、にがうり、フダンソウ、ヘチマ、ヨモギ、パパイヤ)も循環器疾患リスクとの間に統計的に有意な関連は認められなかった。
- 次世代多目的コホート研究は、生活習慣病の危険因子と、健康寿命の延伸に関連する因子、また、個別化予防に資する因子を明らかにするために、2011年に開始された。
- 2011年から2016年までに、7県16市町村において、ベースライン調査が行われた。
- 115,385名(全地域対象年齢の44.1%)から同意を得て、そのうち、55,278名(参加者の47.9%)から血液と尿の提供を受け、人口ベースのコホート基盤が構築された。