日本語版Highlights
Volume 32, Issue 1-12 (2022)
Issue 12 (December 2022)
Issue 12, Supplement (December 2022)
Issue 11 (November 2022)
Issue 10 (October 2022)
Issue 9 (September 2022)
Issue 8 (August 2022)
Issue 7 (July 2022)
Issue 6 (June 2022)
Issue 5 (May 2022)
Issue 4 (April 2022)
Issue 3 (March 2022)
Issue 2 (February 2022)
Issue 1 (January 2022)
Volume 32, Issue 12 (December 2022)
- 本研究は、東日本大震災後の被災者を対象とした健診における5年目調査の受診未受診と心理的苦痛の関連を明らかにした初の報告である。
- 発災6ヶ月後より被災全住民を対象に毎年行っている「岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究(The Research project for prospective Investigation of health problems Among Survivors of the Great East Japan Earthquake: The RIAS Study)」に参加した10,203名を対象とした。
- 5年目の調査に参加しなかった者を未受診者とし、別途調査票を送り未受診理由および健康状態の把握を行った。未受診理由で最も多かったのは、「職場の健診を受けた」であり、次いで「病院で検査をした」「時間がない」の順であった。
- 未受診者は受診者と比較して、心理的苦痛のリスクが高かった。
- 被災者に心理的苦痛を長期的にモニタリングすることは身体・精神的健康へのケアの必要性や健康状態の悪化防止につなげることができると期待される。
- DPCデータベースを用いて、2015年から2018年のICU病床稼働率を評価した。
- 日本の全ICU病床の約75%にあたる496病院の5341床のICUが評価され、合計137万9618人のICU入室患者が同定された。
- ICU病床に占めるICU滞在患者、人工呼吸器装着患者、及びECMO装着患者の平均病床稼働率は60.0%、24.0%、及び0.53%だった。
- 日本の重症患者医療体制は平時において十分な収容能力を有することが示唆された。
- 災害やパンデミックなどの有事においては、予定手術後患者や侵襲処置を必要としない患者をICU外へ割当てることがICU病床の逼迫を軽減する良い手段であろう。
- 本研究は、成人男女8,829人(男性3,731人、女性5,098人)を対象とした横断研究である。
- 高い筋力と全身持久力の組み合わせは、骨に対し相加的に有益であることを示唆する。
- 男女ともに、全身持久力とは独立して、膝伸展筋力が高いほど低骨硬度の頻度が低い。
- 男性のみにおいて、膝伸展筋力とは独立して、全身持久力が高いほど低骨硬度の頻度が低い。
- 日本人成人女性における全身持久力と骨硬度の関連は明らかではない。
- 家以外で朝食を食べたり、朝食を抜いたりすることが思春期の感情的および行動的問題とより関連することを前向きに示した最初の報告である。
- より若い青年では、全体的な、また注意に関する問題に対する脆弱性が顕著で、また体重少ない人では、非行行動に対する脆弱性が顕著だった。
- 家庭での朝食を増やすと、思春期の感情的/行動的問題が軽減され、心理社会的健康に役立つかもしれない。
- フレイルと心理社会的要因の関連を明らかにするため、気仙沼市の地域在住65歳以上高齢者7845名を対象に郵送法による自記式質問紙調査を行った。
- 宮城県気仙沼市は2011年に起きた東日本大震災の被災地の一つで、地震や津波の被害が大きかった地域である。
- 気仙沼市と協力してフレイル予防(より早期からの介護予防)の取り組みを行う。
- 地域ベースの介入の効果を評価するため、追跡調査を予定している。
Volume 32, Issue 12, Supplement (December 2022)
Review Article
Achievements and Current Status of the Fukushima Health Management Survey (福島県「県民健康調査」の成果と現状)
Achievements and Current Status of the Fukushima Health Management Survey (福島県「県民健康調査」の成果と現状)
- 福島県「県民健康調査」は、東日本大震災後の2011年に開始された。
- 福島県民全員を対象に、福島事故後4ヶ月間の外部被ばく線量が調査された。
- 甲状腺検査3回目までのデータを用いた分析では、放射線量と甲状腺がん、及び疑いとの間に明確な関連性は認められなかった。
- 外部被ばく線量が高い福島の住民は、避難することにより生活習慣病になったり、心理的苦痛を受けたりしている可能性がある。
- これまでの研究において、先天性異常、低出生体重児、妊娠期間短縮、早産と放射線量との関連は見られなかった。
- 福島県「県民健康調査」の一部として、原発事故後4ヶ月間に個々人が受けた外部被ばく線量が評価されてきた。
- これらの線量を震災時に居住していた市町村ごとに集計し、福島県の全59市町村について線量の算術平均、標準偏差、中央値、90パーセンタイル、95パーセンタイル値を評価した。
- 加えて非避難区域に相当する49市町村のそれぞれについて、4ヶ月間の線量を外挿することによって、事故後1年間の市町村平均線量を評価した。
- これらによって評価した線量は、福島県「県民健康調査」に関する今後の疫学研究の基礎となるものである。
- 福島県は、「県民健康調査」の一環として、原発事故当時0歳~18歳の住民を対象とした甲状腺検査を実施している。
- 2020年6月30日現在、1回目、2回目、3回目、4回目、25歳時の検査において、細胞診で悪性ないし悪性疑いの結節があると判定された受診者は、それぞれ116人、71人、31人、21人、7人であった。
- UNSCEAR 2020年報告書で推定された低い甲状腺吸収線量と合わせて、我々の結果は、福島県における小児甲状腺がんの罹患率の増加が放射線被ばくによるものではなく、高感度な方法によるものであることを示している。
- 福島県「県民健康調査」における総合健診の目的は、避難者の健康状態を把握し、生活習慣病を予防することであった。
- 避難者では、震災前と比較して、震災後の心血管危険因子や多血症が増加した。
- 避難区域住民では、2011年から2017年にかけて、肝機能障害の有病率は減少し、高血圧・脂質異常症の治療を受けて数値が安定している人の割合が増加したが、糖尿病の有病率とHbA1cの平均値は増加した。
- 2011年から2017年にかけて、避難者は非避難者に比べて、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、肝機能障害の発症リスクが高かった。
- 今後も避難区域の住民の健康状態を長期的に把握し、生活習慣病の予防対策を行う必要がある。
- 「こころの健康度・生活習慣に関する調査」は、2011年福島災害後の2012年から毎年被災住民に対して行われた。
- 本調査は郵送による質問票により行われ、健康上のリスクを有する人々に対する健康維持と電話による介入支援を目的としている。
- メンタルヘルスの結果については災害後の経過とともに全般的な改善がみられるものの、何らかの精神医学的問題のリスクを抱えている返信者の率は今なお高い。
- いくつかの心理的指標において、福島県外で生活する返信者のほうが県内で生活する返信者よりも健康度が悪い。
- 本調査は今後さらに継続する必要があり、被災者や被災地域のニーズに適した修正が必要となる。
- 自然・環境災害の周産期予後を調べた報告は少ない。
- 2011年東日本大震災以降、福島県では人口集団ベースの調査として県民健康-妊産婦調査が立ち上げられ、毎年実施されている。
- この調査の結果より、東日本大震災は福島県において周産期予後に大きな影響を与えなかったことが明らかとなった。
- この報告は震災により不安を抱える妊産婦にとって大きな公衆衛生的意義を持つ。
- 2011年度から毎年、妊産婦を対象とした「妊産婦に関する調査」を実施し、調査回答者に対して出産後4年目のフォローアップ調査を行った。
- 放射線不安のある母親の割合は、2011年度フォローアップ調査の回答者の方が2014年度フォローアップ調査よりも高く、特に震災直後に出産した母親において、原発事故の影響が長期化していることが示された。
- 原発事故直後に出産した母親に対し、日常的な周産期医療や子育て支援、放射線に関する情報提供、長期的な健康状態の把握など、継続的ケアを行う必要がある。
Original Article
Revisiting the Geographical Distribution of Thyroid Cancer Incidence in Fukushima Prefecture: Analysis of Data From the Second- and Third-round Thyroid Ultrasound Examination (福島県における甲状腺がん罹患率の地理的分布の再検討:福島県「県民健康調査」の甲状腺検査2回目および3回目結果資料の分析)
Revisiting the Geographical Distribution of Thyroid Cancer Incidence in Fukushima Prefecture: Analysis of Data From the Second- and Third-round Thyroid Ultrasound Examination (福島県における甲状腺がん罹患率の地理的分布の再検討:福島県「県民健康調査」の甲状腺検査2回目および3回目結果資料の分析)
- 2011 年の福島第一原子力発電所事故後 6-7 年間の甲状腺がん罹患率の地理的分布を検討した。
- 福島県における甲状腺検査1回目(先行検査)後に診断された甲状腺がんの市町村別標準化罹患比を分析した。
- Flexible空間スキャン統計量とTango’s MEETによる集積性検定の結果、罹患比の空間的な集積傾向は認められなかった。
- 地域別の罹患比と平均的な吸収線量推定値との正の関連を示す統計学的な裏付けは得られなかった。
Effects of External Radiation Exposure Resulting From the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident on the Health of Residents in the Evacuation Zones: the Fukushima Health Management Survey (福島第一原発事故による放射線被ばくの福島県避難区域住民への健康影響:福島県県民健康調査)
- 東日本大震災後の生活習慣病の発症と福島第一原発事故による外部被ばく線量との関係を調査した。
- 調査対象は福島第一原発事故により避難対象となった住民54,087人(年齢16-84歳;男性 22,599人、女性 31,488人)であり、そのうち行動調査の結果がない25,685人の住民の被ばく線量は類似の行動をした住民の結果から補完した。
- 東日本大震災後の生活習慣病の発症と外部被ばく線量には有意な関係は認めなかった。
Original Article
Associations Between External Radiation Doses and the Risk of Psychological Distress or Post-traumatic Stress After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey (福島第一原子力発電所事故後の外部放射線被ばく線量と心理的苦痛,心的外傷後ストレスとの関連:福島県県民健康調査)
Associations Between External Radiation Doses and the Risk of Psychological Distress or Post-traumatic Stress After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey (福島第一原子力発電所事故後の外部放射線被ばく線量と心理的苦痛,心的外傷後ストレスとの関連:福島県県民健康調査)
- 2011年の福島原子力事故後の外部放射線被ばく線量と心理的苦痛,心的外傷後ストレスとの関連について調査した。
- 外部放射線被ばく線量と心的外傷後ストレスとの間には量依存性の関連は認めなかった。
- 外部放射線被ばく線量が高い女性では,震災後のストレスの多い状況と放射線リスク認知が心理的苦痛のリスクに影響する可能性が示された。
- 福島第一原子力発電所事故による母親の外部被ばくが周産期予後に及ぼす影響を調査した。
- 母親の外部被ばく量と周産期予後の関係を、二項ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
- 福島第一原子力発電所事故による母親の外部被ばく線量の中央値は0.5mSvであった。
- 母親の外部被ばく線量は、先天性奇形、低出生体重児、在胎過小不当児(SGA: small for gestational age)、早産と関連していなかった。
Volume 32, Issue 11 (November 2022)
-
本研究では、10,542名の日本人集団を対象にメンデルランダム化解析の手法を用いて、高感度CRP(hs-CRP)と推定糸球体濾過量(eGFR)の因果関係を推定した。
-
我々は、欧米人集団およびアジア人集団で同定されたSNPに基づいた異なる2つの操作変数(IVCRPとIVAsian)を使用した。
- 2つの操作変数(IVCRPとIVAsian)によるhs-CRPの説明率は、それぞれ3.4% と 3.9%であった。
-
従来の線形回帰分析の結果、血清hs-CRP濃度とeGFRとの有意な関連を認めた。
- 2つの操作変数(IVCRPとIVAsian)を使用したtwo-sample MRを行なった結果、血清hs-CRPとeGFRとの因果関係を支持するものではなかった。
- 地域在住の高齢者を対象に、加速度計で評価した座位行動・身体活動と海馬の体積との関連を検討した。
- 座位行動と低強度身体活動に比べ,中高強度身体活動は右海馬体積と関連した。
- 原発事故の影響を受けた地域の住民の生活習慣と腹部肥満との関連について調べた最初の研究である。
- 腹部肥満の住民は、震災の前後で、それぞれ34.2%と36.6%であった。
- 震災後の腹部肥満は震災前の生活習慣だけでなく震災前後の生活習慣の変化に影響を受けている。
- 特に、禁煙は、避難者と非避難者の両方、および男性と女性の両方で腹部肥満と正の関連が認められた。
- この全国戸口調査で、地方の認知症有病率が都市部に比べ、1.9倍高いことが統計的有意差をもって示された。また65-74歳女性において農村部では都市部に比べ5倍以上であり、都市化の影響は女性で統計的に有意に高かった。
- 都市化のレベルは、軽度の認知障害および認知症の独立した関連因子であった。
- 性別や定期的な運動のような因子の認知症へのインパクトは、異なる都市化の状況の間で異なっていた。
- 都市化のレベル間で医療サービスが不平等であるため、農村もしくは都市住民に特化した認知症予防のための介入が、将来の公衆衛生施策として提案された。
- 県境を越える移動者の数は、最初の緊急事態宣言(SOE)で最も減少し、その後のSOEではその減少規模は小さかった。
- Go To トラベルキャンペーン期間中は、県間移動に伴うネットワークの近接性が増加した。
- パンデミック時、地理的に近い都道府県間の移動よりも遠い都道府県間の移動が減少した。
- パンデミック時、都道府県間の近接性の増加は、COVID-19感染率の上昇と相関していた 。
- 無料低額診療事業は、生計困難者の医療費の窓口支払いを医療機関が減免できる社会福祉制度である。
- 無料低額診療事業の利用者の社会経済的背景と健康関連QOLの変化との関連を検証した。
- 無料低額診療事業の利用者では、低収入の利用者ほど健康関連QOLの改善がみられた。
- 無料低額診療事業の利用者のうち独居の者では、健康関連QOLの改善が乏しい傾向があった。
Volume 32, Issue 10 (October 2022)
- メタアナリシスにおいて、変量効果モデルには、正規分布のモデルが慣例的に用いられてきたが、その仮定が妥当でない場合には、誤った結論が得られる可能性がある。
- 本研究では、変量効果モデルに柔軟な確率分布モデルを用いる新しい方法、および、これらの手法を実行するためのRパッケージflexmetaを開発した。
- 近年、公表された2つのメタアナリシスに、これらの柔軟な変量効果モデルを適用し、正規分布モデルによる解析とは大きく異なる結果が得られた。
- これらの柔軟な変量効果モデルは、メタアナリシスの実践において、正規分布モデルの妥当性を評価するための感度解析の方法としても用いることができると思われる。
- 本研究は、生活習慣由来の慢性腎疾患に対する中国初の、長期間における住民ベースの研究である。
- 現在喫煙、高トリグリセリド、および高収縮期血圧が、中国の慢性腎疾患に寄与する上位3つの危険因子であった。BMIの増加、拡張期血圧、血糖値、および高HDLコレステロールの減少も、CKDの増加と関連していた。
- 本研究の結果は、住民レベルでの慢性腎疾患予防のための政策戦略に情報となるであろう。
- 社会参加は要介護リスクと関連があることが報告されているが、健康寿命への影響を定量的に算出した研究はない。
- 本研究では、社会参加の数が多いほど、男女ともに、健康寿命が長かった。
- 3つの地域活動すべてに参加している群は、社会参加していない群と比較し、男女ともに、健康寿命が約5年長かった。
- この健康寿命の差は、喫煙、BMI、歩行時間、うつの有無で層別解析した場合でも変わらなかった。 ポピュレーションレベルで社会参加を促進することは、健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆された。
- 小児期における先延ばし行動と成人期における健康問題との関連を示唆する知見が報告されているが、高齢期における口腔の健康との関連性については研究が少ない。
- 本研究では、地域在住日本人高齢者を対象に小児期における学習課題の先延ばし傾向と残存歯数との関連を検討した。
- 小児期に先延ばし傾向が強かった者は、高齢期に残存歯数が有意に少ないという関連が認められた。
- 本研究は、高麗人参摂取と死亡との関連を検討した最大規模のコホート研究である。
- 定期的な高麗人参の使用が長期間の者ほど総死亡リスクが低下したものの、高麗人参摂取量は死亡リスクとの関連はみられなかった。
- 長期間の高麗人参の使用は、循環器疾患による死亡リスク低下と関連していた。
- 1型糖尿病患者と2型糖尿病患者において、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年4月から5月にかけて、2019年の同月と比較して、受診数の低下と遠隔診療利用数のわずかな上昇がみられた。
- 遠隔診療は受診継続に対して大きな貢献はしていなかった。
Volume 32, Issue 9 (September 2022)
- かかりつけ医がいる高齢者は、肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチンの接種率が約2倍高い。
- 医師が患者の話を聞く姿勢は、肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチンの高い接種率と関連している。
- 患者がわからないことを医師に質問できることと、肺炎球菌ワクチンの高い接種率は関連している。
- 治療方針を医師と患者が相談して決めるスタイル(shared decision-making)は、 肺炎球菌ワクチンの高い接種率と関連している。
- 交通手段の分布の変化(モーダル・シフト)により道路交通外傷が減少するといわれている。
- 日本では自転車通学の中学生で通学時の交通外傷のリスクが高い。
- 豪雪地域において積雪時に、中学生の通学時の交通事故死亡・重傷数が68%減少していた。
- モーダル・シフトは、道路交通安全を高める重要な手段となりうる。
- 本研究は起床後の最初の喫煙までの時間と慢性呼吸器疾患有病の関連に関する初の中国の全国規模の研究である。
- 先行研究と比較して、中国の高齢喫煙者における起床後の最初の喫煙までの時間が短いまたは長いことと慢性呼吸器疾患有病の関連が異なっていた。
- TTFC>30分と比較したTTFC≤30分での慢性呼吸器疾患有病の高さは、女性、≥90歳、都市居住者、過去喫煙者に顕著であった。
- 起床から最初の喫煙までの時間を遅らせるタバコ対策の努力は、特定の集団にとって有益である可能性がある。
- 慢性呼吸器疾患有病を予測するTTFCの閾値は、人種ごとに設定する必要がある。
- 2型糖尿病患者において、重症低血糖の様々な強度とタイミングの軌跡への曝露と認知症のリスクとの関連を調べた。
- 集団軌跡モデルで2型糖尿病における重症低血糖の影響を検討したところ、2型糖尿病と診断されてから3年以内の重症低血糖や継続して生じた重症低血糖は、認知症リスク増加と関連していた。
- 2型糖尿病患者において、糖尿病診断後早期の重症低血糖や継続して生じた重症低血糖は、認知症のハイリスク群を示す指標となる可能性がある。
- 日本の民間企業の長期疾病休業者を対象に調査したところ、復職や退職は休業から1年以内に多く発生していた。
- 欧州の労働者での報告と同様、日本の労働者でも累積復職率は休業要因の診断分類による違いがみられた。
- 累積死亡率は、新生物による長期疾病休業者で目立っていた。
- 1年間の休業を保障する有給の疾病休業制度があれば、長期疾病休業者の大半は復職できるだろう。
- がんの早期発見による死亡率低下は、日本の新生物による長期疾病休業者の就業継続性を高めるだろう。
Volume 32, Issue 8 (August 2022)
- 韓国では2017年の発売以来加熱式たばこの使用が劇的に増加した。これには加熱式たばこに対する肯定的な認知が影響している可能性がある。
- 複数のたばこ製品の使用者の多くは禁煙の意思が低く、加熱式たばこはたばこ会社の主張とは異なり従来型の紙巻きたばこの代替とはなりにくい。
- 韓国の加熱式たばこで使われている「従来型たばこのような電子たばこ」のようなあいまいな製品名は、市場に混乱を招くだけではなく、製品使用の正確なモニタリングを困難にする可能性がある。
- 孫の世話は祖父母の健康に決定的な影響を及ぼさない。
- 横断データで示される正の相関は縦断データでは確認できない。
- 祖父の健康は孫の世話に影響されない。
- 孫の世話とは対照的に老親の世話は健康にマイナスの影響を及ぼす。
- 日本の地域住民を対象とした前向きコホート研究において、BMIと帯状疱疹の有病率・発生率との関連を検討した。
- 過体重群は、特に女性において、正常体重群よりも帯状疱疹の発症リスクが有意に低かった。
- BMIと有病率との間に関連は認められなかった。
- 栄養素パターンと脂肪肝の指標であるFatty Liver Index(FLI)との関連を検討した。
- ビタミン、食物繊維、鉄、カリウム摂取の多い栄養素パターンは、飲酒量を含む交絡因子となりうる変数を調整しても、FLIの高値と負の関連があった(傾向性のP-値<0.001)。
- FLIの各要素の検討から、肥満と腹部肥満が、この栄養素パターンとFLIとの関連を介在していることが示唆された。
- 経済危機のがんへの影響を検討した研究は一貫した結果が出ていない。
- これまでの研究の殆どは、非雇用状態を景気後退の指標とし、がん死亡率への影響を見たものであった。
- 20年のフォローアップを行った我々の研究では、1990年台初頭に起きたフィンランドの景気後退は、男性のがんリスク上昇へと繋がる一方、女性ではそのような関連は認められなかった。
- 将来のマクロ経済の退潮の最中あるいはその後の集団の健康を守るためには、様々な健康的・社会的政策ツールが必要である。
Study Profile
Data Resource Profile of Shizuoka Kokuho Database (SKDB) Using Integrated Health- and Care-insurance Claims and Health Checkups: The Shizuoka Study[健康・介護保険レセプトと健診データを縦断的に統合した静岡国保データベース(SKDB):静岡スタディ]
Data Resource Profile of Shizuoka Kokuho Database (SKDB) Using Integrated Health- and Care-insurance Claims and Health Checkups: The Shizuoka Study[健康・介護保険レセプトと健診データを縦断的に統合した静岡国保データベース(SKDB):静岡スタディ]
- 静岡国保データベース(SKDB)は静岡県民の個人レベルのデータを有する人口ベースの縦断的コホートである。
- SKDBは国民健康保険と後期高齢者保険の全被保険者のデータで構成されている。
- 2012年4月から2018年9月までの期間のSKDBには2,230,848例のデータがあり、その保険加入期間の中央値は4.36年であった。
- SKDBには、654,035例分2,469,648レコードの健康診断のデータと、283,537例分の介護保険サービス受給者のデータがあった。
- SKDBは従来のコホート研究よりも、高齢者の健康課題や明らかになっていない疫学的問題を扱うのに適している。
Volume 32, Issue 7 (July 2022)
- 日本人一般集団において、非空腹時の中性脂肪値は脳・心血管疾患の死亡リスクとU字型の関連を示した。
- 65歳未満では非空腹時の中性脂肪高値が脳・心血管疾患死亡リスクの増加と関連する一方、65歳以上では非空腹時の中性脂肪低値が脳・心血管疾患死亡リスクの増加と関連していた。
- 本研究の知見は非空腹時中性脂肪の適正値が年齢で異なる可能性を示唆している。
- 2型糖尿病の罹患は民族間で大きく異なる。
- アジア系の人々においては、肥満が2型糖尿病のリスクに大きく関与する。
- 内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比は2型糖尿病と強く関連を示した。
- 内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比、日系アメリカ人において最も強い関連を示した。
- 早期発見を積極的に行う対象として腹部肥満者が挙げられる。
- 協会けんぽ京都支部の経年的な健診・医療レセプトデータを用いて行動変容ステージモデルにおける観察開始時のステージがその後の腎機能低下に及ぼす影響を調べた。
- 準備期以降のステージにおける集団では翌年の健康行動の改善割合が高く、年齢性別などの他に糖尿病や高血圧や脂質代謝異常症などで調整しても、eGFRが30%以上低下するリスクが低かった。
- 口腔状態が低下した者で、主観的な認知機能低下の発生確率が有意に高かった。
- 口腔機能のうち嚥下機能の低下で、主観的な認知機能低下の発生確率が最も高かった。
- 主観的な認知機能低下は、将来の認知症発症リスクを高めるが、口腔の健康状態を維持することで主観的な認知機能低下が防げる可能性が示唆された。
- 発育阻害の有病率は、人口集団における5歳未満の子どもの低栄養の評価に広く用いられている。
- 親(特に母親)の低身長は、子どもの発育阻害の改変できない最も大きな決定要因である。
- 発育阻害の要因のうち、母親の身長で説明可能な部分は国によって大きく異なる。
- 母親の身長で調整した発育阻害の有病率は、従来の発育阻害の指標より、他の小児保健の指標とよく相関することがわかった。
- パンデミック直後(2020年2-4月頃)における市民のメンタルヘルスは、世帯構成にかかわらず悪化した。
- それ以降(2020年4月~2021年1月)、同居者がいる者のメンタルヘルスは、徐々に改善した。
- しかし、独居者では、流行直後から約1年間(2020年2月~2021年1月)メンタルヘルスの不良状態が持続していた。
Volume 32, Issue 6 (June 2022)
- コックス比例ハザードモデルを用いて、日本の高齢者において趣味活動の総数と死亡リスクとの間にリニアな関係(調整ハザード比 = 0.93、95%信頼区間:0.92, 0.95)が認められた。
- 身体的活動を伴う趣味および2人以上で行う趣味への参加は、死亡リスクの低下と有意な関連を示した。
- 文化的活動を伴う趣味および1人で行う趣味への参加に関しては、死亡リスクの低下との有意な関連はみられなかった。
- 農村部では、市民参加率が高い地域ほど閉じこもりの高齢者が少なかった。
- 農村部では、近隣にウォーキングや運動に適した公園や舗装道路が多い地域ほど閉じこもりの高齢者が少なかった。
- 地域のソーシャルキャピタルや近隣の建築環境の改善は、農村部における高齢者の閉じこもりを減らす可能性がある。
- 口唇裂と口蓋裂を有している子供と口蓋裂のみを有している子供は1歳までの下気道感染症の発症リスクと有意に関連していた。しかし、口蓋裂のみを有している子供は関連していなかった。
- 累積母乳摂取期間をモデルに加えた場合、口唇裂と口蓋裂を有している子供の下気道感染症発症のリスクは低下した。
- 本研究に含まれた口唇口蓋裂を有する子供の人数が十分ではなかっため、本研究結果は不確実性が高いことに留意すべきである。
- 東日本大震災後の高LDLコレステロール血症の発症率は、非避難者と比較して避難者の方が有意に高かった。
- 様々な因子を調整しても、避難は高LDLコレステロール血症発症の独立した危険因子であった。
- 避難者に対して、定期的な健康診断や必要に応じてライフスタイルの改善を指導することが重要である。
- 長時間労働が健康を損なうことは先行研究で広く報告されている。
- 本研究は精神疾患による長期病休をアウトカムとする研究である。
- 残業時間と精神疾患による長期病休のリスクの関連はU字型であった。
- 残業時間が月100時間以上の群でリスクの有意な上昇が認められた。
- 残業時間が月45-79時間の群ではリスクの有意な低下が認められた。
- 日本の農村地域在住高齢者における近隣食環境と食品摂取多様性との関連性を検討した。
- 多変量回帰分析の結果、自宅から最寄りの食料品店までの距離が遠いことと食品摂取多様性が低いことの間に有意な関連が認められた。
- 食料品店の種別ではスーパーマーケットとコンビニエンスストアまでの距離が遠いことと食品摂取多様性が低いことの間には有意な関連がみられたが、その他の小規模の商店においては有意な関連はみられなかった。
- 食品群別に検討したサブ解析では、食料品店までの距離は肉類と果実類の低い摂取頻度と有意に関連していた。
- 食料品店、特にスーパーマーケットやコンビニエンスストアから距離が遠いというような食品摂取多様性が低くなるリスクが高い地域では、重点的に介入を行う必要性があることが考えられる。
Volume 32, Issue 5 (May 2022)
- 本研究では、従来型脂質とレムナント脂質の代謝性リスクを調べた。
- レムナント脂質は、中性脂肪を多く含むリポ蛋白質(TGL)の粒子径に応じて、冠動脈疾患と虚血性脳卒中に与えるリスクが異なる。
- TGLが異なれば、各循環器疾患に与える影響も正負の向きも含め異なることから、必ずしもすべてのレムナント脂質が有害で、治療的介入が必要であるわけではない。
- 本研究によって、介入目標となりうるレムナント脂質に関する因果効果に基づくエビデンスが得られた。
- 多群分割時系列解析モデル(ITS解析)を用いて、歯科医療の公的保険の範囲拡大の高齢者の咀嚼能力への因果関係を検証することを目的とした。
- 2007年から2016年~2018年に実施された韓国国民健康・栄養検診調査のデータを用いた。
- ITS解析の結果、保険適用になった65歳以上の高齢者(適格群)とそうでない65歳未満の者(非適格群)では、政策拡大後に咀嚼困難度が毎年それぞれ0.93%および0.38%減少していた。
- 韓国の歯科保険拡大の適格群、非適格群両方とも、咀嚼困難度は時間の経過とともに減少した。これらの傾向には、歯科保険給付の変化とは別の要因が影響していると考えられる。
- 肝機能指標であるALTとGGTの組み合わせが、肥満に有無に関係なく糖尿病の有病と関連するか検討した。
- ALTやGGTの高値(カットオフ値ALT:30IU/L、GGT:50IU/L)は、非肥満者においても糖尿病の有病と関連した。
- 肥満者は、ALTとGGTが低値でも糖尿病の有病オッズ比が高く、ALTやGGTが高値の場合は更に糖尿病の有病オッズ比が高かった。
- ALT値およびGGT値の改善と肥満の改善が糖尿病対策に重要であることが示唆された。
- 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)詳細調査は、全体調査参加者の中から無作為に抽出された一部を対象としてより詳細な曝露評価・アウトカム評価を実施するものである。
- 1.5歳・3歳時には訪問調査、2、4、6、8歳時には発達検査や医学的検査を実施する。10歳以降の詳細な計画は検討中である。
- 詳細調査には5,017名(リクルート時)が参加し、そのプロファイルは全体調査のものと大きな違いはなかった。
- エコチル調査詳細調査は、環境要因と子どもの健康の関連を明らかにするプラットフォームを提供するものである。
- 先行研究によると、欧米人では体重変化は認知症発生リスクとの関連があることが示唆されたが、アジア人ではまだ明らかになっていない。
- 本研究は、初めて日本人高齢者における体重減少と認知症発生リスクとの関連を報告した。
- 本研究では、3.5㎏以上の体重減少により認知症発生リスクが増加することを明らかにした。
Volume 32, Issue 4 (April 2022)
Special Article
AI Implementation Science for Social Issues: Pitfalls and Tips(社会課題に対するAI実装科学:落とし穴と注意点)
AI Implementation Science for Social Issues: Pitfalls and Tips(社会課題に対するAI実装科学:落とし穴と注意点)
- 社会実装のアウトカムは、現場と協働しながら、どのような課題を解決すべきかの合意形成に基づき、丁寧に設定する必要がある。
- エビデンスを参照した実践と、蓄積されたデータから実践を評価するループを繰り返せるよう、実装計画を行うことが重要となる。
- うまくいった新しいシステム機能を残し、うまくいかなかった機能を改善するというサイクルを、いかにすばやく研究から実装まで循環させることがポイントとなる。
- プロダクトを社会実装する際は、研究者は常にそれらを大規模に展開させ、社会的インパクトを最大化させる出口戦略を描く必要がある。
- このような社会実装に向けた展開には、研究開発としての持続可能なサービスチーム(SSTRD)モデルを構築する必要がある。
- 2014年4月1日から2017年3月31日までにFIAの治療のために入院した9,079人の患者をDPCデータベースから同定した。
- 0~3歳、4~6歳、7~19歳、20歳以上の患者でFIAの原因食物として最も多かったのは、それぞれ鶏卵、牛乳、落花生、小麦であった。
- 学校におけるピーナッツアレルギー対策が重要である。
- 女性の出生時体重が後の妊娠中の合併症リスクとどのように関連しているかの、アジア系の女性に関する大規模な疫学研究はない。
- 本研究では大規模な横断情報を利用して、日本人女性では低出生体重で生まれると妊娠高血圧症候群の発症リスクが高いことを示した。
- 妊娠糖尿病のリスクは、1500〜2500グラムで生まれた女性では出生体重2500〜3500グラムで生まれた女性と比較して有意に高かったが、他の出生体重カテゴリーの女性の間では有意ではなかった。
- 家庭内ケア(子育て、介護、ダブルケア)を行う者は、家庭内ケアを行わない者に比べて、重複負担により健康状態が悪化している可能性がある。
- しかし、家庭内ケアの組み合わせによる健康影響を検討した先行研究はない。
- 本研究は、2013年国民生活基礎調査データを用い、家庭内ケアと主観的不健康感の関連を検討した。
- 家庭内ケアを行わない者と比較して、介護あるいはダブルケアを行う者は主観的不健康感を訴える者の割合が高く、特に、ダブルケアを行う者は、4群(家庭内ケアなし、育児のみ、介護のみ、ダブルケア)の中で一番高いオッズ比を示した。
- 社会経済的状況による家庭内ケアと主観的不健康感の関連についての交互作用は認められなかった。
- 日本の山形県鶴岡市で実施したコホート研究では、紙巻きたばこと加熱式たばこの併用者は、加熱式たばこを併用し始めてから、以前より多くのたばこ製品を吸う/使用する傾向があった。
- 併用者では、紙巻きたばこのみの喫煙者や加熱式たばこのみの使用者よりも、呼吸機能検査でのFEV1(1秒量)の年間減少量が大きかった。
- 平均1.7年前に加熱式たばこのみの使用に切り替えた喫煙者での1秒量の年間減少量は、紙巻きたばこのみの喫煙者と同等であった。
- 本研究の結果は、たばこ対策を検討する際に、紙巻きたばこと加熱式たばこの併用者を高リスク群として扱うべきであることを示唆している。
- 2021年7-8月に行った調査において、日本の妊婦のCOVID-19ワクチン接種率は13.4%、ワクチン忌避は50.9%であった。
- ワクチン忌避の理由では、副反応や胎児および授乳への影響に関する心配が多く、妊婦への適切な情報提供が重要と考えられた。
- ワクチン忌避に関連する因子として、政府への不信頼が認められた。
- 2020年4月~9月のCOVID-19感染拡大下において、収入の低下、生活必需品を買えない金欠、家計への不安は、心身の健康状態の悪化と相関していた。
- 非就労者においてのみ、経済的搾取(個人の資産を許可なく第三者に使われる)と心身の健康状態の悪化に相関が見られた。
- 回答者の13.6%が10万円特別定額給付金を受け取っていないと回答しており、給付金の個人への分配が各家庭内で停滞していた可能性が示唆された。
Volume 32, Issue 3 (March 2022)
- 日本の女性看護職における女性ホルモン使用について10年間にわたる前向き研究を行った。
- 経口避妊薬の使用率は6%であった。
- ホルモン補充療法(HRT)の使用率は13.8% であり、HRT使用期間の中央値は2年であった。
- HRT使用者のうち, 66.2%は45〜54歳で開始していた。
- 我々の大規模コホート研究は、日本人一般住民におけるヘモグロビン濃度と脳卒中との関連を解明することを目的とした。
- ヘモグロビン濃度が低いものは脳卒中発症のリスクが高かった。
- ヘモグロビン濃度と脳卒中の分析では、クモ膜下出血が最も強く関連していた。
- 世界保健機関の定義するヨーロッパ地域の国々の60%未満の国でしか、全国を対象にした電子タバコ利用に関する法律を持っていなかった。
- 欧州連合加盟国の方が非加盟国よりも法制化がなされていた。
- 法律における電子タバコ利用の規制対象となる場所の種類は国によって異なっていた。保護対象としてもっとも一般的な場所は教育施設であった。
- 電子タバコ規制の法制化には、ある程度の困難を伴った。
- 電子タバコ利用制限の制定や施行において直面する問題を解決するために必要なサポートは国によって異なるであろう。
- ヨーロッパにおける大規模断面調査において、2017~2018年の一般集団における加熱式たばこ(heated tobacco products)使用はまだ限定的であった。
- しかしながら、他のたばこ製品との併用(dual use)、若い世代での高い使用割合、および非喫煙者の加熱式たばこへの関心が懸念された。
- これらの結果は、加熱式たばこの使用と使用者の属性についての詳細なモニタリングが必要であることを示している。
Short Communication
The Association Between Sleeping Pill Use and Metabolic Syndrome in an Apparently Healthy Population in Japan: JMS-II Cohort Study(日本人における睡眠薬とメタボリック症候群の関係 : JMS-Ⅱコホート研究)
The Association Between Sleeping Pill Use and Metabolic Syndrome in an Apparently Healthy Population in Japan: JMS-II Cohort Study(日本人における睡眠薬とメタボリック症候群の関係 : JMS-Ⅱコホート研究)
- 非睡眠薬使用者と比べ、短時間睡眠の睡眠薬使用者のメタボリック症候群のオッズ比は3であった。
- 睡眠薬の使用頻度は、メタボリック症候群の有病率と正の関係があった。
- 短時間睡眠の睡眠薬使用者は、特に代謝機能障害や動脈硬化を有しやすい可能性があり、要注意である。
Volume 32, Issue 2 (February 2022)
- 母親および子どものウェルビーングに対するオンラインによるピアサポートの効果を検討するため、システマティック・スコーピングレビューを行った。
- 21の文献をレビューした結果、母親は情報や感情面でサポートを受け、つながりやコミュニティ感覚を感じていることがわかった。
- 母親のメンタルヘルスに対する効果は報告されていたが、オンラインによるピアサポートの効果に関するエビデンスは不十分である。
- 東北メディカル・メガバンク計画が推進する出生三世代コホート調査に登録された、妊婦のベースラインにおける背景および周産期予後を報告した。
- 妊婦の社会人口統計学的ベースラインデータ、感染症スクリーニング検査の結果、産科学的転帰を母親の年齢層別に解析した。
- 23,730 名の胎児を含む23,406 件の妊娠、23,143 名の生産児のデータが得られ、ベースラインにおける妊婦背景の分布と年齢層別の周産期予後が明確に示された。
- 本コホート研究のデータを幅広く共有することで、DOHaD研究に革新的なブレークスルーをもたらす戦略的情報を得ることができる。
- ベースラインデータは、東京医科歯科大学救命救急センターで治療を行った患者19,420人である。
- 外国人患者は、日本人患者よりアナフィラキシー、熱傷、感染症の診断が多く、心血管疾患の診断が少なかった。
- 外国人患者のアナフィラキシー症例はすべて食物に起因し、そのうち71%は日本の伝統的な「そば」の麺、魚、または貝類が引き金となっていた。
- 第三次救急医療において、日本人と外国人の間では、患者ケアのアウトカムに顕著な差は認められなかった。
- 婚姻状況の変化と野菜摂取量との関連を検討した。
- 配偶者との死別の経験と野菜摂取量の減少は関連していた。
- 婚姻状況を考慮した食事指導が必要である。
- 2017年、山形県で総感染者数60人の麻疹流行を認めた。
- 時間データを解析することで、感染世代毎の感染者数と再生産数(1人の感染者が生み出す二次感染者数の平均値)を推定した。
- 感染ネットワークを用いることで、時間が進むにつれて1人の感染者が生み出す二次感染者数の平均値と分散が共に低下した。
- 咽頭粘液内高ウイルス量が感染性に寄与する可能性があることが示唆された。
- 2020年9月から2021年3月における都内病院の来院者23,324人の新型コロナウイルスに対する抗体の保有状況を解析した。
- 全検体の抗体保有率は1.83%であった。
- 2021年3月における東京都の抗体保有率は3.4%と推定され、470,778人が新型コロナウイルスに感染歴があると推定された。
- 推定された2021年3月の抗体保有者は、実際に2021年3月までに感染が確認された数の3.9倍で、新型コロナウイルス感染の74.3%が診断されなかった可能性が示された。
Volume 32, Issue 1 (January 2022)
- 親の労働状況は子どもの座位行動と関連していた。
- 母親の労働時間が長い家庭や父親が無職の家庭では、子どもの座位時間が長かった。
- 父親が働いている子どもに限定すると、父親の労働時間と子どもの座位時間との間に統計的に有意な関連はなかった。
- 各家庭が多様な労働状況にある中、育児資源の不足を補うことを含め、様々な支援と対策が必要かもしれない。
- 全世界的に労働災害を減らすためにかなりの努力が払われている。しかしながら、労働災害後に起こる精神的な影響、特にその状態を予防するための対策については、ほとんど知られていない。
- 全国代表コホートを用いて、職業性受傷のある労働者、非職業性受傷のある労働者、及び受傷のない労働者において精神医学的影響を明らかにした。職業性受傷のある労働者は非職業性受傷のある労働者と同様に、受傷のない労働者と比較して精神障害を発症するリスクが高かった。
- 一般的な考えに反して、時間の経過とともに精神障害発症との関連が弱まることはなく、受傷後10年間同様に関連がみられた。
- 2005年-2017年の健康保険組合加入者の医療データベースを用いて、ムンプス難聴の発生頻度を検討した。
- 全体のムンプス難聴の発生率は、ムンプス患者10,000人当たり15.0人であった。
- ムンプス難聴の発生率は、16~64歳が0~15歳に比べて8.4倍高く、6~15歳が0~5歳に比べて7.2倍高かった。
- ムンプス難聴の発生ピークは6~15歳、次いで26~35歳であり、この2つの年齢層はムンプス難聴の発生リスクが高いことが示された。
- 本研究は日本の臨床研究法(CTA)が臨床研究数に与える影響を検証した初の研究であり、分割時系列分析(ITSA)を用いている。
- CTA施行後の1年間で、新規臨床試験の月次件数のトレンド(傾き)とレベル(切片)が大幅に減少したことが示された。
- マルチグループITSAを用いた分析では、サンプルサイズが小さい研究、介入研究、および資金源が非営利の研究で特に新規研究数のトレンド(傾き)の減少傾向が見られた。
- 研究の透明性と安全性を確保しつつ臨床研究を促進する新たなシステムを構築することが必要である。
- 本研究の目的は、HPVワクチン接種歴のない日本人青少年について、「重篤である多様な症状」の有訴率と発症率を推定することである。
- 2016年に、全国規模の記述疫学研究を実施した。調査対象期間は2015年7月~12月の6ヵ月間とした。
- HPVワクチン接種歴のない12~18歳の女子では、「多様な症状」の6 ヵ月間の期間有訴率は人口10万人あたり20.2、年間発症率は人口10万人あたり7.3と推計された。
- HPVワクチン接種歴のない女子も、HPVワクチン接種後に報告された症状と同様の「多様な症状」で病院を受診していた。
- 本研究結果は、日本人青少年において、HPVワクチン接種後に発症するが接種とは関連がないと考えられる、すなわち偶然発症の「多様な症状」による医療需要を予測している。
- 天津出生コホートは、中国北部における大規模な出生コホート研究である。
- 目的は妊娠中のばく露と健康影響を明らかにすることである。
- 母親と父親は、妊娠初期にリクルートされ、その後、妊娠中期・後期、出生時、出生から42日後、6ヶ月後、1歳以降は毎年1回、追跡調査が行われる。
- 母親の血液、父親の血液、胎盤、臍帯血、母乳、児の尿、便など、さまざまな生体サンプルが定期的に収集される。