日本語版Highlights
Volume 34, Issue 1-12 (2024)
Issue 12 (December 2024)
Issue 11 (November 2024)
Issue 10 (October 2024)
Issue 9 (September 2024)
Issue 8 (August 2024)
Issue 7 (July 2024)
Issue 6 (June 2024)
Issue 5 (May 2024)
Issue 4 (April 2024)
Issue 3 (March 2024)
Issue 2 (February 2024)
Issue 1 (January 2024)
Volume 34, Issue 12 (December 2024)
- 日本人男性44,271名を追跡した前向きコホート研究のデータをもとに、大腸がん発生における肥満の影響を(1) 直接効果、(2) 血中のレプチンおよびアディポネクチンを介する間接効果、(3) (2)の間接効果によらず高インスリン血症や慢性炎症を介する間接効果、の3つに分解した。
- 多重代入法に基づく媒介分析により、(2)の血中のレプチンおよびアディポネクチンを介する間接効果(BMI 25.0–27.4 kg/m2群のリスク比1.29,95%信頼区間 0.98–1.69;BMI ≥27.5 kg/m2 群のリスク比1.28, 95%信頼区間 0.98–1.68;いずれも<25.0 kg/m2群を対照)が示唆されたことから、肥満と大腸がん発生の因果関係においてレプチンおよびアディポネクチンが重要な役割を果たしていると考えられた。
- コホート内症例対照研究のデザインに基づく逆確率重み付け法による媒介分析でも、同様の結果が得られた。
- 本研究は、札幌市における2020年2月から2022年2月までに新型コロナウイルスに感染した者を対象とし、Webアンケートによる横断研究を実施した。
- COVID-19感染に関わる差別を経験した者は、感染による心的外傷後ストレス障害の症状との関連を認めた。
- パンデミックにおいて感染による差別を防ぐことは、心的外傷後ストレス障害の症状を軽減する可能性がある。
- 父親の家事・育児参加と母親のお尻たたき行動(悪いことをしたときにお尻をたたく体罰)との関連について、日本人の母親16,373人を対象に検証した。
- 父親が家事に参加する場合、母親が子どもに対して頻回なお尻たたき行動を行いにくい可能性が示された。
- 父親の仕事時間が比較的短い場合(<50時間/週)、父親の育児参加頻度が高いほど、母親は頻回なお尻たたき行動をしない傾向があった。
- 父親が家事・育児を行うことは、母親の養育行動を適切に保つのに有益である可能性がある。
- COVID-19パンデミック初期に、健康の社会的格差が拡大した可能性がある。
- 韓国の中高生106,979人を対象とし、2020年と2021年における家庭の経済的状況の不安定さの自覚と肥満の有病との関連を検討した。
- 家庭の経済的状況の不安定さの指標として、主観的な社会経済的地位とCOVID-19パンデミックによる悪化に関する情報を用いた。
- 参加者のうち70.5%がCOVID-19パンデミックによる家庭の経済的状況の悪化を経験していた。
- 主観的な社会経済的地位とCOVID-19パンデミックによる家庭の経済的状況の悪化は、独立かつ相加的に中高生の肥満の有病と関連していた。
- 競合リスク解析で用いられる2種類のハザード比(部分分布ハザード比と原因別ハザード比)の値の違いは、稀なイベントの仮定と生存確率比によって決まる。
- 生存確率比を用いてハザード比を相互に変換するための近似公式を導くことができる。
- この近似公式によって、文献情報から部分分布ハザード比を計算し、競合リスクを考慮に入れたサンプルサイズ設計が可能になる。
Statistical Data
Regional Variation in End-of-life Care Just Before Death Among the Oldest Old in Japan: A Descriptive Study(超高齢者の終末期医療の地域差に関する記述的研究)
- 本研究では、NDBを用いて85歳以上超高齢者の終末期の生命維持治療の地域差を記述した。
- 超高齢者の死亡前7日間において、心肺蘇生、人工呼吸、急性期病床への入院割合に地域差が観察された。
- 今後、地域差の要因に関してさらなる研究を行うことが終末期医療の均てん化と質向上に向けた課題である。
Volume 34, Issue 11 (November 2024)
- 標準化死亡比(SMR)を用いて、日本のがん患者の自殺リスクを男女別に計算した。
- がん患者の自殺リスクは、一般集団と比較して男女ともに等しく高かった。
- 男女ともに進行がん、または予後不良の患者で、自殺リスクが高かった。
- 予後良好の男性患者は、一般集団との自殺リスクの差はほとんどなかったが、予後不良の男性患者のSMRは高かった。
- 女性は男性よりも予後群の自殺リスクの差は小さかった。
The Out-of-pocket Expenses of People With Tinnitus in Europe (ヨーロッパにおける耳鳴患者の自己負担医療費)
- ヨーロッパにおける耳鳴患者の自己負担医療費は、1,700億ユーロを超えた。
- この費用の相当部分が、エビデンスに基づかない治療や療法に充てられている。
- 医療従事者や患者に対して、何が潜在的な経済負担の要因になっているのか適切に教育することが重要である。
- 政策立案者はエビデンスに基づく耳鳴治療を償還するための具体的な政策の必要性を検討すべきである。
GWAS Meta-analysis of Kidney Function Traits in Japanese Populations (日本人集団における腎機能形質のGWASメタ解析)
- 日本人を含む東アジア集団における腎機能形質に関する遺伝疫学的エビデンスは、まだ比較的不十分である。
- 私たちは、日本人約20万人(推定糸球体濾過量 [eGFR]は202,406名、血清クレアチニン値 [SCr]は200,845名)を対象とした代表的な大規模ゲノムコホート研究のGWAS要約データを活用して、腎機能形質のGWASメタ解析を行った。
- 今回のGWASメタ解析では、SCrに関して1つのバリアント(7番染色体上のCD36 rs146148222)を持つ1つの新規遺伝子座(既知の遺伝子座から1Mb以上の距離)を同定した。
- 慢性腎臓病(CKD)における脂肪酸酸化(FAO)の低下は腎線維化に重要な役割を担っており、CD36は脂肪酸のミトコンドリアへの輸送機能を通じてFAOに重要な役割を果たしていると考えられている。
- 今回の日本人を対象とした最大規模のゲノムコホート研究のGWASメタ解析により、日本人の腎機能に関連するいくつかの新規のゲノム遺伝子座が得られ、近い将来、腎臓病の個別化予防に役立つ可能性がある。
- 労働時間、ワークライフバランスと精神的健康の関連を検討した。
- 週あたりの労働時間は、「35–40 時間」「41–48時間」「49–54時間」「55時間以上」に分類した。
- 週40時間より長く働くことは、週35–40 時間よりもワークライフバランスが不良であった。
- 週40時間より長く働くことは、週35–40 時間よりも精神的健康が不良であった。
- ワークライフバランスが不良であることは、長時間労働と精神的不健康の関連を27.6–50.8%媒介していた。
- 認知症の行動心理症状(BPSD)と死亡リスクとの関連を検討した。
- 単施設の物忘れ外来受診者のうち軽度認知障害または認知症と診断された人を最大8年間追跡した。
- 男性ではDementia Behavioral Disturbance Scaleで評価したBPSDが重度であるほど死亡リスクが高かったが、女性では関連性はみられなかった。
- BPSDのうち、日常生活への関心の欠如、日中の過度の睡眠、ケアを受けることの拒否の症状が高い死亡リスクと関連していた。
- 認知機能障害を持つ男性において、BPSDは予後不良と関連する可能性がある。
- 日本での新型コロナウイルス感染症の流行禍において、すべての年齢層で歯科医療受診の低下が第1波(17.0–22.0%)および第2波(3.0–13.0%)で観察された。
- 一方、1回の受診当たりの歯科医療費については、第1波においてすべての年齢層で5.2–8.6%の増加が観察された。
- 新型コロナウイルス感染症の初期の流行波において、人々の歯科利用行動に影響があったと考えられる。
Volume 34, Issue 10 (October 2024)
- 本研究は雇用形態と喫煙行動の関連を検討した。
- 非正規雇用者は、正規雇用者と比較し、現在喫煙者である割合が高かった。
- 非正規雇用者は、正規雇用者と比較し、禁煙の可能性が低かった。
- 男女ともに、継続的な非正規雇用者は、正規雇用を維持している者と比較して、禁煙の可能性が低かった。
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本研究の結果は、雇用不安が労働者の喫煙行動の危険因子である可能性を示唆している。
- ラジオ体操は、地域在住日本人高齢者のフレイル予防に向けた持続可能な公衆衛生戦略となりうる。
- 12週間の在宅型ラジオ体操は、フレイル高齢者の敏捷性/動的バランス、有酸素性持久力、運動セルフエフィカシーを改善した。
- これらの良好な変化にもかかわらず、健康関連QoLの改善は観察されなかった。
- メタンフェタミン関連死の半分以上は、不慮の薬物中毒が占めている。
- メタンフェタミン関連死の61%は複数の起因物質により、自殺の場合では、その値はより高い。
- メタンフェタミン関連死の43%に精神科治療薬、自殺の場合では15%に抗うつ薬が検出された。
- コホート研究により不慮の死亡を推定することには注意を要する。
- レセプトデータから、COVID-19の入院・中等度以上の入院・重度の入院を特定するためのアルゴリズムの妥当性を、2020年の上半期と下半期、2021年の上半期と下半期の4つの期間で評価した。
- 傷病名(ICD-10: U07.1, B34.2)だけで構成されるアルゴリズムは、COVID-19の入院を特定する上で、4つの期間を通じて一貫して高い感度(90.4%~94.9%)と低いPPV(9.3%~19.4%)を示した。
- 傷病名と処置から構成されるアルゴリズムの感度とPPVは、時期によって変動があったが、入院については2021年上半期に93.9%と97.1%、中等度以上の入院については2021年下半期に90.4%と87.5%、重度の入院については2020年下半期に92.3%と85.7%という高い感度とPPVが観察された。
- 研究期間中、ほぼ全てのアルゴリズムで特異度と陰性的中度は約99%であった。
- 認知症と診断がついている人における死亡場所ごとの死亡者数動向について、過去のデータからCOVID-19流行が起こらなかったと仮定した場合の推定値を算出し、2019年12月30日から2023年1月29日の週データを用いて実際の死亡者数と比較分析を行った。
- 全体として2020年の初めに認知症の人の死亡が減少し、その後2020年12月に死亡者数が推定値を超過した。
- 在宅、医療施設、介護施設の場所ごとの死亡者数は、それぞれ2020年10月、2020年12月、2021年3月にそれぞれ推定値を上回る動向を観測した。
- 社会の政策、COVID-19流行時の予防措置、医療環境の変化が、何処を終の棲家にしたいかという患者家族の希望に影響を与えた可能性がある。
- 認知症の人の終末期ケアにおいて、何処を終の棲家にしたいかという希望を定期的に再評価することは、特に新興感染症パンデミックのような前例のない時期に重要である。
Volume 34, Issue 9 (September 2024)
- 9,900人以上の日本人参加者を対象としたメタボロミクス研究により、紙巻きたばこ喫煙者は非喫煙者と代謝物プロファイルが異なることが明らかになった。
- 加熱式たばこ製品使用者は、非喫煙者よりも紙巻たばこ喫煙者に近い代謝物プロファイルを示し、同様の健康リスクを有することが示唆された。
- グルタミン酸代謝に関係するバイオマーカーは、紙巻きたばこ喫煙と加熱式たばこ製品使用の両方に関連していた。
- 紙巻きたばこ喫煙者と加熱式たばこ製品使用者におけるグルタミン酸代謝経路の活性化は、喫煙と動脈硬化の関連を支持し、心血管疾患に寄与する可能性がある。
- 本研究結果は、加熱式たばこ製品使用の長期的な循環器疾患リスクを評価し、効果的なリスク評価戦略を開発するためのさらなる研究の必要性を示唆している。
- 本研究では、たばこ非使用者と使用者において、加熱式たばこの有害性の認識と信頼できるがん情報の情報源およびその他の説明要因との関連を明らかにした。
- 加熱式たばこの有害性を低く認識することに対して、たばこ非使用者においては、男性、39歳以下、大学卒未満が関連していた。一方、たばこ使用者においては、加熱式たばこの使用が関連していた。
- 公衆衛生にかかわるステークホルダーが日常業務において加熱式たばこの有害性に関する最新の知見を提供すること、また、たばこ非使用者と使用者を対象とした加熱式たばこに関するマーケティングの規制が重要である。
- 超早産児は出生後に神経発達障害(NDI)を起こしやすい。
- 出生時および正期産相当齢/退院時の新生児スクリーニング(NBS)としての甲状腺刺激ホルモン(TSH)測定値は、NDIリスクを層別化できる可能性がある。
- TSHが持続的に最も低い四分位にある超早産児は、NDIリスクが最も高かった。
- NBSにおけるTSH測定は、超早産児における神経発達を早期に予測するのに役立つかもしれない。
- 日本人男性勤労者における目覚めた時にすっきりしないことの2型糖尿病発症リスクを17年間追跡のコホート研究において検討した。
- 目覚めた時にすっきりしないことは、睡眠時間、交代勤務、肥満等の交絡因子に独立して2型糖尿病発症リスクと関連した。
- 目覚めた時にすっきりしないことと2型糖尿病との関連は年齢によって異なる可能性がある。
- 東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査 (The TMM CommCohort Study) の詳細二次調査 (宮城) について、参加者の募集および調査方法と参加者の特徴を報告する。
- ベースライン調査と詳細二次調査によって多くの調査項目が繰り返し測定され、各項目の変化や疾患発症との関係を検討できる日本最大規模の前向きコホートのデータベースが構築された。
- 本コホート調査は、災害が健康に及ぼす長期的な影響の解明みならず、疾病の個別化予防及び治療にも貢献し得る情報を提供できるコホートとなっている。
- COVID-19ワクチン接種者において、コーヒー及び緑茶の飲用とオミクロンBA.5株流行期のCOVID-19罹患リスクとの関連を前向きに調べた。
- コーヒーの飲用量が多いほどCOVID-19罹患リスクは高かった。
- 緑茶の飲用はCOVID-19罹患リスクと関連しなかった。
- JPHC-NEXT研究で行われた質問紙調査および対面による問診調査から得られた自己申告によるヘリコバクター・ピロリ除菌歴は、レセプトデータの処方歴と良く一致し、感度も特異度も高かった。
- 質問紙調査と対面による問診調査はいずれもヘリコバクター・ピロリ除菌歴を把握するために信頼できる方法であった。
- 対面による問診調査は、質問紙調査よりもわずかに妥当性が高かった。
Volume 34, Issue 8 (August 2024)
- 10年間の研究期間において、1140の病院から7370例のレジオネラ肺炎の入院患者が本研究に登録された。
- 日本におけるレジオネラ肺炎の入院患者の死亡率は6.4%であることが明らかになった。
- 夏季と比べて冬季における死亡率が高く、これは季節の違いがレジオネラ肺炎の重症化に影響を与える可能性があることを初めて示したものである。
- 心不全や転移のある癌患者で死亡率が高いことが明らかになった。これらの基礎疾患のある患者は、レジオネラ肺炎の予後を悪化させる可能性がある。
- 日本食品標準成分表2020が公表され、糖質の詳細項目、アミノ酸、脂肪酸の測定食品数が増加した。
- 日本食品標準成分表2020を用いて、12日間の秤量食事記録と食物摂取頻度調査票(Long-FFQ)から推定した糖質、アミノ酸、脂肪酸摂取量との妥当性を検討した。
- Long-FFQより推定した糖、アミノ酸、脂肪酸摂取量については、ある程度の妥当性が示された。
- 日本版敗血症診療ガイドラインのクリニカルクエスションを用いて,半自動化文献スクリーニングソフトの精度と作業負荷軽減の検証を行った。
- 従来の方法で行った1次スクリーニングの結果をゴールドスタンダードとした場合の半自動化ソフトの感度は0.241–0.795,特異度0.991–1.000であった。
- 2次スクリーニング後の最終組み入れ文献をゴールドスタンダードとした場合の半自動化ソフトの最も高い感度と特異度はそれぞれ1.000と0.997であった。
- 半自動化文献スクリーニングソフトは従来の方法に比べて有意に作業時間を短縮した。
- 1890年から1991年にかけて生まれた62,005人の日本人女性の生殖要因の変化を評価した。
- 月経初潮の年齢は1世紀にわたり顕著な下降傾向を示し、1932年、1946年、1959年に変化が見られた。
- これらの年は戦争や経済発展などの歴史的な出来事と一致していた。
- その他の女性の生殖要因も時間の経過とともに変化を示していた。
- 鶴岡メタボロームコホート研究(TMCS)は、山形県鶴岡市で実施されているポピュレーション・ベースのコホート研究で、35–74歳の11,002人が参加している。
- TMCSの目的は、オミクス技術を活用した精度の高いリスク層別化と予測を通じて、多因子複合疾患の個別化予防を達成することである。
- TMCSはメタボロームを中心としたマルチオミクス解析、堅実なデザイン、高い参加率(89%)、長期にわたる繰り返し調査・測定を特長としている。
- 確立されたマルチオミクス・プラットフォームとして、TMCSは日本および東アジアにおける個別化予防の推進に貢献する。
Volume 34, Issue 7 (July 2024)
- 人口集団ベースの日本人の大規模コホートにおいて、出生体重が低い対象者の心血管疾患の有病率が高いことが観察された。
- 同様に、出生体重が低い対象者で高血圧と糖尿病の有病率が高いことが観察された。
- 出生体重と高脂血症の有病率の関連は弱く、出生体重と痛風との間に有意な関連は見られなかった。
- 日本人男性では、総脂質、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、n-3系 多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど、2型糖尿病リスクが低いことが示された。
- 日本人女性では、総脂質および脂肪酸は2型糖尿病リスクと有意な関連を示さなかった。
- 日本人男性と女性においては、飽和脂肪酸およびn-6系 多価不飽和脂肪酸は、2型糖尿病リスクと関連しなかった。
- 日本人におけるピーナッツアレルギーの有病率と乳児期のピーナッツ導入の影響を調査した。
- エコチル調査のデータから4歳時のピーナッツアレルギーの有病率は0.2%であった。
- 乳児期のピーナッツ導入のピーナッツアレルギー発症への予防効果は明らかではなかった。
- preserved ratio impaired spirometry (PRISm) と認知症との関連は明らかにされていない。
- 本研究では、認知症のない65歳以上の日本人地域高齢住民1,202人を対象に、中央値5.0年間の追跡調査を行った。
- PRISm群は、呼吸機能正常群と比べ認知症の発症リスクが約2倍であった。
- PRISmは、認知症の発症リスクが高い集団であり、呼吸機能障害の重要なサブタイプといえる。
- 母親の妊娠前の血小板数は、女性の生殖能力と関連している。血小板数をさらに分類することで、女性の生殖能力についての早期の予兆とその意義についての理解が深まる可能性がある。
- 血小板数の第1四分位(<177.00 ×109/L)と第2四分位(177.00-207.99 ×109/L)では、わずかに生殖能力が増加したが、第4四分位(Q4: 236.00-271.99 ×109/L、Q5: ≥272.00 × 109/L)は、第3四分位(208.00-235.99 ×109/L)と比較して、生殖能力の低下と関連していた。第1四分位(<177.00×109/L)で、血小板数が129.94×109/L未満の女性は20.93%のみだった。
- 血小板数と生殖能力については、逆U字型の関連が一貫して観察され、正常範囲における低い血小板数(<118.03×109/L)と高い血小板数(>223.06×109/L)は女性の生殖能力低下と関連していた(非線形性P < 0.01)。
- COVID-19パンデミックは、日本のがん患者が亡くなる場所に影響を与えた可能性がある。
- 2018年から2023年にかけて、医療機関を死亡場所とする割合は83.3%から70.1%に減少し、自宅での死亡は12.1%から22.9%に増加した。
- パンデミックに関連するがんの超過死亡を示す明確な証拠はなかった。
- 医療機関への訪問制限などの要因が、この変化に寄与した可能性がある。
- がんの診断の減少は一時的であり、がん死亡の超過を招くほどではなかった可能性がある。
- COVID-19パンデミック時の大腸がんのステージ分布の傾向を、DPC(包括医療費支払い制度)データベースを用いて解析した。
- 2020年のCOVID-19パンデミックでは、4月から5月に緊急事態宣言が出された後、7月に早期大腸がんの割合が減少する傾向がみられた。
- COVID-19 パンデミックによる大腸がんのステージ分布への影響は、7 月以降数ヶ月間続き、その後は小さくなった。
Volume 34, Issue 6 (June 2024)
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既存の研究では、喫煙が長期的な生活の質と関連するかどうかは明らかではなかった。
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喫煙は死亡率と有意に関連しているため、追跡調査期間中に死亡した人は追跡調査に参加できないという問題があった。
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本研究では、このような打ち切りバイアスを減少させるために、パターン混合モデルを用いて検証し、喫煙が高齢者の長期的な生活の質を低下させることを示した。
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この研究は、高齢者における社会的孤立、孤独感と慢性腰痛との関連性を検討した。
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孤独感は慢性腰痛と正の関連を示した。
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孤独感を有しており社会的に孤立した人では、慢性腰痛の有症リスクが最も高かった。
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社会的孤立や孤独感への対処は、慢性腰痛の緩和に役立つ可能性がある。
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日本の高齢者におけるBNT162b2ワクチンの有効性を評価した。
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感染、症候性感染、入院に対する有効性は78.1%、79.1%、93.5%であった。
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有効性を評価するためにHER-SYS、VRS、医療レセプトデータを用いた研究であり、COVID-19パンデミック関連データと既存データの二次利用に関する知見を提供した。
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日本人一般集団における食物摂取制限意識と全死亡リスクとの関連を検討した。
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特に、脂肪摂取制限意識のある女性は、全死亡リスクの低下を示しており、その関連は実際の脂肪摂取量を介するものではなかった。
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食物摂取制限意識による全死亡リスク低下への影響は限定的であった。
Revisiting Older Drivers’ Risks of At-fault Motor Vehicle Collisions in Japan(日本における高齢運転者の事故リスクの再検討)
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日本では交通安全のため、高齢運転者の免許返納が奨励されている。
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交通事故を起こすリスクは、運転者の年齢が上がるにつれて高くなる。
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高齢運転者が事故を起こすリスクは、若年運転者のそれよりも低かった。
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高齢運転者が起こした事故において、衝突相手の死傷リスクは高くなかった。
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高齢運転者には生活と健康を維持するため、運転継続支援が必要である。
Cohort Profile: Guangzhou Nutrition and Health Study (GNHS): A Population-based Multi-omics Study(コホート・プロファイル: 広州栄養健康研究(GNHS): 人口集団ベースのマルチオミックス研究)
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この研究は、栄養、環境、遺伝的側面から代謝性疾患の決定因子を評価し、可能性のあるメカニズムを探ることを目的としている。
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中国・広州市の成人を対象とした人口集団ベースのサンプル(ベースライン:2008~2015年、40~83歳、n=5118)を約3年ごとに追跡調査した。
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ベースライン時の年齢中央値は約59.0歳で、女性参加者の割合は69.4%(5118人中3550人)であった。
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詳細な健康関連情報と多くの機器検査を評価した。
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追跡調査中のコホート参加者の宿主と腸内マイクロバイオーム(微生物叢)に関するマルチオミックス解析をした。
Volume 34, Issue 5 (May 2024)
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兄弟姉妹がいることとBA.5優位の流行期間は、有症状の新型コロナウイルス感染症と有意な関連があった。
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年齢、兄弟姉妹、調査時期、最終ワクチン接種からの経過期間を調整した新型コロナワクチン2回接種のワクチン効果(VE)は50.0%であった。
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新型コロナワクチン2回接種のワクチン効果は、接種から3か月以内では72%であった。
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2回のBNT162b mRNAワクチン接種は、オミクロン株流行期の日本の小児において、有症状の新型コロナウイルス感染症に対する中程度の防御効果を示した。
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脳卒中の主要な危険因子と全脳卒中、脳卒中の各病型、脳梗塞の各病型との関連を日本人一般集団の大規模コホートで検証した。
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全脳卒中発症数の25%以上は高血圧によって説明された。
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病型により若干の差異はあるものの、高血圧は日本における脳卒中予防のために最も重要な介入目標とみなし得るであろう。
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修正可能な危険因子をすべてなくすことにより全脳卒中の36.7%を予防できると推察された。
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台湾では違法薬物が、一般的な商品のように見えるパッケージに入れられて普及している。
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一般的な商品パッケージ入り違法薬物の使用について、性差はみられなかった。
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一般的な商品パッケージ入り違法薬物使用者の約3分の1は、中身が何か知らなかった。
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様々な形のパッケージに入っているため、薬物検査が困難である。
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葉酸代謝に関するGWASはいくつか実施されているが、葉酸代謝関連SNPと生活習慣との交互作用を検討した研究はほとんどない。
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我々は、J-MICC研究の4つの研究施設から得られた2,263人のデータを用いて、血漿中ホモシステイン(Hcy)、葉酸(FA)、ビタミンB12(VB12)値のGWASを実施し、八雲研究からの573人のデータで再現性を検証した。
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Hcyについては、1番染色体上のMTHFR遺伝子座、11番染色体上のNox4遺伝子座、16番染色体上のCHMP1A遺伝子座、16番染色体上のDPEP1遺伝子座がGWAS有意であった(P < 5×10-8)。MTHFR遺伝子もFAと関連し、19番染色体上のFUT2遺伝子はVB12と関連していた。
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遺伝子-環境交互作用に関する解析から、MTHFR C677Tと飲酒および身体活動との血中葉酸代謝産物に対する有意な相互作用が明らかになり、将来の個別化心血管病予防の可能性が示唆された。
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COVID-19罹患後症状を有する患者を対象に、感染時期(野生株、Alpha株、Delta株、Omicron株流行期)別の罹患後症状の特徴を評価した。
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多変量解析の結果、野生株流行期と比較してOmicron株流行期に感染した患者では呼吸器症状(咳嗽、喀痰、鼻汁、咽頭痛)を有する頻度が高い一方、嗅覚・味覚障害を有する頻度は低かった。
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また、COVID-19発症中の重症度別にみると、軽症患者では呼吸器症状(咳嗽、喀痰、鼻汁、咽頭痛)が多く認められた一方、中等症以上の患者では呼吸困難、動悸、胸痛が多く認められた。
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野生株流行期と比較してAlpha株流行期に感染した患者では、うつ・不安障害を有する頻度が高かった。
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日本人勤労者におけるCOVID-19流行前後1年間の身体活動の変化を、加速度計を用いて明らかにした。
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COVID-19流行後では身体活動が1日約10分程度低下していることが示された。
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その変化は、休日に比べて平日の仕事中や仕事後の時間帯の方がより顕著であった。
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身体活動の低下に対して、座位行動の増加が確認された。
Profile of Nagasaki Islands Study (NaIS): A Population-based Prospective Cohort Study on Multi-disease [長崎アイランドスタディ (Nagasaki Islands Study, NaIS): 多疾患に関する地域住民コホート研究]
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長崎アイランドスタディ(Nagasaki Islands Study, NaIS)は、日本の離島住民を対象としたコホート研究(長期にわたって集団を観察する研究)であり、2014年に開始された。
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本研究の目的は、加齢の影響や、生まれつきの要因や生活習慣と病気との関連を明らかにし、病気の予防に役立てることである。
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離島で行われるコホート研究では、他の地域では困難な、高い精度の追跡調査や病気の発症の把握が可能である。
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自治体の協力により、対象地域の全薬局から得られた調剤データを含め、様々なリアルワールドデータ(医療保険や介護保険などのレセプト情報)を利用可能である。
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研究開始時のベースライン調査、ならびに二次調査において、中高年者を中心に住民4,957人より理解と調査への参加協力を得て、追跡調査を継続中である。
Volume 34, Issue 4 (April 2024)
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日本のDPCデータから急性肺塞栓症の入院患者を抽出するアルゴリズムの妥当性を、既存のレジストリをゴールドスタンダードとして用いて評価した。
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日本のDPCデータベースの退院サマリ情報(様式1)の診断名情報を用いて、急性肺塞栓患者の90%以上を抽出できた。
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症候性急性肺塞栓症の94.6%を、診断名情報によるアルゴリズムにより抽出できた。
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診断名情報によるアルゴリズムは、日本のDPCデータベースから比較的高い感度で急性肺塞栓症の入院患者を抽出できると考えられる。
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本研究は、被災者における9年間の追跡調査を行い、生活習慣と便秘の関連について検討した。
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男女ともに、年齢が高いこと、心の健康状態が悪化していること、身体活動が少ないことが便秘と有意な関連があった。
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女性においては、食事回数が少ないことと便秘に有意な関連があった。
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災害発生後、中長期的な被災者支援が重要であることが示唆される。
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本研究では、日本人を対象とする住民ベースコホート研究の参加者において、5年間の2型糖尿病罹患リスクの予測モデルを開発および検証を行った。
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本前向き研究では、侵襲性と非侵襲性の予測因子を用いて、5年間の糖尿病罹患リスクを予測するモデルを作成した。
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非侵襲的リスクモデルのROC曲線下面積は0.643であり、非侵襲性の予測因子にHbA1c値を追加したリスクモデルのROC曲線下面積は0.786、HbA1cと空腹時血糖値を加えたリスクモデルのROC曲線下面積は0.845であった。外部検証コホートにおいて、各モデルの判別能が十分であることが確認され、非侵襲性の予測因子にHbA1cを追加したリスクモデルは、較正能も十分であることが確認された。
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第2世代携帯電話 (2G) やPHSは1990年代日本で広く普及したが、韓国では2000年代に第3世代から普及が進んだ、第2世代の出力は第3世代よりもかなり大きいことが知られている。
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MOBI-Kids国際症例対照研究では、若年者において携帯電話(低周波ばく露を含む)と脳腫瘍の関連を認めないことが報告されている。
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本研究では、特に韓国と日本の携帯電話普及状況の差に着目して、若年者における携帯電話の通話利用が脳腫瘍のリスクと関連するかを検討した。
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本研究により、携帯電話使用あるいは、高周波ばく露は神経膠腫または脳腫瘍リスクを増加させないと結論付けられた。
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COVID-19流行後、世界中で渡航状況が変化した。それに伴い、日本の感染症発生動向調査に基づく輸入感染症の疫学も大きく変化した。
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輸入感染症の報告数は、事前に選定した全15疾患で減少した。
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一方で訪日渡航者あたり報告数は、15疾患のうちアメーバ赤痢、マラリアにおいて顕著な絶対的、相対的増加を認めた。
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輸入感染症の早期診断・治療に資するため、渡航者あたり報告数の相対的・絶対的変化を評価し、臨床現場へ情報提供することは重要である。
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感染症発生動向調査で報告された胃腸炎ウイルス陽性検体数と下水中の胃腸炎ウイルス検出状況を比較評価した。
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胃腸炎ウイルス陽性検体が報告されていない期間も、下水から胃腸炎ウイルスが検出されていた。
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小児科定点医療機関ごとの感染性胃腸炎の患者数は、下水から検出されたノロウイルスGIIと最も強い相関が見受けられた。
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下水サーベイランスは、定点報告による感染性胃腸炎のサーベイランスを補完できることが示唆された。
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下水サーベイランスは、感染性胃腸炎のサーベイランスに有用なツールとなり得る。
Volume 34, Issue 3 (March 2024)
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日本人労働者を対象に、糖尿病・前糖尿病と、身体疾患を理由とした長期病休および在職中死亡の複合アウトカムとの関連を前向きに調べた。
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ベースライン時点での糖尿病・前糖尿病は、身体疾患による複合アウトカムのリスク上昇と関連していた。
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疾病別にみると糖尿病・前糖尿病はがん、心血管疾患、筋骨格系疾患、外傷による複合アウトカムのリスク上昇と関連していた。
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本研究の目的は、医療レセプトデータベースからフレイルを判定するClaimed-based frailty index (CFI)が、日本人高齢者にも適用できるかを、有害事象の予測を通して検討することである。
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2014年4月から2019年3月に、ある12市町村の国民健康保険後期高齢者医療制度に加入している高齢者を対象にした。
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CFIによるprefrail、frail群はrobust群と比較して、有意に要介護認定・死亡が起こりやすいことが明らかとなった。
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本研究は、要介護認定・死亡の予測を通して、日本人高齢者におけるレセプトデータベースでも、CFIが適用できることを明らかにした。
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脂肪量指数が高いほど呼吸機能が低いという関連は全ての除脂肪量指数のサブグループにおいて認められた。
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除脂肪量指数が高いほど呼吸機能が高いという関連は全ての脂肪量指数のサブグループにおいて認められた。
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呼吸機能の維持には脂肪の減少および除脂肪量の維持が重要である可能性が示唆された。
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札幌市の陽性者データを用いて、COVID-19患者の報告遅延に関連する患者特性および保健所要因を検討した。
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COVID-19患者12399名を、濃厚接触者と判定され検査に至ったLinked case (7814名)、検査前に感染者との接触歴がなかったUnlinked case (4585名)に分類し分析を行った。
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Linked caseでは報告遅延は主に保健所要因(発症日前7日間の新規陽性者数が多いこと、発症曜日が週末であること)と関連していた。
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Unlinked caseでは報告遅延は主に患者特性(65歳以上、無職、独居)と関連していた。
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社会とのつながりが希薄になりやすい人々への受診に関する啓発活動の強化や医療アクセス改善の必要性が示唆された。
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糸球体過剰濾過は一般人においても心血管病や死亡との関連が報告されており、糸球体過剰濾過発症に寄与する因子の検討が重要である。
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飲酒及び飲酒パターンと糸球体過剰濾過発症との関係を、健常者を対象として前向きに検討した。
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1日当たりの平均飲酒量が多いほど糸球体過剰濾過発症リスクが高かった。
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飲酒パターンを考慮すると、1週間当たりの飲酒頻度が高いグループでは飲酒日当たりの飲酒量が多いほど糸球体過剰濾過発症リスクが高かった。
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一方で、1週間当たりの飲酒頻度が低いグループでは飲酒日当たりの飲酒量が最も多い場合にのみ糸球体過剰濾過発症リスク増加との関係を認めた。
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リコピン、α-カロテン、β-カロテン、ビタミン C、ビタミンEなどの抗酸化ビタミン類の摂取量と前立腺がんリスクとの関連について、多目的コホート研究(JPHC研究)で検討した。
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α-カロテン、β-カロテン、ビタミン C、ビタミンEなどの抗酸化ビタミンの摂取量と前立腺がんリスクには関連は見られなかった。
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リコピンの摂取量が多いほど前立腺がんのリスクが高くなったが、リコピン摂取量と自覚症状で発見される前立腺がんリスクとの関連は認めなかった。
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本研究では、抗酸化ビタミン摂取量と前立腺がんリスクとの間に関連はないことが示唆された。
Volume 34, Issue 2 (February 2024)
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日本人14,083人を対象に、BMIと循環器・代謝系形質との因果関係をメンデルランダム化法によって検討した。
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日本人集団において、個人レベルのメンデルランダム化解析では、予測BMIはどの循環器・代謝系形質とも有意な関連を示さなかった。
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日本人173,430人を対象とした2標本のメンデルランダム化解析に基づく感度解析では、BMIは様々な循環器・代謝系形質と関連した。
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肥満度の低い東アジア人である日本人集団でも、ヨーロッパの研究結果と同様に、BMIの高さは様々な循環器・代謝系形質と因果関係がある可能性がある。
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これらの関連の因果関係は、今後、より大規模な集団を対象とした研究で明らかにされるべきである。
- 外出頻度と複合的な口腔機能低下、および歯牙欠損、噛めない食品の増加、むせ、口渇感のリスクとの間で負の関連を見出した。
- 外出頻度と口腔機能低下リスクとの関連は、修正可能なリスク因子によって2~13%媒介された。
- 外出頻度は、高齢者において口腔機能低下の有用な予測因子の可能性がある。
- 日本におけるてんかん有病率・罹患率に関する全国規模の調査報告は乏しい。
- 患者の規模(有病率と発症率)を把握することは治療戦略を考える上で重要である。
- 本研究では、(株)JMDCが契約する全国の健康保険組合加入者約1,000万人分(2012-2019年)の大規模レセプトデータベースを活用し、日本のてんかん有病率、発症率を算出した。
- 2010、2014、2018年の国民健康・栄養調査結果を用いて、所得群間の食品摂取量を男女別に比較した。
- 女性において、2010年と2014年には「600万円以上」群で「200万円未満」群より野菜摂取量が有意に多かった。しかし、「600万円以上」群と「200万円以上~600万円未満」群では2010年に比べて2018年の野菜摂取量は有意に少なく、女性における所得群に伴う野菜摂取量の差は経年的に有意に変化した(調査年×所得群の相互作用のp=0.04)。
- 2010~2018年の日本人女性においては、所得が低い群の野菜摂取量の増加ではなく、所得が高い群の野菜摂取量の減少により、望ましくない形で所得群間の食品摂取量の差が縮まった可能性がある。今後の研究では、本調査よりも詳細な所得の質問票を用いた観察期間がより長い調査データによる検討が必要である。
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PM2.5の金属成分(銅とバリウム)が肝細胞がん発生の増加と関連していた。
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複数成分を同時に調整すると、銅成分が独立して肝細胞がんと関連していた。
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肝炎ウイルス感染がない集団においても銅成分と肝細胞がんとの関連性が観察された。
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高身長が大腸がんのリスクに関連していることを示す科学的証拠はアジア人で不足している。
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日本人成人を対象にした10の住民コホート研究に基づくプール解析を実施し、身長と大腸がんリスクとの関連を調べた。
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男女とも、身長が高いことは大腸及びその亜部位のがんのリスク上昇と関連していた。
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成人期の身長は、日本人の大腸がんハイリスク者を同定する一助となる。
Volume 34, Issue 1 (January 2024)
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本研究は、血清リポ多糖結合蛋白(LBP)値とメタボリックシンドローム(MetS)発症との関連を検討した最初の前向きコホート研究である。
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血清LBP値の上昇に伴いメタボリックシンドロームおよびその構成要素の発症リスクは上昇した。
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媒介解析において、HOMA-IRと血清高感度CRPは血清LBPとMetS発症との関連に、部分的に介在していた。
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血清LBP値とメタボリックシンドロームの発症リスクの関連はインスリン抵抗性と慢性炎症を介した機序が示唆された。
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レセプトデータベースにlasso回帰を適用し、外来での漢方製剤の処方を目的変数としたモデルを作成した。
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作成されたモデルは、使用頻度が高い10種類の漢方製剤の処方を高い精度で説明可能であった。
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作成されたモデルにより、様々な漢方製剤の処方に共通した予測因子、および各々の製剤に特徴的な患者要因が明らかとなった。
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我々は、労働者における広範な日常生活のストレスと口腔の健康の関連を検討することを目的として本研究を実施した。
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対象者 274,881 名のうち、口腔の健康の問題の有病率は、ストレスのない人で 2.1%、ストレススコアが最大の人で15.4%であった。
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交絡要因を考慮したAIPWで推定した口腔の健康の問題の有病率は、ストレスのない人で2.2%、ストレススコアが最大の人で14.4%であった。
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日常生活のストレスと口腔の健康の問題との間には,明確な用量反応的な関係が認められた。
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身体活動量および座位時間と健康アウトカムとの量反応曲線の検討は、重要な研究課題の一つに位置づけられている。
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中高強度身体活動量と総死亡リスクとの間には、非線型の有意な負の量反応関係が確認された。
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推奨値よりもさらに高い水準の身体活動量(およそ3000-4500 METs・分/週)において、総死亡リスクは最低値を示した。
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それ以上の身体活動量では、さらなる総死亡リスクの低減はみられず、総死亡リスクの有意な上昇もみられなかった。
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本研究では、座位時間と総死亡リスクとの間に有意な量反応関係はみられなかった。
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アドレナリンが投与された心電図が心静止の成人窒息心停止患者に対し、高度な気道確保を行うことは、一ヵ月後の生存率と心拍再開率を改善させた。
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しかし、高度な気道確保により神経学的、機能的予後は改善させなかった。
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特に高齢者では、心電図が心静止の窒息による心肺停止患者の予後と、患者へ高度な気道確保を行うことの効果を理解することは重要であり、高度な気道確保を行う前に家族にその予後と効果を説明し、アドバンストケアプランニングを確認することが重要である。
Variance Estimation for Logistic Regression in Case-cohort Studies(ケースコホート研究におけるロジスティック回帰の分散推定)
- ケースコホート研究の統計解析において、Schouten et al. (Stat Med. 1993;12:1733–1745) によって提案されたロジスティック回帰分析は、交絡要因の調整を行った上でリスク比を推定することができる簡便な方法として、現状のスタンダードな方法の一つとして広く用いられている。
- Schouten et al. (1993) は、ロバスト分散によって、リスク比の標準誤差を推定することができると提案しているが、本研究では、この分散推定方法にバイアスがあることを示す。
- また、本研究では、ケースとサブコホートの重複を適切に考慮したバイアスのない方法として、ブートストラップ法による分散推定の方法を新たに提案し、それに基づく信頼区間・検定の構成方法を提案する。
- シミュレーション実験による結果、現実的な条件下で、ロバスト分散には過大評価方向のバイアスがあることが示され、一方、提案したブートストラップ法を用いることで、バイアスのない、妥当な信頼区間・検定を構成することができることが示された。
Study Profile
Cohort Profile: The China Severe Trauma Cohort (CSTC) [コホートプロファイル:The China Severe Trauma Cohort (CSTC)]
- The China Severe Trauma Cohort (CSTC)は、中国人における外傷関連アウトカムに焦点を当てた、初の病院ベースの大規模コホートである。
- CSTCの特徴は、厳格な品質管理プロセスによる生体試料とデータの収集、ベースラインと複数回のフォローアップの回答率の高さである。
- CSTCの目的は、環境的・生物学的要因が外傷関連アウトカムにおよぼす影響とメカニズムを探求する研究をサポートすることである。