日本語版Highlights
Volume 33, Issue 1-3 (2023)
Issue 3 (March 2023)
Issue 2 (February 2023)
Issue 1 (January 2023)
Volume 33, Issue 3 (March 2023)
-
エコチル調査に登録された55,203単胎生産を対象として、妊娠間隔と早産との関連について検討した。
-
妊娠間隔18~23か月と比べて、妊娠間隔6か月未満及び120か月以上において、早産リスクが高かった。
-
この早産リスクの上昇は不十分な葉酸摂取(サプリメントを含む)の群で認められた。
-
JPHC研究における17,546人の死亡データを用いて、死亡場所に影響を与える要因を探った。
-
未婚であること、心血管疾患・脳血管疾患死亡、外因死などが在宅死亡と関連していた。一方、がん死では在宅死亡が少ない傾向にあった。
-
男性の場合、死別、離婚といった婚姻状況、無職、飲酒が多い状態が在宅死亡と関連していた。
-
婚姻状況、職業などから社会的な関わりが少ない状況、また死亡のタイミングの予測が困難な死因において在宅死亡との関連が示唆された。
-
東日本大震災後から少なくとも2年半後の妊婦において、被災と妊娠前の過体重との関連が認められた。
-
被災が直接的、及び、間接的に妊娠前の過体重を介して、妊娠高血圧症候群の発症と関連していた。
-
本研究では、家屋の被害により被災状況を評価しているため、災害の影響が過小評価されている可能性があり、今後のさらなる研究が待たれる。
-
日本人高齢者において、高次生活機能の障害は長期間の全死亡リスクの上昇と関連していた。
-
女性では、手段的日常生活動作や知的活動の障害が死亡リスクの上昇と関連していた。
-
男性では、社会的役割の障害が死亡リスクの上昇と関連していた。
-
高次生活機能の障害と死亡リスクの関連は死因別(心血管疾患、脳卒中、がん、肺炎)に検討しても同様の傾向が認められた。
-
脳卒中は、中国における死亡および身体障害の第1位の原因であり、世界でも第2位の死因である。
-
推定糸球体濾過量(eGFR)の経時的変化と脳卒中の発症リスクとの関連性については、まだ結論が出ていない。
-
中国の高血圧患者では、eGFRの経時的な低下と上昇の両方が、脳卒中の初発リスクと独立して関連していた。
-
したがって、eGFRの経時的な変化の軌跡をモニタリングすることは、脳卒中のリスクが高い患者を特定する臨床判断に有益であると考えられる。
-
死亡した患者は、高齢で入院時のDダイマー値が高く、併存疾患も多かった。
-
死亡した患者は、入院時のCOVID-19感染症がより重症であった。
-
死亡した患者は、血栓症および大出血の発生率が高かった。
-
入院中のCOVID-19患者の死亡予測因子が見出された。
Volume 33, Issue 2 (February 2023)
-
母乳栄養が、成人期以降の肥満を抑制するかどうかはこれまで明らかでなかった。
-
茨チル研究の長期間前向き追跡デザインにより、乳児期の栄養摂取方法とその後の体格との関連を検討した。
-
母乳栄養は、小児期の過体重リスクの低下と関連したが、思春期や成人期での過体重リスクとの関連は認めなかった。
-
本研究は、全国データベースを用いて日本におけるミトコンドリア病の患者数を包括的に推定した初めての試みである。
-
2018年4月から2019年3月までの期間に、国内で3,629人のミトコンドリア病患者が存在した。これは、日本政府によって2018年に報告された指定難病受給者証所持者数である1,504人の2倍以上であった。
-
日本の医療システムは、現時点で予想されているよりもさらに多くのミトコンドリア病患者を支援する必要があるかもしれない。
- 糖尿病は軽度認知障害の高リスク状態である。
- 中年期の空腹時血糖値は、MoCA-Jで評価した高齢期の認知機能と負の関連があることが示された。
- 中年期糖尿病患者への積極的介入の実施は軽度認知障害予防にも重要である。
- 薬理疫学研究で最近多く使用されている自己コントロールデザインにおいて、測定不可能な時間バイアスの影響は未だ検討されていない。
- 入院患者と外来患者の両方の投薬日が記載されている韓国の医療データベースを使用して、ケースクロスオーバー、ケースタイムコントロール、およびケースケースタイムコントロールの分析を実施した。
- 高齢患者の2つの症例を使用して、1)ベンゾジアゼピンの使用と股関節骨折、および 2)ベンゾジアゼピンの使用と死亡率、について測定不可能な時間バイアスの影響を検討した。
- 測定不能な時間バイアスは、急性イベントに対する薬剤の効果にほとんど影響を与えなかったが、全死亡率に対しては薬剤の影響に負のバイアスがかかっていることがわかった。
- 大腸がん死亡・罹患に対する便潜血検査(FOBT: fecal occult blood test)と大腸内視鏡検査の有効性を同時に評価した。
- 本研究では多目的コホート研究の30,381人を解析した。
- FOBTと内視鏡検査の情報は3回の質問票(5年おき)から抽出した。
- FOBTは回数に応じて、内視鏡検査は時期に応じて大腸がん死亡・罹患のリスクが低下した。
- 本研究では、韓国の高齢者、特に低所得の高齢者を対象に、歯科保険の拡大が高齢者の歯科医療ニーズに与える因果効果を明らかにすることを目的としている。
- 2010年と2016年~2018年の韓国国民健康栄養調査データをもとに、二重差(DD)分析と三重差(DDD)分析を用いて、政策実施前後のデータを比較した。
- 韓国では、歯科保険の拡大により、歯科補綴サービスへのアクセスが全体的に改善された。
- 予想に反し、歯科保険の拡大は、高齢者の歯科治療ニーズが満たされていないという自覚の増加(8.8%ポイント)と関連していた。しかし、保険拡大により、低所得者の満たされていない歯科治療ニーズの増加は、高所得者に比べて21.6%低かった。
Volume 33, Issue 1 (January 2023)
-
これまでに大規模データを用いてヘリコバクター・ピロリ菌除菌後の抗体価の時系列変化について報告した研究はほとんどない。
-
本研究は、コホート研究の横断データを使用してヘリコバクター・ピロリ菌除菌後の血清学的反応について分析した。
-
ヘリコバクター・ピロリ菌抗体価は除菌治療後1年以内に大幅に減少する一方、陰転化までには長期間が必要であることが分かった。
-
妊娠初期に禁煙した女性の23.7%が、産後1年の間に喫煙を再開していた。
-
教育歴、分娩歴、母乳育児、産後うつが、産後の喫煙再開と関連していた。
-
家庭で受動喫煙にさらされている女性は、産後に喫煙を再開する割合が高かった。
-
職場で受動喫煙にさらされている女性は、産後に喫煙を再開する割合が高かった。
-
就業は健康に総じてプラスだが、メンタルヘルスには逆効果であった。
-
定年延長や年金の支給開始年齢の引き上げは高齢者就業を高める可能性があった。
-
就業の引き上げが高齢者の健康に及ぼす影響は不透明であった。
-
本研究は身長と脳梗塞病型の発症リスクの関連を調べた世界で初めての研究である。
-
男性において、40-59歳、60-79歳のいずれの年齢階級でも、身長は全脳卒中及び脳血栓の発症リスクと有意な負の関連を示し、身長五分位の最も低い群では中間群(第3群)に比し、それらの発症リスクは増加していた。
-
40-59歳の男性において、身長は脳塞栓及び脳内出血の発症リスクと有意な負の関連を示したが、最低身長群におけるそれらの発症リスクの増加は統計学的に有意ではなかった。
-
40-59歳の女性において、身長は全脳卒中、脳卒中及び脳梗塞病型のいずれの発症リスクとも明確な関連を示さなかった。
-
60-79歳の女性において、身長は全脳卒中及び脳内出血の発症リスクと正の関連の傾向を示し、最高身長群では中間群(第3群)に比し、それらの発症リスクは有意に増加していた。
-
日本人一般集団において、血清ヒドロキシビタミンD3低値は糖尿病と関連があった。
-
血清ヒドロキシビタミンD3と自然対数変換したインスリン抵抗性指数(HOMA-R)の間には軽微な負の関連があった。
-
これらの観察された関連は、社会人口学、生活習慣、身体および環境に関する因子と独立していた。
-
血清ヒドロキシビタミンD3と自然対数変換したインスリン分泌指数(HOMA-β)の間には明確な関連がなかった。
-
男性におけるCOVID-19の重症化リスクは、10歳以上年上の女性と同等であった。
-
4つの先行研究においても、COVID-19の重症化に男女差が大きく影響していた。
-
COVID-19の重症化リスクを予測する要因の一つとして男女差に着目し,公衆衛生政策において考慮すべきである。
- 日本のCOVID-19流行下において、女性の自殺者数が増加した。
- 失業率の経時的変化を考慮しながら、コロナ禍の女性の自殺について、職種、動機、年齢の各カテゴリ別にO/E比を評価した。
- 2020年3月から12月の期間において、ほぼすべてのカテゴリでO/E比が1.0を大きく上回り,その後2021年10月までの期間でも続いていた。
- COVID-19流行時における自殺予防対策としては、特定の集団に限定した介入を行うのではなく、全方位的な対策が重要になるであろう。
- 台湾原子力発電所・疫学コホート研究(TNPECS)は、3つの原子力発電所のいずれかの近くに住んでいることによる38年間の放射線被ばくが、がんのリスクに関連するかどうかを調査するためのデータソースを提供している。
- TNPECSは、1978年から2016年までに、台湾の3つの原子力発電所のいずれかの近く(8km以内)に住んだことのあるすべての住民を対象としている。この母集団の大きさにより、希少ながんのアウトカムに対応する新しい研究のアイデアを評価することができる。
- 住民全員に付与された固有の識別番号により、台湾の全国がん登録(TCR)、台湾死亡登録(TDR)、国民健康保険データベースの情報をリンクし、38年間の放射線に関連するがんを追跡することができ、幅広い研究課題に応える機会を提供している。