Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.23-2

日本人の青年期における心血管疾患危険因子と乳幼児期の急速な体重増加の関連

藤田裕規1、甲田勝康1、中村晴信2、伊木雅之1
1近畿大学医学部公衆衛生学教室、2神戸大学大学院人間発達環境学研究科

【背景】乳幼児期の体重増加とその後の心血管疾患危険因子との関連についての研究はほとんどない。今回は青年期の心血管疾患危険因子と乳幼児期の急速な体重増加(RWG)との関連について調査した。
【方法】標的集団は2008年、2009年あるいは2010年に袋井市の公立学校に在籍した2285名の生徒(中学2年生)であった。そのうち1624名から中学2年時の血圧値、血清脂質値、身体測定値のデータを入手し、乳幼児期の身体測定値は母子健康手帳から入手した。RWGは、出生時から1.5歳あるいは1.5歳から3歳の間の体重SDスコア変化が0.67以上として定義した。
【結果】交絡因子を調整後、出生時から1.5歳あるいは1.5歳から3歳の間にRWGがあった者は、RWGがなかった者と比べて、より過体重になる可能性が高かった。出生時から1.5歳と1.5歳から3歳の両期間にRWGがあった者も、より過体重になる可能性が高く(オッズ比, 6.37; 95% 信頼区間, 3.06-13.24)、さらに、好ましくない血清脂質値(オッズ比, 2.03; 95% 信頼区間, 1.15-3.58)や高い血圧値(オッズ比, 2.36; 95% 信頼区間, 1.34-4.13)を持つ可能性が高かった。この解析モデルにおいて、さらに現在のbody mass indexで調整した場合、RWGと好ましくない血清脂質値や高い血圧値との関連はなくなった。
【結論】乳幼児期のRWGは青年期の好ましくない血清脂質値や高い血圧値を予測する。この関連はその後の体格によって介在されている。

キーワード:血圧、体重変化、乳幼児、青年期、リポタンパク質
P103-108

日本人中高年勤労者におけるタンパク質、脂質、炭水化物摂取と不眠症状の関連

田中英三郎1、八谷寛1,2、上村真由1、村田千代栄3、大塚礼4、豊嶋英明5、玉腰浩司6、佐々木敏7、川口レオ1、青山温子1
1名古屋大学大学院医学系研究科国際保健医療学・公衆衛生学、2藤田保健衛生大学医学部公衆衛生学、3国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター社会参加・社会支援研究室、4国立長寿医療研究センター予防開発部予防栄養研究室、5安城更生病院健康管理センター、6名古屋大学医学部保健学科、7東京大学大学院医学研究科社会予防疫学分野

<抄録>
【背景】食事が睡眠の質に影響を与える可能性が考えられている。しかし、三大栄養素と不眠に関する先行研究結果は一貫していない。本研究の目的は、タンパク質、脂質、炭水化物摂取と不眠症状の関連を調査することである。
【方法】4435名の非交代勤務者を対象として横断解析を実施した。三大栄養素の摂取量は、過去1カ月間の58品目の食事の摂取状況を思い出して記入する簡易型食事歴法質問票から推定した。不眠症状は、入眠困難、中途覚醒、熟眠障害の有無を自記式質問票で確認した。三大栄養素と不眠症状の関連性は、年齢、性別、ストレス、生きがい、飲酒、喫煙、運動習慣、病歴を調整したロジスティック回帰分析を用いて評価し、関連性の指標にはオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を用いた。
【結果】低タンパク質摂取(全エネルギー摂取の16%未満)はそれ以外と比べて、入眠困難(OR 1.24、95%CI 0.99-1.56)と熟眠障害(OR 1.24、95%CI 1.04-1.48)に関連した。一方、高タンパク質摂取(全エネルギー摂取の19%以上)はそれ以外と比べて、中途覚醒(OR 1.40、95%CI 1.12-1.76)と関連した。また、低炭水化物摂取(全エネルギー摂取の50%未満)はそれ以外と比べて、中途覚醒(OR 1.19、95%CI 0.97-1.45)と関連した。
【結論】日常の食事におけるタンパク質および炭水化物の摂取量と不眠症状の関連が明らかになった。今後は因果関係に関するさらなる検討が必要である。

キーワード:入眠困難、中途覚醒、熟眠障害、横断研究
P132-138

肥満/体重増加と乳がんリスク:がんリスクの評価のためのJACC研究からの知見

鈴木貞夫1、小嶋雅代1、徳留信寛2、森満3、坂内文男3、若井建志4、藤野善久5、林櫻松6、菊地正悟6、玉腰浩司7、玉腰暁子8、JACC研究グループ
1名古屋市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学分野、2国立健康・栄養研究所、3札幌医科大学医学部公衆衛生学、4名古屋大学大学院医学研究科予防医学、5産業医科大学公衆衛生学、 6愛知医科大学公衆衛生学、7名古屋大学医学部保健衛生学科、8北海道大学大学院医学研究科公衆衛生学

【背景】 日本共同コホート研究(JACC研究)の、1988-1990年をベースラインとした40-79歳の女性36164人(乳がんの既往がなく、身長や体重のデータが揃っているもの)のデータを用いて、肥満指数(BMI)と20歳からの体重増加が乳がんと関連しているかを、欧米人以外の集団で検討するために分析した。
【方法】 対象者を1999-2003年まで追跡した(追跡期間の中央値は12.3年)。追跡期間中、乳がん罹患は主として地域がん登録と記録照合して確認した。コックスの比例ハザードモデルを用い、体格と乳がんの関連についてのハザード比と95%信頼区間を計算した。
【結果】 397644.1人年の追跡で、234例の乳がん罹患があった。閉経後の女性では、BMIの上昇に伴い補正したハザード比は有意な線形傾向をもって上昇した(p<0.0001)。BMIが20から23.9の女性と比べて、24以上では有意にリスクは高かった(BMIが24-28.9ではハザード比:1.50、95%信頼区間:1.09-2.08、29以上ではハザード比:2.13、95%信頼区間:1.09-4.16)。20歳以降の体重増加とそれに伴う肥満・過体重が重なると、閉経後の乳がんのリスクとなった。このリスクの重なりは、60歳以上の女性でより強く観察された。閉経前の女性については、体格と乳がん発生の間に有意な結果は観察されなかった。
【結論】 我々の得た知見は、体重増加とそれに伴う肥満・過体重が重なると、閉経後の、特に60歳以上の女性で乳がんのリスクになるという仮説を支持した。

キーワード: 乳がん、肥満、体重増加、コホート研究
P139-145

日本のがん対策の新しい挑戦

野田博之、鷲見学
厚生労働省健康局がん対策・健康増進課

要旨
2012年6月8日、第二期の「がん対策推進基本計画」の開始が閣議決定された。基本計画の第二期では、がんによる死亡者の減少、全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、がんになっても安心して暮らせる社会の構築を全体目標と設定して、医学的社会的観点から、がん対策の質をさらに改善することとしている。新しい基本計画は、医学的社会的観点に立った国際的ながん対策において、先駆的な挑戦となるであろう。

キーワード:がん対策、がん対策推進基本計画
P153-154

 
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