Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.16-2

Alcohol Consumption and Lung Cancer Mortality in Japanese Men: Results from Japan Collaborative Cohort (JACC) Study

Yoshikazu Nishino, et al.
(P49~56)

日本における完全母乳栄養実施の関連要因
Factors Associated with Exclusive Breast-feeding in Japan
―For activities to support child-rearing with breast-feeding―

金子明代(日本大学医学部社会医学講座公衆衛生学部門)、兼板佳孝、横山英世、三宅健夫、原野悟、鈴木健修、井深栄治、筒井孝子、山本佑子、大井田隆
【背景】母乳栄養の利点は発展途上国における栄養面・衛生面に限られるものではなく、先進国においても医療費の節約や母親の育児不安軽減などに役立つと考えられており、その意義は経済的・社会的にも多大である。この研究の目的は日本での完全母乳栄養の実施を促進させる要因を明らかにすることである。
【方法】本研究は、厚生労働省が実施した第1回21世紀出生児縦断調査の集計データを用いた横断研究である。日本全国で、2001年1月10日から1月17日の間及び7月10日から7月17日の間に出生した児全てに厚生労働省が自記式調査票を郵送し、家族が回答を記入したものを郵送にて返送する方法で調査は実施された。対象児の例数は53,575であり回収率は87.7%であった。調査によると日本の生後6か月までの完全母乳栄養率は21.0%であった。我々はその調査結果を用いロジスティック回帰分析にて完全母乳栄養の普及を促進する要因を検討した。
【結果】高齢出産、低出生体重児、喫煙者、祖父母との同居は完全母乳栄養の実施を妨げる要因であった。充分な育児休暇、助産師・看護士や育児サークルの仲間に育児の相談をするということは完全母乳栄養の実施を促進させる要因であった。
【まとめ】完全母乳栄養の普及を推進するには社会的な要因の影響が重大であり、更なる社会的・政策的な支援の必要性が本研究によって明らかになった。
【キーワード】母乳、日本、ロジスティック回帰分析
(P57~63)

日本の児童生徒における血漿フィブリノゲン濃度と心血管危険因子
Plasma Fibrinogen Levels and Cardiovascular Risk Factors in Japanese Schoolchildren

藤井千惠(名古屋大学大学院医学系研究科公衆衛生学、名古屋大学医学部保健学科)、榊原久孝、近藤高明、八谷 寛、玉腰浩司、豊嶋英明
【緒言】血漿フィブリノゲンは、成人のアテローム性動脈硬化症とその血栓性合併症の独立した危険因子として近年認められている。そこで、日本の児童生徒における血漿フィブリノゲン濃度と心血管危険因子の関連について検討した。
【方法】2000年に長野県のある町の10-13歳の児童生徒合計294人(男子145人、女子149人)を対象にBMI、血漿フィブリノゲン、C-反応性蛋白(CRP)、総コレステロール、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、ヘモグロビン(Hb)A1c、TCHR(総コレステロールとHDLコレステロールの比)を調査検討した。【結果】児童生徒の血漿フィブリノゲン濃度の平均値と標準偏差は、男子は226.0±39.7mg/dL、女子は245.3±40.9mg/dLで有意に女子の方が高かった。血漿フィブリノゲン濃度の3分位別の検討では、血漿フィブリノゲン濃度が増加すると男女共にCRPが有意に高くなった。また、男子の総コレステロール、女子のTCHR、HbA1cおよびBMIで有意に増加している傾向が認められた。線型重回帰分析では、男女共に血漿フィブリノゲンとCRPおよびHbA1cの間で有意な関連が認められた。さらに、男子ではTCHR、女子ではBMIと有意な関連がみられた。
【結語】日本の児童生徒において、血漿フィブリノゲンとCRP、TCHR、HbA1c、BMIなどの心血管危険因子との間で有意な関連が示された。
【キーワード】フィブリノゲン、心血管疾患、危険因子、児童生徒、動脈硬化
(P64~70)

The Homeostasis Model Assessment-insulin Resistance Index is Inversely Associated with Serum Carotenoids in Non-diabetic Subjects

Minoru Sugiura, et al.
(P71~78)

日本人男女勤労者における仕事のストレイン、職場の支援および栄養摂取
Job Strain, Worksite Support, and Nutrient Intake among Employed Japanese Men and Women

川上憲人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)、堤 明純、原谷隆史、小林章雄、石崎昌夫、林 剛司、藤田 定、相澤好治、宮崎彰吾、廣 尚典、桝本 武、橋本修二、荒記俊一
【背景】仕事の要求度-コントロールモデルによる仕事のストレインおよび職場の支援と栄養摂取との関係は明確でない。
【方法】日本の9つの企業で雇用されている労働者25,104 名から質問票調査への回答を得た。仕事のストレインと職場の支援はJob Content Questionnaireにより測定された。17種類の栄養素の一日あたり摂取量は食事記録調査票で評価された15,295 名の男性と2,853名の女性のデータを、年齢、学歴、婚姻、職業、調査事業場を調整して解析した。
【結果】男性では、仕事のストレインは脂肪、ビタミンE、コレステロール、多価および単価不飽和脂肪酸の一日あたり摂取量と正の関連を示した(トレンドの検定p<0.05)。また職場の支援は総カロリー、素繊維、レチノール、カロテン、ビタミンA, C, E、コレステロール、飽和脂肪酸の一日あたり摂取量と正の関連を示した(トレンドの検定p<0.05)。女性では、職場の支援は総カロリー、たんぱく質、ビタミンE、多価不飽和脂肪酸一日あたり摂取量と正の関連を示した(トレンドの検定p<0.05)。しかし差は全般的に小さかった。
【結論】本研究では、仕事のストレインと職場の支援は、栄養素摂取量と弱いまた一定しない関係を示すのみであった。栄養素の変化は、仕事のストレインや職場の支援と虚血性心疾患との関係を説明する要因ではないように思われる。
【キーワード】虚血性心疾患危険因子、食事性脂質、仕事のストレス、社会的支援、日本
(P79~89)

Letters to the Editor
Young Epidemiologists' Attitude towards Personal Data Protection

P90~92)

 
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