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Journal of Epidemiology vol.22-(6)

1)日本人集団における塩基除去修復遺伝子多型と膵臓がんリスクの検討

中尾心人1,2、細野覚代1、伊藤秀美1、渡邉美貴1、水野伸匡3佐藤滋樹2、谷田部恭4、山雄健次3、上田龍三4、田島和雄1、田中英夫1,5、松尾恵太郎1,5

1愛知県がんセンター研究所疫学・予防部、2名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学、3愛知県がんセンター中央病院消化器内科部、4愛知県がんセンター遺伝子病理診断部、5名古屋大学大学院医学研究科健康社会医学専攻疫学

【背景】喫煙者においてDNA修復遺伝子と膵臓がんリスクの関連性がいくつかの研究で報告されているが、アジア人集団においてはまだ十分に検討されていない。本研究では、塩基除去修復系の遺伝子多型が膵臓がんリスクに与える影響について日本人集団で検討した。
【方法】塩基除去修復系遺伝子の5個の一塩基多型(SNPs)、rs1052133(OGG1)、rs1799782およびrs25487(XRCC1)、rs1130409(APE1)、rs11364101(PARP1)、について症例対照研究で検討した。185人の膵臓がん患者と1465人の非がん患者において、TaqMan法によるSNPs解析を行った。膵臓がんリスクと遺伝子多型および遺伝子‐環境交互作用については、unconditional logistic解析で評価した。またハプロタイプに基づいた解析も行った。
【結果】rs25487(XRCC1)のマイナーアレルは、per-alleleモデルにおいて、有意に膵臓がんリスクと関連していた(オッズ比:1.29、95%CI:1.01-1.65;trend P=0.043)。XRCC1のハプロタイプ解析においても、膵臓がんリスクと統計学的に有意な関連を認めた。XRCC1遺伝子多型と喫煙状況については、統計学的に有意な交互作用を認めなかった。
【結論】XRCC1遺伝子多型が、日本人集団において膵臓がんリスクに影響を与えることが示唆された。
キーワード:膵臓がん、SNPs、DNA修復遺伝子、XRCC1
P477-483

2)日本の施設入居高齢者の日常生活動作(ADL)と生命予後との関連

中澤明美1、中村和利2、北村香織2、吉澤善明3
1 東都医療大学ヒューマンケア学部看護学科、 2 新潟大学大学院医歯学総合研究科環境予防医学分野、 3 新潟県老人福祉施設協議会

【背景】本研究は、日本の高齢者施設に入居している高齢者のADLと生命予後との関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】新潟県老人福祉施設協議会に所属する高齢者施設のうち研究の同意の得られた140の高齢者施設で生活する8902名の高齢者を対象とした1年間のコホート研究を実施した。ベースラインにおいて年齢、性、身長、体重、BMI、ADLと認知症レベルを調査した。ADLの程度の判定にはBarthel Index(BI)を用い、施設の看護師または介護士の判定によりBIの総得点(高得点ほど自立している)を算出した。退所および死亡した日付より人-年を算出した。Cox比例ハザードモデルを用いて生命予後のハザード比とその95%信頼区間を算出した。
【結果】対象者の平均年齢は84.3歳、BI総得点の平均は38.5点であった。性、年齢、BMI、施設の種類で調整した生命予後のハザード比は、BI総得点100点(自立)のグループを基準とすると、BI総得点0点(全介助)のグループでは7.6(95%信頼区間:3.3-17.8)、BI総得点1~10点のグループでは3.9(95%信頼区間:1.7-9.0)、BI総得点11~40点のグループでは3.5(95%信頼区間:1.4-8.7)、BI総得点41~70点のグループでは2.7(95%信頼区間:1.4-5.1)、BI総得点71~99点のグループ(有意水準p<0.001)では1.3(95%信頼区間:0.7-2.4)であった。多変量分析では、BI、性、年齢、BMIが生命予後に関連することが明らかになった。
【結論】ADLレベルと生命予後には明確な負の関連が見られた。他のリスク要因も考慮することにより、ADLレベルは効果的に施設入居高齢者の短期間の生命予後を予測し得る。
キーワード:日常生活動作(ADL)、虚弱高齢者、高齢者施設、生命予後
P501-507

3)PPARG2 遺伝子のPro12Ala多型とHbA1cとの関連

原めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)、檜垣靖樹、田口尚人、新地浩一、森田えみ、内藤真理子、浜島信之、高嶋直敬、鈴木貞夫、中村昭彦、大中桂三、上村浩一、細野覚代、三上春夫、久保充明、田中英夫

【背景】肥満や脂質代謝に関連する遺伝子のPPARG2の変異型の人で糖尿病のリスクが低いことが分かってきたが、糖尿病の危険因子とPPARG2の遺伝子型がHbA1cに与える影響は十分に検証されていない。そこで、PPARG2の遺伝子の型と糖尿病の危険因子がHbA1c値に及ぼす影響、および交互作用について検討した。
【方法】J-MICC Studyのベースライン調査に参加した40~69歳の男性1281人、女性1356人のデータを用いて横断研究を実施した。遺伝子多型はMultiplex PCR-based Invader assay方法により決定した。男女別に、Pro12Ala多型とHbA1cの関連について、開始時の年齢、エネルギー摂取量、身体活動量、飲酒状況、喫煙状況、BMIで調整し、共分散分析、重回帰分析を行った。
【結果】女性では、PPARG2遺伝子のPro12Ala型及びAla12Ala型を持つ者はPro12Pro型を持つ者と比較して、HbA1cが有意に低かった。PPARG2がPro/Pro型の人は、加齢や肥満、家族歴があるとHbA1cの上昇がみられたが、Pro/AlaまたはAla/Ala型の人ではみられなかった。女性ではHbA1c値に対しBMIと遺伝子多型による有意な交互作用がみられた。加齢や肥満、家族歴はHbA1c高値と有意な関連がみられたが、PPARG2遺伝子の多型とHbA1c高値の間に有意な関連はみられなかった。
【結論】PPARG2遺伝子のPro12Ala多型は、HbA1cと既知の危険因子の関連に影響を与える可能性があるが、一般集団においてHbA1c高値に対する影響は既知の危険因子に比べて小さかった。
P523-531

4) 経済的な相互支援を目的としたソーシャル・キャピタル(無尽講)が機能障害及び死亡のリスクに与える影響:8年間の追跡研究

近藤尚己1,2, 鈴木孝太1, 薬袋淳子3, 山縣然太朗1

1山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座
2東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学分野
3国際医療福祉大学小田原保健医療学部看護学科

【背景】回転型貯蓄金融講(ROSCA)は金銭的な相互支援の活動である。日本では無尽(講)と呼ばれ、主に交流を目的としていくつかの地方で今も行われている。これまでに日本人高齢者の横断研究によって、無尽への活発な参加がソーシャル・キャピタルや機能維持と関連することが示されているが、健康との縦断的な関連についての報告はない。
【方法】山梨健康寿命追跡調査において、山梨県内に住む65歳以上の自立高齢者583名に訪問調査を実施した。2011年までの追跡調査結果を比例ハザードモデルを用いて分析した。無尽に関連する8個の質問を因子分析し、「(参加の)強度と態度」「金融的性質」の2因子を抽出した。
【結果】因子得点が1SD上昇するごとの、機能障害の発生(介護保険における要介護認定・要介護3以上の発生)のハザード比(HR)は「強度と態度」因子で0.82 (95%信頼区間: 0.68–0.99)、金融的性質因子で1.21 (1.07–1.38) であった。年齢、性別、婚姻状況、世帯構成、身体的健康状態、学歴、所得、もう一つの無尽因子で調整したところ、わずかにこれのハザード比は1に近づいた。死亡をアウトカムとし分析結果はほぼ同様であった。
【結論】 日本のROSCAは、交流を目的としたものの場合高齢者の健康維持に良い影響をもたらす可能性がある。一方、金融目的の強い活動の場合は悪影響を与える可能性も示唆された。これは所属グループの規則への厳格な対応の必要性といったソーシャル・キャピタルの「負の側面」を反映している可能性がある。
キーワード:マイクロファイナンス、無尽溝、回転型貯蓄金融溝、ソーシャルキャピタル
P543-550

5)鳩山コホート研究:研究デザインとベースラインにおける研究参加者の特性

1村山洋史、1西真理子、1清水由美子、2金美芝、1吉田裕人、1天野秀紀、1藤原佳典、1新開省二

東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム1
東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム2

【背景】高齢期の虚弱の解明とその予防策の検討は、生活機能低下の進展を遅らせ、健康余命を延伸させるために重要である。しかし、虚弱に焦点を当てた疫学研究は未だ日本に存在しない。日本人地域在住高齢者の生活機能低下の予測因子を検討し、虚弱予防に向けた対策を確立するため、2010年に鳩山コホート研究を立ち上げた。本報では、鳩山コホート研究の研究デザインとベースライン時における研究参加者の特性について記述する。
【方法】鳩山コホート研究は、埼玉県鳩山町に在住する65歳以上の高齢者を対象にした前向き研究である。2010年9月、面接方式によるベースライン調査において、社会経済的状態、生理学的・身体的・心理的・認知的機能、ソーシャルキャピタル、近隣環境、そして虚弱指標を含む包括的情報が収集された。死亡、転出、介護保険認定、医療・介護給付費に関する情報をベースライン調査以降追跡している。また、ベースライン調査と同様の形式を用い、2年毎の追跡調査を実施することにしている。
【結果】ベースライン調査には742名が参加した(平均年齢71.9±5.2歳、男性57.7%、独居7.7%)。ほぼ全員が日常生活動作は自立しており、約10%が「介護予防チェックリスト」によって虚弱と判定された。
【結論】急速な高齢化が進む日本において、鳩山コホート研究は後期高齢期の虚弱予防、および健康余命の延伸に向けた対策の確立に寄与することが期待できる。
キーワード:コホート研究、地域在住高齢者、虚弱、生活機能低下、鳩山コホート研究
P551-558