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Journal of Epidemiology vol.22-(3)

1)ソーシャルキャピタルと健康:マルチレベル分析を用いた前向き研究の文献レビュー

村山洋史(東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム)、藤原佳典、Ichiro Kawachi

【背景】本研究は、ソーシャルキャピタルの概念について概観すること、ソーシャルキャピタルと健康との関連についてマルチレベル分析を用いた前向き研究をレビューすること、そしてソーシャルキャピタルを醸成するための介入手法について検討することを目的とした。
【方法】専門家による査読を受け出版された論文についてPubMedを用いて系統的に検索し、健康アウトカムによってそれらを分類した。
【結果】系統的検索の結果、13本の論文が該当した。研究デザイン、研究対象、追跡期間、健康アウトカムの種類に関わらず、個人レベルのソーシャルキャピタルと地域および職域レベルのソーシャルキャピタルは、全体として健康アウトカムに対して有益な効果を持つことを示唆する研究が多かった。これらのマルチレベル分析を用いた前向き研究は、主に欧米で行われたものであった。一方、アジア諸国では、マルチレベル分析を用いた横断研究は報告されているものの、前向きデザインによる研究は見られなかった。【結論】ソーシャルキャピタルが健康に及ぼす影響について、マルチレベル分析を用いた前向き研究によるエビデンスは現状では非常に限定的なものであった。これらの疫学的知見を実践で活用していくには、更なる知見の蓄積が必要であり、ヘルスプロモーションの手段としてのソーシャルキャピタルの醸成に向けた介入の実行可能性について検討する必要がある。
キーワード:健康、文献レビュー、マルチレベル分析、前向き研究、ソーシャルキャピタル
P179-187

2)疫学研究および循環器疾患予防におけるCT を用いた冠状動脈石灰化の評価

Akira Sekikawa (Department of Epidemiology, University of Pittsburgh)、 J. David Curb、 Daniel Edmundowicz、Tomonori Okamura、Jina Choo、Akira Fujiyoshi、Kamal Masaki、Katsuyuki Miura、Lewis H. Kuller、Chol Shin、Hirotsugu Ueshima

CTのよる冠状動脈石灰化の評価は、米国心臓病学会/米国心臓協会、ヨーロッパ心臓病学会のガイドラインにて、虚血性心疾患症状がなく従来の危険因子による発症予測では中間層に属する人々の中からリスクの高い者を選ぶスクリーニング手段として推奨されている。これは主として米国における冠状動脈石灰化に関する疫学研究のエヴィデンスに基づいている。ここでは、第一に、米国において虚血性心疾患一次予防における冠状動脈石灰化の現状、第二に、虚血性心疾患症状のない者を対象とした米国以外での疫学研究、第三に、冠状動脈石灰化を用いた国際共同疫学研究をレヴューする。本レビューでは、虚血性心疾患患者や虚血性心疾患症状を有する者での冠状動脈石灰化を用いた臨床研究は対象としない。第一点について、冠状動脈石灰化は虚血性心疾患発症を、従来の危険因子と独立して有意に予測する因子であることが、男性、女性、中年者、高齢者、米国内四人種、糖尿病、非糖尿病の者にて報告されており、また従来の危険因子による発症予測では中間層に属する人々の中からリスクの高い者を選ぶスクリーニング手段として用い始められている。第二点について、ヨーロッパの疫学研究でもアメリカと同様の結果が報告されている。第三点について、ERA JUMP Study (The Electron-Beam Tomography, Risk Factors Assessment Among Japanese and US Men in the Post-World-War II birth cohort Study) はCTのよる冠状動脈石灰化および他の潜在性動脈硬化を用いた最初の国際共同循環器疫学研究であり、日本人、日系米人、韓国人、白人を対象としている。ERA JUMP Study では、日本人は白人に比べて、冠状動脈石灰化等の動脈硬化の程度が軽度であること、一方、日系米人は白人と比較して動脈硬化の程度が同等かもしきくは重度であることを報告した。CTのよる冠状動脈石灰化の評価は、スクリーニング手段として有用であるばかりでなく、集団間の動脈硬化の違いを評価し、違いを規定する因子から予防因子を探索していく疫学研究手段としても有用である。
P188-198

3)日本における傷病の除去による障害なし平均余命の延び

橋本修二(藤田保健衛生大学医学部衛生学講座)、川戸美由紀、山田宏哉、世古留美、村上義孝、林正幸、加藤昌弘、野田龍也、尾島俊之、永井雅人、辻一郎

【背景】日本において、障害なし平均余命が算定されているが、傷病の除去による延びは検討されていない。
【方法】2007年の日本において、保健統計を用いて、6つの傷病の除去による活動制限ありとなしの平均余命を算定した。
【結果】0歳における活動制限なしとありの平均余命は男性でそれぞれ70.8年と8.4年、女性で74.2年と11.8年であった。悪性新生物と脳血管疾患の除去により活動制限なしの平均余命は1年以上延びたが、他の傷病の除去による延びはそれより小さかった。脳血管疾患、認知症と骨折の除去により日常生活動作の制限あり平均余命が短縮し、肩こり・腰痛症の除去により日常生活動作以外の活動の制限あり平均余命が短縮した。
【結論】傷病の除去による活動制限ありとなしの平均余命の延びを示した。脳血管疾患や認知症などに対する予防の進展が障害なし平均余命の延びと重度の障害あり平均余命の短縮につながることが示唆された。
キーワード:障害なし平均余命、健康余命、平均余命、日常生活動作、保健統計
P199-204

4)日本における川崎病の疫学像:2009-2010年の全国調査結果

中村好一(自治医科大学公衆衛生学教室)、屋代真弓、上原里程、定金敦子、坪井聡、青山泰子、小谷和彦、Enkh-Oyun Tsogzolbaatar、柳川洋

【背景】日本では川崎病患者数及び罹患率が上昇しているが、最も新しい川崎病の疫学像は不明である。
【方法】第21回川崎病全国調査は2009年と2010年に治療された患者を対象に2011年に実施された。小児病院と100床以上の病床を有して小児科を標榜する病院を対象として、2年間の患者すべての報告を求めた。
【結果】1445病院から23,730人(2009年:10,975人、2010年:12,755人)が報告された。このうち男が13,515人、女が10,215人であった。0~4歳人口10万対年間罹患率は206.2(2008年)および239.6(2010年)で、2010年の罹患率は日本で報告されたものの中では最高であった。月別患者数は冬~春の季節で多く、夏期には少なかった。しかし、2009年、2010年の季節パターンはそれ以前の年と少し異なっていた。年齢別罹患率は9~11か月をピークとする一峰性の分布であった。急性期の心障害及び心後遺症の割合は乳児期と年長児群で高かった。これらの割合は減少したが、川崎病の最も重篤な後遺症である巨大冠動脈瘤を併発する患者の割合はそれほど低下していなかった。
【結論】日本における川崎病の患者数と罹患率は上昇し続けている。
キーワード:川崎病、罹患率、心血管病、免疫グロブリン静注療法、疫学
P216-221

5)日本人一般高齢者における機能障害の頻度とその原因:久山町研究

吉田大悟(九州大学大学院医学研究院環境医学)、二宮利治、土井康文、秦淳、福原正代、池田文恵、向井直子、清原裕

日本において地域一般高齢者における機能障害の頻度とその原因について報告された研究は少ない。そのため我々は、65歳以上の日本人一般高齢者1550名を対象に、Barthel Index 95点以下で定義した機能障害の頻度とその原因について横断研究を実施した。対象者のうち311名が機能障害を有しており、その頻度は20.1%であった。機能障害の頻度は、年齢階級が上がるとともに直線的に増加し、男性と比較して女性で高く、特に85歳以上の女性で頻度が高かった。機能障害の原因疾患の内訳は、男性では認知症23.5%、脳卒中24.7%、整形外科的疾患12.9%、その他の疾患38.9%であり、女性では認知症35.8%、脳卒中9.3%、整形外科的疾患31.0%、その他の疾患23.9%であった。年齢別に機能障害の原因疾患について検討すると、75歳以上では認知症が最も多く、65-74歳では脳卒中が最も多かった。また寝たきりの人の原因疾患の約3分の2は男女とも認知症であったのに対し、軽度から重度の機能障害者の主な原因疾患は、男性では脳卒中、女性では整形外科的疾患であった。寝たきりの人の94.8%は入院や保健施設に入所していた。結論として、日本人高齢者における機能障害は一般的にみられ、その主な原因疾患は男性では脳卒中、女性では認知症であった。 キーワード:機能障害、認知症、脳卒中、頻度、日本人高齢者
P222-229

6)日本における介護保険データに基づく平均要介護期間の推移

世古留美(藤田保健衛生大学医療科学部看護学科)、橋本修二、川戸美由紀、村上義孝、林正幸、加藤昌弘、野田龍也、尾島俊之、永井雅人、辻一郎

【背景】介護保険データに基づく平均要介護期間について、提案された方法により算定し、最近の日本の年次推移を年齢と都道府県別に検討した。
【方法】介護保険制度による要介護の情報を用いて、2005~2009年の平均要介護期間を年齢と都道府県別に算定した。
【結果】2005~2009年における65歳の平均要介護期間は、男性では1.43年から1.62年へ、女性では2.99年から3.44年へと延長した。平均余命に占める平均要介護期間の割合は男性では7.9%から8.6%へ、女性では12.9%から14.4%へと上昇した。平均要介護期間は65~69歳と70~74歳では変化がなかったが、85歳以上では著しく延長した。同期間で、平均要介護期間はいずれの都道府県でも延長した。その都道府県分布の25%点と75%点の差は、2005年では男性で0.16年と女性で0.35年であり、2005~2009年でほぼ一定であった。
【結論】日本の平均要介護期間は2005~2009年に延長しており、都道府県間差が大きかった。介護保険制度による要介護のカバー率に関して、さらに研究する必要がある。
キーワード:障害なし平均余命、平均余命、要介護、保健統計
P238-243