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Journal of Epidemiology vol.21-(6)

1)日本人女性における成人期の体重増加・20歳時の体重と子宮内膜癌リスクとの関連

細野覚代(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部)、松尾恵太郎、広瀬かおる、伊藤秀美、鈴木勇史、川瀬孝和、渡邉美貴、中西透、田島和雄、田中英夫

【背景】日本人女性における成人期の体重増加・20歳時の体重と子宮内膜癌リスクとの関連を調べるため症例対照研究を行った。 【方法】対象者は子宮内膜癌222症例と年齢・月経状態を調整した非がん女性2162例である。自記式生活習慣質問票を使って現在の身長と体重、20歳時の体重を調べた。対象者を20歳から研究参加時までのbody mass index (BMI)の変化によって3グループ(≦0 [reference]、0-3、and >3 kg/m2)に分け、ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】20歳時のBMIが25以上の場合オッズ比 (OR)は2.30 [95%信頼区間 (95% CI)=1.29-4.11]だった。成人期のBMIの増加は子宮内膜癌リスクと有意な正の関連が認められた (BMI0-3の増加でOR=1.28、95% CI=0.15-0.65;BMI>3の増加でOR=2.02、95% CI=1.38-2.96;傾向P<0.001)。分娩の有無や20歳時のBMI等による層別化解析では有意な交互作用を認めなかった。また類内膜腺癌でのみ正の関連が示された。
【結語】日本人女性において成人期の体重増加・20歳時の体重と子宮内膜癌リスクとの正の関連が示された。子宮内膜癌予防には若年期からの体重管理が必要であろう。
キーワード:子宮内膜癌、体重増加、日本人
P466-473

2)日本人高齢者における認知された自宅近隣環境と目的別歩行との関連

井上茂(東京医科大学公衆衛生学講座)、大谷由美子、小田切優子、高宮朋子、鎌田真光、岡田真平、岡浩一朗、北畠義典、中谷友樹、James F Sallis、下光輝一

【背景】近年、身体活動の決定要因の一つとして、自宅近隣の環境要因の重要性が明らかになってきている。しかし、高齢者に関する研究は限られている。本研究では日本の高齢者における認知された自宅近隣環境と目的別歩行との関連を検討した。
【方法】本研究はポピュレーションベースの横断研究で、1921人の高齢者(65‐74歳、男性51.9%)を対象とした。自宅近隣の環境(国際標準化身体活動質問紙環境尺度)と目的別歩行時間(すなわち、移動歩行時間と余暇歩行時間)は質問紙によって評価した。個人をレベル1、居住地(近隣)をレベル2としたマルチレベルロジスティック回帰分析によって、交絡要因を制御した上で、環境と歩行との関連を検討した。
【結果】運動施設へのアクセス、社会的環境、景観が全近隣歩行時間と関連していた。オッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ、1.23(1.00-1.51)、1.39(1.14-1.71)、1.48(1.21-1.81)であった。目的別歩行の検討では、社会的環境と景観が、移動歩行、余暇歩行の両方と一貫して関連している要因であった。関連する環境要因の種類は、歩行の目的、性別によって異なっていた。移動歩行はより多様な環境要因との関連が認められた。また、性差は特に、移動歩行において明らかで、男性では自転車レーン、治安、交通安全、景観、自家用車の所有が関連していたのに対して、女性では商店へのアクセス、運動施設へのアクセス、社会的環境が重要だった。
【結論】高齢者における環境と歩行との関連は歩行の目的、性別によって異なっていた。社会的環境と景観は移動歩行にも余暇歩行にも共通して関連する要因だった。環境要因の改善が高齢者の身体活動推進に効果的である可能性が示唆された。
P481-490

3)C型肝炎コア抗原陽性は、透析患者の総死亡、心血管死亡、肝臓疾患死亡リスクを上げる

著者:大澤正樹(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)、加藤香廉、丹野高三、板井一好、藤島洋介、岡山明、Tanvir Chowdhury Turin、小野田敏行、鈴木一幸、中村元行、川村和子、秋葉隆、坂田清美、藤岡知昭

【背景】C型肝炎(HCV)抗体陽性は透析患者の死亡リスクを上げること示されている。しかし、HCV慢性感染と感染既往とで層別化して透析患者の予後を検討した研究はみられない。さらにHCV感染が肝臓疾患以外の死因リスクを上げているのかを検証した報告はない。
【方法】我々は平成15年当時岩手県に在住していたB型肝炎抗原が陰性であった成人血液透析患者1077人を対象に、3群(HCV抗体陰性:非感染者(n=968);HCV抗体陽性かつコア抗原陰性:感染既往者(n=39);HCVコア抗原陽性:慢性感染者(n=70))に分けて前向きに5年間観察した。
【結果】ポワソン回帰分析による各群の性・年齢調整死亡率は、非感染群で 71.9 、感染既往群で 80.4 、慢性感染群で156(/1000人年)であった。非感染群を基準とした死亡相対危険を ポワソン回帰分析による多変量調整死亡率比(95%信頼区間)としてそれぞれ感染既往群対慢性感染群で求めると、総死亡では 1.23 (0.72 to 2.12) 対 1.60 (1.13 to 2.28) 、心血管死亡では 0.75 (0.28 to 2.02) 対1.64 (0.98 to 2.73) 、感染症死亡で慢性感染は透析患者の総死亡、心血管死亡、肝臓疾患死亡リスクを有意に上げていた。
【結論】HCV慢性感染が透析患者の総死亡リスクと死因別死亡リスクを上げているのであり、感染既往は死亡リスク上昇に寄与しているとはいえない。
キーワード:慢性C型肝炎。透析患者。死亡リスク。地域ベースの疫学研究。縦断解析。
P491-499

4)日本の過去30年間における多胎出生の増加に対する母親年齢と不妊治療の影響:1974-2009年の人口動態統計を用いて

大木秀一(石川県立看護大学健康科学講座)

【背景】この研究では、日本の1974年から2009年の人口動態統計を用いて、母親年齢と不妊治療が多胎出生の数と割合に与える影響を推定した。
【方法】厚生労働省が公表している1974年から2009年までの人口動態統計を収集し、母親年齢階級別・単産複産別の出生数を再分析した。1977年から2009年までの自然多胎出生数と医原性多胎出生数を推定するために、母親年齢階級別自然多胎出生の割合が一定であり、基準値(1974年から1976年の加重平均)に等しいと仮定した。
【結果】過去25年間のうち1980年代後半から母親の年齢階級別多胎出生割合は増加した。この傾向は、35歳から39歳の女性で顕著であった。推定された医原性多胎出生数は20~24歳でほぼ一定であり、30~34歳、35~39歳で大幅に増加していた。出生1,000対の医原性多胎出生率(割合)は、1977年(0.7)から1986年(1.3)にかけて徐々に増加し、その後1986年(1.3)から2005年(11.4)にかけて、急速かつ顕著に増加し、その後2009年(8.1)にかけて減少した。推定された医原性多胎出生の割合は2004年と2005年が最大であり、全多胎出生の50.0%であった。
【結論】日本における30歳以上女性での多胎出生数と多胎出生割合の急増は、自然の多胎出生と言うよりもむしろ医原性の多胎出生であろう。
キーワード:多胎出生率、自然多胎出生、医原性多胎出生、母親年齢、不妊治療
P507-511