文字サイズ
  • 文字サイズを中にする
  • 文字サイズを大にする
  • 日本語
  • ENGLISH

Journal of Epidemiology vol.21-(3)

1)柑橘類摂取頻度は心血管疾患発症と関連している:JMSコホート研究

山田友世(浜松医科大学健康社会医学)、早坂信哉、柴田陽介、尾島俊之、三枝智宏、後藤忠雄、石川鎮清、中村好一、萱場一則

果物摂取による心血管疾患への予防効果が示唆されているが、日本での研究は多くない。日本における心血管疾患の発症と柑橘類摂取の関連を検討した。身体計測、採血検査、質問票によりベースラインデータを収集した。柑橘類摂取頻度は、5段階のカテゴリーから回答を得た。心血管疾患または癌の既往例、柑橘類摂取頻度無記載例を除いた10 623名に対し、Coxの比例ハザードモデルを用い、柑橘類摂取頻度と心血管疾患発症の関連性を検討した。柑橘類をほとんど摂取しない群に対して、ほぼ毎日摂取する群では、心血管疾患発症のハザード比は男性で0.57(95%信頼区間0.33-1.01、P=0.04)、女性で0.51(0.29-0.88、P=0.02)だった。心血管疾患のサブ解析として、脳卒中(脳梗塞と脳出血)、心筋梗塞についても検討した。脳卒中は、男女共に柑橘類摂取による発症予防効果を認めたが、脳梗塞減少によるものであり、脳出血発症の抑制効果は認めなかった。心筋梗塞の発症と柑橘類摂取頻度の関連性は認めなかった。
キーワード:柑橘、心血管疾患、脳梗塞、コホート研究、日本
P169-175

2)高齢者の膝痛と将来の自立 日本における3年間の地域在住者コホート研究のエビデンスより

西脇祐司(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)、道川武紘、山田睦子、衛藤憲人、武林亨、倉渕研究グループ

【背景】膝痛は高齢者でよくみられ、移動制限の原因となり得るが、膝痛が高齢者の自立に及ぼす影響については、日本のとくに地域保健の現場では、あまり調査されてこなかった。3年間のコホート研究である本研究の目的は、地域在住の日本人高齢者における膝痛と日常生活動作(ADL)や死亡との関連を調べることである。
【方法】膝痛の有無は2005年に訪問調査により、1391名の65歳以上高齢者を対象に評価された。ベースライン時にADLが独立していた計1265名が3年間追跡され、アウトカム、すなわち死亡とADL依存の情報が収集された。
【結果】いつも膝痛ありの者は、膝痛なしと報告した者に比べてADL依存になり易かった(多変量調整オッズ比1.98、95%信頼区間1.03?3.83)、しかし、死亡単独やADL依存と死亡からなる複合アウトカムとは関連していなかった。ADL依存の各構成因子に関するさらなる解析では、膝痛は自宅での要援助(要介護、入浴、身支度、ベッド移乗)と関連していたが、施設への入所とは関連がなかった。結論:研究参加者は目的集団の代表性が高く、追跡率もほぼ完全(99.4%)であった。結果は、膝痛が将来のADL依存、とくに自宅での要援助と関連することを示唆した。
キーワード:関節疾患、日常生活動作、死亡、コホート研究、高齢者 P184-190

3)日本人におけるパーキンソン病による併存疾病・死亡負荷の推計について

土井由利子(国立保健医療科学院研修企画部)、横山徹爾、中村好一、永井正規、藤本健一、中野今治

【背景】医療の進歩によりパーキンソン病患者の長期生存が可能となった。しかし、日本人におけるパーキンソン病の併存疾病および死亡による負荷については、ほとんど何も知られていない。本研究では、本邦初の試みとして、1)パーキンソン病による死亡における併存疾病に関する頻度分析、2)原死因および多死因による2つの死亡統計データを用いたパーキンソン病の死亡率の推定を行った。
【方法】2008年の人口動態死亡統計における原死因がパーキンソン病(ICD-10コード:G20)による死亡4589件から477件を無作為に抽出し、それらの死亡診断書に記載のあった併存疾患ついて頻度分析を行った。日本の死亡統計は原死因に基づくもので多死因に基づく死亡統計データが無いので、それに代わるものとして米国の多死因に基づく死亡統計データを用い、両国の疾病構造の差異を調整した上で、2つの死亡統計を基に日本におけるパーキンソン病の死亡率(対人口10万)を算出した。
【結果】パーキンソン病の平均死亡時年齢は80.9歳で、日本人の平均余命とほぼ同じであった。死亡診断書に記載のあった頻度の高い上位5つの併存疾病は、脳血管疾患(4.0%)、認知症(3.8%)、糖尿病(3.6%)、がん(2.5%)、心疾患(2.3%)であった。パーキンソン病が原死因の死亡率は3.6、多死因の死亡率は5.8であった。
【結論】原死因に基づく死亡統計だけでは、パーキンソン病の併存疾病を把握できず、死亡による負荷を過小評価してしまうことが明らかとなった。死亡診断書や多死因に基づく死亡統計データを用い、現行の原死因に基づく死亡統計データを補完して、より真に近い推計を行うことが必要である。
P211-216

4)遺伝子型と生活習慣・臨床要因との関連に関する横断研究ー参加者の特性と108多型の遺伝子型分布:日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)におけるプロジェクト

若井建志(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学教室)、浜島信之、岡田理恵子、内藤真理子、森田えみ、菱田朝陽、川合紗世、西尾和子、銀光、浅井八多美、松尾恵太郎、細野覚代、伊藤秀美、渡邉美貴、川瀬孝和、鈴木勇史、田島和雄、田中恵太郎、桧垣靖樹、原めぐみ、今泉 猛、田口尚人、中村和代、南里妃名子、坂本龍彦、堀田美加子、新地浩一、喜多義邦、Tanvir Chowdhury Turin、Nahid Rumana、松井健志、三浦克之、上島弘嗣、高嶋直敬、中村保幸、鈴木貞夫、安藤亮介、細野晃弘、今枝奈保美、柴田清、後藤千穂、服部奈美、深津満、山田珠樹、徳留信寛、嶽崎俊郎、新村英士、平佐田和代、中村昭彦、立棒雅也、小川 信、常松典子、千葉 調、三上春夫、古野純典、大中佳三、高柳涼一、渡邊能行、尾崎悦子、繁田正子、栗山長門、吉川綾、松井大輔、渡邉 功、井上 郁、小笹晃太郎、三谷智子、有澤孝吉、上村浩一、日吉峰麗、高見栄喜、山口美輪、中本真理子、武田英雄、久保充明、田中英夫

【背景】多くの疾患が、環境要因と宿主遺伝子型との交互作用から生じると考えられている。生活習慣病、とりわけがんの発生における遺伝子環境交互作用を見出すため、2005年に日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)が開始された。
【方法】われわれは遺伝子型と、調査票や健診で評価された生活習慣・臨床要因との関連を検討する横断研究を開始した。日本の10地区における、J-MICC Study参加者から4,519名を対象に選び、108の遺伝子多型について、インベーダー法により遺伝子型を決定した。
【結果】分析対象者は男性2,124名、女性2,395名で、ベースライン調査時の平均年齢±SDは55.8±8.9歳(範囲 35~69歳)であった。検討した108遺伝子多型のうち、4つについては研究対象集団では多型が存在しなかった。残りの104遺伝子多型の多くでは、多型がある程度の頻度で認められた(96遺伝子多型でマイナーアリルの頻度が5%以上)。また本集団でのアリル頻度は、HapMap-JPTデータの45人の東京在住日本人における頻度と類似しており、10%を超えるアリル頻度の差を示したのは、88遺伝子多型中5つのみであった。108遺伝子多型中32の多型が、調査地区間で高度に有意なマイナーアリル頻度の差を示した(P < 0.001)。
【結論】今回の生活習慣・臨床要因についての総合的な集積データは、遺伝子環境交互作用を解明するために有用であろう。さらに、大規模な日本人集団の遺伝子型データの自由な利用は容易ではないことから、情報量の多い参照資料にもなると思われる。
キーワード:アリル頻度、横断的研究、遺伝子環境交互作用、日本多施設共同コーホート研究、遺伝子多型
P223-235