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Journal of Epidemiology vol.21-(1)

1)日本におけるインフルエンザの発生率データの時系列解析

鷲見紋子(札幌医科大学医学部衛生学講座)、加茂憲一、大友詔雄、三瀬敬治、小林宣道

【背景】インフルエンザの流行を予測するために、これまでに、流行のメカニズムを説明するための多くの研究が行われてきた。インフルエンザの流行には、1年サイクルに加えて、より長い周期(interepidemic period)が観測される。感染症のinterepidemic periodは、その流行予測のために、疫学において注目されてきた。しかし、インフルエンザのinterepidemic periodを詳細に調べた研究は少ない。そこで本研究では、日本におけるインフルエンザのinterepidemic periodを同定するために、インフルエンザの発生率データのスペクトル解析を実行した。
【方法】日本におけるインフルエンザの月毎発生率の時系列データ(1948年1月~1998年12月)を用いた。本研究では、この発生率データの周期構造を調べるために、最大エントロピー(MEM)法に基づいたスペクトル解析を実行した。このMEMスペクトル解析法は、本研究で用いた発生率データのような、データ点数の少ない時系列の周期構造を調べるために非常に有用である。発生率データの周期構造をより詳細に調べるために、セグメント時系列解析を実行し、3次元スペクトルアレイを得た。
【結果】MEMスペクトル解析の結果に基づいて、発生率データのinterepidemic periodとして、3つの周期モードを同定した。セグメント解析の結果から、interepidemic periodのパワー値が、インフルエンザのパンデミックの発生とともに増加し、ワクチンプログラムの導入とともに減少したことが明らかとなった。
【結論】本研究の結果から、インフルエンザの流行のinterepidemic periodが時々刻々と変化すること、そしてその変化は交差免疫反応の強さと関連していることが示唆された。
キーワード:時系列解析、インフルエンザ、サーベイランス
P21-29

2)妊娠中喫煙の周産期合併症への影響:周産期登録データベースにおけるケース・コホート研究

林邦彦(群馬大学医学部保健学科医療基礎学)、松田義雄、川道弥生、塩﨑有宏、齋藤滋

【背景】 妊娠中喫煙による妊婦の健康への影響は、多くの場合、疾患ごとに検討されてきた。本研究の目的は、大規模データベースを利用して、多種の周産期主要疾患への影響を同時に評価すること、また、このような分析でのケース・コホート研究デザインの有用性を検討することである。
【方法】 日本産科婦人科学会周産期委員会の周産期登録データベースをもちいて、ケース・コホート研究を行った。当データベースは、日本全国の125医療機関の全出産について周産期情報を登録するものである。本研究では、2001~20005年に周産期登録データベースに登録され、妊娠中喫煙および各種合併症の情報がそろった単胎妊娠180 855件を、基盤コホートとした。また、11種類の周産期合併症の発生を結果事象項目とした。ロジスティック回帰モデルで、年齢調整リスク比(aRR)と相対過剰発生割合(REI)を推定した。
【結果】基盤コホート全体における妊娠中喫煙者の割合は5.8%であり、若年層の妊婦でより高かった。各合併症の発症例をケース、基盤コホート全体から無作為抽出したサブコホートをコントロールとして分析した結果、喫煙者で統計学的に有意なリスク増加がみられた疾患は、37週未満前期破水(aRR: 1.67, 95%信頼区間[CI]: 1.43-1.96; REI: 40.2%, 95% CI: 29.9%-49.1%)、絨毛膜羊膜炎(1.65, 1.36-2.00; 39.4%, 26.4%-50.0%)、頚管無力症(1.63, 1.35-1.96; 38.5%, 25.8%-49.1%)、37週未満切迫早産(1.38, 1.17-1.64; 27.7%, 14.5%-38.9%)、常位胎盤早期剥離(1.37, 1.10-1.72; 27.1%, 8.8%-41.7%)、妊娠高血圧症候群 (1.20, 1.01-1.41; 16.4%, 1.2%-29.3%)の6疾患であった。
【結論】 妊娠中喫煙は、多種類の周産期合併症の発症に関連があった。このことは、妊娠中の禁煙の重要性を示している。また、大規模データベースを利用した多重項目のリスク比推定において、ケース・コントロール研究は有用な研究デザインであった。
キーワード: 妊娠中喫煙、周産期合併症、周産期疫学、ケース・コホート研究、登録データベース
P61-66

3)低コレステロールは脳卒中、心不全、ガンによる死亡と関連している:自治医大コホート研究

名郷直樹(東京北社会保険病院臨床研修センター)、石川、後藤、萱場

われわれは血清総コレステロールと死亡原因の関係を、日本の12の農山村地域の40歳から69歳の住民健診受診者12334人を対象とした前向きコホート研究で検討した。血清総コレステロールは酵素法によって測定した。アウトカムは性別の総死亡と死因別死亡である。死亡に関する情報は死亡診断書から得た。平均の追跡期間は11.9年であった。結果は、総コレステロール4.14-5.17mmol/Lの群を基準とした年齢調整の解析で、4.14 mmol/L未満の群の死亡に対するハザード比が、男性では1.49 (95%信頼区間: 1.23-1.79)、女性では1.50(1.10-2.04)と上昇していた。高コレステロールと死亡の関連は認められなかった。低コレステロールと死亡の関係は肝疾患による死亡を除いた解析でも同様で、ハザード比は男性、女性でそれぞれ1.38 (1.13-1.67) 1.49 (1.09-2.04)であった。脳出血、心不全(心筋梗塞を除く)、悪性腫瘍による死亡に対するハザード比は、低コレステロール群で有意に上昇していた。低コレステロールは肝疾患の影響を除いても死亡と関連し、高コレステロールは死亡のリスクではないという結果であった。
キーワード 低コレステロール、死亡率、肝疾患、脳卒中、心疾患、コホート研究
P67-74