Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.20-1

BMIと肥満度を用いた日本人小児の肥満関連リスク・スクリーニング

奥田昌之(山口大学大学院理工学研究科)、杉山真一、國次一郎、日野田祐治、奥田裕美、調恒明、吉武記一、芳原達也

【背景】小児肥満のスクリーニングでは、肥満度を用いたカットオフ値が日本では用いられているが、海外ではbody mass index (BMI)を用いることが多い。日本の小・中学生の肥満関連リスクをスクリーニングするために、まず空腹時検査値と食後検査値を比較し、肥満度とBMIの受信者動作特性曲線(ROC)を比較した。
【方法】対象は、2006年から2008年の山口県周南市の10歳と13歳であった(6566人)。一般的なPOWのカットオフ値とInternational Obesity Taskforce (IOTF)のBMIカットオフ値を用いた。それぞれの低いカットオフ値(それぞれ20%と18歳時25 kg/m2相当)と高いカットオフ値(それぞれ50%と18歳時30 kg/m2相当)を検討し、ROC曲線を描いた。
【結果】空腹時血清コレステロール値は、食後測定値よりも高かった。過体重・肥満の割合は、低いカットオフ値で6.6%から10.0%であり、高いカットオフ値で0.6%から5.0%であった。空腹時測定者では、過体重者の12%から52%に血清脂質異常、29%から54%に高中性脂肪、11%から21%に高血糖、15%から40%に高血圧があった。POWの低いカットオフ値も高いカットオフ値も、BMIのそれに比べて低い感度と高い特異度であったが、POWのROC曲線はBMIのものとほとんど重なっていた。ただし10歳女児では、リスク要因が3つ以上をスクリーニングする場合、POWのROC曲線下面積は、BMIのそれよりも小さくなっていた(P = 0.013)。【結論】日本人の小児で、BMIもPOWと同様肥満関連リスクのスクリーニングに有用である。食後血清を用いた生化学検査では誤分類を起こす可能性があることに注意が必要である。
キーワード:body mass index、日本人、リスク要因、肥満度、ROC曲線
P46~53

公立および法人立の施設に入所している重症心身障害児(者)の生命予後(1961-2003)

花岡知之(美幌療育病院)、三田勝己、平元東、鈴木康之、丸山靜夫、中館俊夫、岸玲子、岡田喜篤、江草安彦

【背景】重症心身障害児(者)の生命予後はその家族と介護者にとって深刻な問題であるが生存率に関する報告はほとんどない。日本重症児福祉協会は加入する全ての公立および法人立の重症心身障害児(者)施設から登録および死亡に関する匿名データを毎年収集している。本研究ではこのデータを利用して生命予後を評価した。
【方法】対象者は1961年から2003年の間にわが国の119の公立および法人立の施設に入所した大島分類1-4の重症心身障害児(者)で誕生日が1961年以降の者3221名。生存率はカプラン・マイヤー法により障害程度別、出生時期別に計算した。
【結果】3221名のうち生存は2645名、死亡は576名であった。20歳の生存率は79%(95%信頼区間78-81%)であった。座位不能者のなかではIQが低い群で生存率が低かった。
【結論】公立および法人立の施設に入所した重症心身障害児(者)の生命予後は一般人口に比べると明らかに悪く、1960年代から最近まで改善はみられていない。
キーワード:生命予後、重症心身障害、生存分析
P77~81

 
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