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Journal of Epidemiology vol.19-(2)

1)血中アディポネクチン値と心筋梗塞発症について:JMSコホート研究

畑野悠(自治医科大学医学部6年生)、松本正俊、石川鎮清、梶井英治

アディポネクチンはいくつかの心血管リスク因子と関連していることが知られており、虚血性心疾患の発症にも関連することが予想されている。しかしながら過去に行われた前向き研究の結果からは結論が得られていない。そこで今回我々は12490名の地域住民を追跡したJMSコホートにネストした症例対照研究を行った。対象者は血液検体を1992年から1995年までに採取されたもののうち2007年時点で凍結保存されていた5243名とした。平均9.4年の追跡期間のうちに38名の心筋梗塞発症例と、それに年齢、性別、地区でマッチさせた89名の対照例を得た。血中アディポネクチン値は症例群と対照群で差がなかった(幾何平均値7.6 vs 7.4 mg/L, p=0.57)。アディポネクチン値によって対象者を3群に分けたとき、値が最も低い群は最も高い群に比べて心筋梗塞発症のリスクは上昇しなかった(年齢性別調整オッズ比 1.33; 95%信頼区間 0.50-3.55, 心血管リスク因子調整オッズ比 1.68; 0.45-6.25)。同様に対象者を4群に分けたときも、最もアディポネクチン値が低い群は最も高い群に比べて発症リスクは上昇しなかった。本研究の結果から、血中アディポネクチン値と心筋梗塞発症との関連は支持されなかった。
キーワード:アディポネクチン、心筋梗塞、動脈硬化、前向き研究、日本
P49~55

2)わが国の地域住民における単純ヘルペスウイルス1型および2型の血清陽性率

土井康文(九州大学大学院病態機能内科学・環境医学教室)、二宮利治、秦 淳、米本孝治、谷崎弓裕、劉 穎、ラーマン・マブバー、飯田三雄、清原 裕

【背景】わが国では、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の血清陽性率、および両者の感染の相互関係に関する地域疫学研究は稀である。
【方法】日本南部の地域住民より抽出した18-59歳の成人1,244人を対象に、糖蛋白G1とG2に対するHSV-1およびHSV-2それぞれに特異的な抗原を含むELISAキットを使ってその血清陽性率を測定した。
【結果】男性では、HSV-1の陽性率は55.4%、HSV-2の陽性率は7.4%で、女性ではそれぞれ66.3%、9.3%であった。全集団の4.0%(男性2.3%、女性5.0%)がHSV-1とHSV-2の両方に感染していた。HSV-1とHSV-2の血清陽性率は、男女ともに加齢とともに増加し、いずれの年齢層でも男性に比べ女性で高かった。またHSV-1の血清陽性者では、陰性者に比べ、HSV-2の血清陽性率が男女ともに有意に低かった。さらに男性の飲酒者と男女の喫煙者では、それぞれの非飲酒者および非喫煙者に比べHSV-1とHSV-2の血清陽性率がともに有意に高かった。
【結論】本研究結果は、わが国におけるHSV感染の疾病負荷を理解する事に寄与すると期待される。
キーワード: 単純ヘルペスウイルスの1型と2型、血清陽性率、危険因子、日本
P56~62

3)へき地住民における心筋梗塞発症のリスクチャート:JMSコホート研究

松本正俊(自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門)、石川鎮清、萱場一則、後藤 忠雄、名郷直樹、堤明純、梶井英治、JMSコホート研究グループ

個人における心筋梗塞の絶対危険度を各リスク変数の組み合わせによって示すリスクチャートは心筋梗塞の一次予防にとって有用な道具となる。今までに北米やヨーロッパのコホート研究の結果を基にしたリスクチャートが作成されてきたが、日本における心筋梗塞発症のリスクチャートは存在していない。今回我々は10年間での心筋梗塞発症の絶対危険度を簡便に知ることができるリスクチャートを、JMSコホート研究の結果を基に作成した。JMSコホート研究では日本のへき地12地域に住む12490名の住民を平均10.9年間追跡し、92名の心筋梗塞発症例を捕捉した。このコホートデータを用いて、心血管リスク因子の様々な組み合わせによって心筋梗塞発症の絶対危険度がどのような値をとるかを計算し、それらが色によって分かるリスクチャートを作成した。使用した心血管リスク因子は、年齢、性別、喫煙状況、糖尿病の有無、収縮期血圧、血清総コレステロール値である。このリスクチャートは地域、特にへき地における日常診療や住民教育において、心筋梗塞の危険度を煩雑な計算なしに知ることができる有用な道具となるであろう。
キーワード:心筋梗塞、血圧、コレステロール、喫煙、糖尿病、コホート研究
P94~100

4)田舎に住む日本人における脳卒中の10年間の発症のリスクチャート

石川鎮清(自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門)、松本正俊、萱場一則、後藤忠雄、名郷直樹、堤 明純、梶井英治

【背景】心血管疾患のリスクを推定するのにリスクチャートが使用される。しかし、その多くは欧米のものである。死亡率を基にしたリスクチャートは日本のものがある。JMSコホート研究の心血管疾患発症のデータを用いて、脳卒中のリスクチャートを作成した。
【方法と結果】JMSコホート研究は心血管疾患を対象とした地域ベースのコホート研究である。ベースラインデータは1992年から1995年に収集された。今回の解析では、脳卒中の既往のない12,276人を対象とし、10.7年間追跡した。Cox比例ハザードモデルを用いて性、年齢、喫煙、糖尿病、収縮期血圧と10年間の絶対リスクの関連についてカラーのリスクチャートを作成した。全脳卒中、脳梗塞は年齢、収縮期血圧とともに上昇していた。脳出血は全体的には脳梗塞よりリスクが低かったにもかかわらず、危険因子との関連は同様のパターンを示した。
【結論】これらのリスクチャートは個々人の脳卒中のリスクを推定する必要がある臨床医や他の健康関連職業従事者には有用であると思われる。
キーワード:脳卒中、血圧、喫煙、糖尿病、コホート研究
P101~106