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Journal of Epidemiology vol.18-(4)

1)市町村の人口規模別にみた19年間の追跡研究におけるベースラインの循環器疾患危険因子と脳卒中死亡率-NIPPON DATA80

西 信雄(放射線影響研究所広島研究所疫学部)
【背景】日本全国における循環器疾患危険因子と脳卒中死亡率の都市部と農村部の差を、階層的データ構造を有するコホートにおいて検討した。
【方法】1980年に日本の211市町村の294調査区に居住していた30歳以上の9,309人(男性4,080人、女性5,229人)を対象とし、1999年まで追跡した。調査区が含まれる市町村の人口規模をもとに都市部と農村部を分類した。個人(対象者)(レベル1)が調査区(レベル2)に含まれるという階層構造を考慮して、多重レベルモデルを適用した。
【結果】男性のbody mass index (BMI)、男女ともの血清総コレステロール、女性の飲酒について、市町村の人口規模が大(30万人以上)の調査区と比較して、中(3万人以上30万人未満)および小(3万人未満)の調査区において統計学的に有意な差がみられた。これらの循環器疾患危険因子の値あるいは頻度は、市町村の人口規模が大の調査区で有意に高かった。一方、市町村の人口規模が大の調査区に対する中と小の調査区における脳卒中死亡の年齢補正オッズ比は、それぞれ男性で 1.31 (95%信頼区間: 0.81-2.13)と1.40 (95%信頼区間: 0.87-2.24)、女性で1.32 (95%信頼区間: 0.79-2.20)と1.62 (95%信頼区間: 0.99-2.65)であった。年齢、BMI、総コレステロール、糖尿病、高血圧、喫煙、飲酒で多変量補正した結果は大きく変わらなかった。
【結論】日本の脳卒中死亡率は都市部より農村部で高い傾向にあり、これは女性で顕著であった。
P135~143

2)日本人における全脳卒中、脳卒中病型別、心筋梗塞の発症率:JMSコホート研究

石川鎮清(自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門)、萱場一則、後藤忠雄、名郷直樹、中村好一、梶井英治、およびJMSコホート研究グループ
【背景】欧米に比べて日本の方では脳卒中の発症率は高く、逆に心筋梗塞は低いと言われている。しかし、日本では脳卒中および心筋梗塞の発症率を検討した住民対象研究は少ない。
【方法】JMSコホート研究は日本における12地区の多施設共同研究である。ベースラインデータは1992年4月から1995年7月まで収集した。対象者は男性4,869人、女性7,519人で平均年齢はそれぞれ55.2歳と55.3歳であった。脳卒中、病型別および心筋梗塞の発症率について検討した。
【結果】平均追跡期間は10.7年で、男性で脳卒中229例、心筋梗塞64例、女性で脳卒中221例、心筋梗塞28例発症した。年齢調整した発症率は男女それぞれで脳卒中が100,000人年あたり332と221で、心筋梗塞が84と31であった。男女とも脳卒中および心筋梗塞の発症率は>70歳で最も多かった。
【結論】今回の論文では、日本での脳卒中および心筋梗塞の発症率を報告した。脳卒中の発症率は依然として高く、また、心筋梗塞は、女性に比べて男性で高かった。
キーワード:発症率、脳卒中、心筋梗塞、コホート研究、日本人
P144~150

3)日本人における食事からのマグネシウム摂取量と血清マグネシウム濃度との関係

秋澤より子(千代田保健所)、小泉貞之、糸川嘉則、尾島俊之、中村好一、田村太朗、日下幸則
【背景】日常の食事から日本人成人の摂取ビタミンとミネラルは不足しているとは未だ分かっていない。この疑問より、我々は人口規模の調査より摂取マグネシウム量と血清マグネシウム濃度の関係をみることにした。
【方法】対象は1998年福井県国民栄養調査の62人。この調査は身体状況調査、栄養摂取状況調査および食生活状況調査からなっていた。調査日は、祝祭日、冠婚葬祭その他特別に変化のある日を避け、なるべく普段の食物摂取状況にある1日を選んだ。 【結果】男の1日の摂取マグネシウム量の平均値は322±132mg/day。女は323±163mg/day、全体は322±147mg/day。男の血清マグネシウム濃度の平均は20.69±2.83 ppm、女は20.69±2.88 ppm、全体は20.69±2.83 ppm。血清マグネシウム濃度のヒストグラムは正規分布をしていた。摂取マグネシウム量のヒストグラムは正規分布とみなせなかった。血清マグネシウム濃度(ppm)をY軸にし、摂取マグネシウム量(mg/day)を対数表記したものをX軸としてY=4.93log10X+8.49 という回帰式が得られた。相関係数はr=0.29であった。
Y=4.93og10X+8.49という回帰式が得られた。血清マグネシウム濃度と摂取マグネシウム量の相関係数はr=0.29であった。相関係数の検定より5%の危険率で有意であった。また、摂取マグネシウム量(Y mg)をY軸にし、血清マグネシウム濃度(Xppm)をX軸とし、Y=14.56X+19.31という回帰式も得られた。相関係数はr=0.28であった。相関係数の検定より5%の危険率で有意であった。
【結論】日常の食事からの摂取マグネシウム量と血清マグネシウム濃度は相関関係にあり、回帰式より推定することができる。
キーワード:無作為抽出、国民栄養調査、摂取マグネシウム量、血清マグネシウム濃度、ICP発光分光分析装置 P151~159

4)日本におけるヒトのH5N2鳥インフルエンザ感染とH5N2中和抗体価高値に関連する因子

緒方剛(茨城県筑西保健所)、山崎良直、岡部信彦、中村好一、田代眞人、永田紀子、板村繁之、安井良則、中島一敏、土井幹雄、泉陽子、藤枝隆、大和慎一、川田諭一
         【背景】H5N2鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染はこれまで報告されたことはない。日本における最初の家禽のH5N2鳥インフルエンザの感染が茨城で発生した。
【方法】対象は茨城県のH5N2ウイルスまたは抗体が鶏から検出された35養鶏場の従事者であった。対象にはインフルエンザの症状を示したものはいなかった。ペア血清の1回目のサンプルと2回目のサンプルのH5N2中和抗体価が比較された。その上昇について可能性のある因子を調べるために、二回目のサンプルにおけるH5N2中和抗体価(40倍以上)を計算した。それらの因子のH5N2中和抗体陽性との関連を調べるために、ロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】257名の対象から得られたデータについてウィルコクソン符号付順位検定を実施し、ペア血清の2回目のサンプルのH5N2抗体価は1回目のそれより有意に高いことを確定した(p<0.001)。過去一年以内に通常のインフルエンザ予防接種の経験のない13名の対象で、ペア血清のH5N2抗体価が4倍以上増加していた。抗体陽性率は、予防接種歴のある対象(全対象の28%)では32%であり、予防接種歴のない対象では13%であった。H5N2中和抗体陽性の調整オッズ比は、40歳以上の者に対して4.6(95%信頼区間: 1.6-13.7)であり、過去一年以内の予防接種歴のある者に対して3.1(95%信頼区間: 1.6-6.1)であった。
【結論】結果は家禽のトリインフルエンザH5N2のヒトへ最初の感染があったかもしれないことを示唆した。インフルエンザ予防接種歴がH5N2中和抗体陽性と関連しているかもしれなかった。
キーワード:インフルエンザ、ヒトインフルエンザ、H5N2、中和抗体検査、予防接種
P160~166

5)日本における川崎病の疫学像:2005-2006年の全国調査結果

中村好一(自治医科大学公衆衛生学教室)、屋代真弓、上原里程、大木いずみ、渡邉至、柳川洋
【背景】最新の川崎病の疫学像は不明である。
【方法】2005年、2006年に罹患した川崎病患者を対象とした第19回川崎病全国調査は2007年に実施された。100床以上の病院すべての小児科及び小児病院は2年間のすべての川崎病患者の報告を求められた。
【結果】1543の小児科と病院から合計20475人(2005年は10041人、2006年は10434人)の患者が報告された。男が11892人、女が8583人であった。年平均の罹患率は0-4歳人口100000対186.4であった。過去12年間にわたって患者数と罹患率が統計学的に有意に上昇していた。年齢別罹患率は6-8か月にピークを持つ一峰性の分布であった。急性期の心障害と心後遺症の有病率は乳児と年長児で高かった。
【結論】日本における川崎病の患者数及び罹患率は恒常的に上昇している。
キーワード:川崎病、罹患、心血管疾患、免疫グロブリン療法、疫学
P167~172

6)合理的思考/感情表出抑制のパーソナリティ特性と食習慣との関連性

廣川空美(岐阜大学医学部疫学・予防医学分野)、永田知里、高塚直能、清水なつき、清水弘之
【背景】食習慣と心理学的な要因との明確な関連性はこれまで示されていない。本研究の目的は、がん傾向特性といわれる合理的思考/感情表出抑制のパーソナリティ特性と食物摂取との関連性について、日本の一般住民を対象として検証することであった。
【方法】高山研究は、1992年9月1日にスタートした、岐阜県高山市住民対象の栄養とがんに関する大規模コホート研究である。本研究は高山研究のベースライン時の食習慣と栄養素のデータを用いた横断研究である。食習慣については、169種類の食品と飲料類の摂取状況を、質問票を用いて測定した。質問票には、パーソナリティ特性の項目や他の生活習慣に関する項目も含めた。調査対象者は、35歳以上の28077名(男性13082名・女性14995名)であった。
【結果】男女ともに、合理的思考と感情表出抑制傾向の高い群は、低い群、中度の群に比べ、大豆製品、緑黄色野菜、その他の野菜、海藻類をより多く摂取していることが示された。また、男性の合理的思考と感情表出抑制傾向の高い群は、アルコール類の摂取が他の群に比べて低く、女性では、甘い菓子類や塩辛い菓子類の摂取が低いことが示された。一方、男性の合理的思考と感情表出抑制傾向の高い群は、肉類や乳製品類を、女性では、魚介類や卵類を、その他の群に比べて多く摂取していることも示された。
【結論】合理的思考と感情表出抑制のパーソナリティ特性によって、食習慣が異なる可能性が示された。
キーワード:パーソナリティ特性、合理的思考、感情表出の抑制、食習慣、生活習慣
P183~190