Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.17-4

メンタルヘルスリテラシーの低さと男性、低学歴の関連
Male Gender and Low Education with Poor Mental Health Literacy: A Population-based Study

金子善博(秋田大学医学部社会環境医学講座健康増進医学分野)、本橋豊
【背景】男性と社会経済要因の低さはうつ病や自殺と関連しているが、メンタルヘルスリテラシーとの関連は明らかではない。本研究の目的は日本の農村部地域でのメンタルヘルスリテラシーの水準を評価し、関連要因を検討することである。 【方法】質問紙による地域住民を対象とした横断調査を行った。30~69歳の8163人の住民を対象として88.2%の回収率を得た。メンタルヘルスリテラシー(うつ病の認識、うつ病に対する態度、自殺の受容)と人口学的要因、社会経済的要因、抑うつの程度との関連をロジスティック回帰分析により評価した。
【結果】回答者のうちうつ病に対して不適切な認識を示した割合は25.2%、うつ病に対して不適切な態度を示した割合は12.5%、自殺を仕方ないこと(受容)とした割合は13.1%であった。分析対象者(完結率65.5%)では、うつ病に対する不適切な認識は男性(調整オッズ比1.93、95%信頼区間1.68-2.22)、高齢者(2.18、1.58-3.00)と低学歴(1.95、1.34-2.86)に関連していた;うつ病に対する不適切な態度は男性(2.18、1.82-2.61)、低学歴(2.34、1.38-3.97)と強い抑うつ状態(2.26、1.54-3.32)に関連していた;自殺の受容は男性(1.33、1.13-1.58)と強い抑うつ状態(5.77、4.20-7.93)に関連していた。メンタルヘルスリテラシーの低さは男性と低学歴に強く関連した。この結果から、メンタルヘルスリテラシーの低さは男性での自殺の多さに寄与する要因である可能性が示唆された。
キーワード:メンタルヘルス、学習、性、教育、うつ病、自殺
(P114~119)

喫煙と歯の喪失との関係:日本の国家統計資料の分析
Relationship between smoking status and tooth loss: Findings from national databases in Japan

埴岡 隆(福岡歯科大学口腔保健学講座)、小島美樹、田中景子、青山 旬
【背景】喫煙と歯周病との因果関係が確立している。本研究では日本の国家統計資料を用い、喫煙と歯の喪失との関係を調べた。
【方法】平成11年歯科疾患実態調査及び国民栄養調査の記録を、世帯番号を用いて電子的にリンケージを行なった。40歳以上の3,999人の記録を、年齢、歯磨き回数、BMI、アルコール摂取、ビタミンCおよびE摂取の交絡因子を調整し、ロジスティック回帰モデルにて分析した。現在歯が19本以下の者を歯の喪失所見ありとした。歯の喪失所見者割合は37.3%だった。喫煙率は、男性45.6%、女性7.8%だった。歯の喪失の所見者割合は、非喫煙者、元喫煙者、現喫煙者で、男性では28.5%、38.6%、36.9%、女性では38.6%、34.3%、38.9%だった。平均現在歯数は、交絡因子を調整した場合、男性では喫煙状況別に21.5本、19.7本、18.2本、女性では19.0本、19.2本、16.4本だった。歯の喪失と喫煙との関係は、元喫煙者では有意ではなかったが、現喫煙者では有意であった。非喫煙者に対するオッズ比(95%信頼区間)は、元喫煙者では男性1.29(0.92-1.80)、女性0.86(0.46-1.60)、現喫煙者では男性2.22(1.61-3.06)、女性2.14(1.45-3.15)であった。
【結論】生涯曝露量と歯の喪失との間には量-反応関係が認められた(P<0.0001)。日本全体の幅広い横断研究である本研究により、喫煙と歯の喪失との関連が示された。
キーワード:喫煙、歯の喪失、健康調査、栄養調査、量-反応関係
(P125~132)

 
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