Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.16-4

Young Investigator Award Winner’s Special Article
日本人における過体重または肥満が医療費、全死因死亡、がん罹患に与える影響
Impact of Overweight and Obesity on Medical Care Costs, All-Cause Mortality, and the Risk of Cancer in Japan

栗山進一(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野) 日本における体格指数(body mass index (BMI))と健康影響との関連を検討するため、3つの前向きコホート研究を行った。その結果、体重過多と医療費の増加、全死因死亡、がん罹患リスクとの間に統計学的に有意な関連がみられた。BMIと医療費との間にはU字型の関連がみられ、全医療費のうち過体重または肥満による医療費の増加分は、全体の3.2%と算出された。この3.2%は欧米からの報告(0.7%-6.8%)の範囲内にあった。全死因死亡との関連では、肥満(BMI≥30.0 kg/m2)の女性およびやせ(BMI<18.5 kg/m2)の男性および女性で有意なリスクの上昇がみられた。全がん罹患リスクとの関連では、女性で有意なリスクの上昇がみられ、女性における過体重または肥満の全がん罹患リスクに対する人口寄与危険度割合は4.5%と算出された。この値は欧米からの報告(3.2%(スペイン)-8.8%(米国))の範囲内にあった。以上の研究結果は、体重過多は欧米のみの健康問題ではなく、日本においても重要な課題であることを示唆している。 【キーワード】新生物、日本、医療費、死亡率、肥満、リスク (P139~144)

Conditional Relative Odds Ratio and Comparison of Accuracy of Diagnostic Tests Based on 2×2 Tables

鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科 健康増進・予防医学分野)
2×2表に基づく診断検査の正確さを評価するためにいくつもの指標が使われているが、不適切な使用法も目にする。この論文では、これらの指標の特性と問題点を挙げ、2つの診断検査の正確さを比較する方法を紹介する。ここでは、2×2表に基づく指標として、一致率、κ値、オッズ比を総括し、架空例を使いながら、これら指標の特性を吟味し、診断検査の比較にふさわしい指標を探る。オッズ比のみが有病率の影響を受けないので、その比である相対オッズ比が正確さの比較には最も適当である。選択バイアスを減らすためには、2つの検査を同一個人に使用するのが望ましい。しかし、同一個人での比較における相対オッズ比の標準誤差を計算する方法が従来はなかった。新しく提唱された条件付相対オッズ比(conditional relative odds ratio, CROR)は、マクネーマーのオッズ比に基づいたもので、同一個人で比較した場合の標準誤差を与える。CRORは同一個人に使われた2検査の比較に際して、バイアスが少ない指標である。また、倫理的、経済的側面からも利点がある。しかし、2検査が正確で、そのために結果がよく一致している場合、検出力が低く、多くの対象者が必要となる。
【キーワード】診断、感度と特異度、オッズ比、メタ分析
(P145~153)

Original Article
日本住民の追跡調査による循環器疾患死亡と血清カロテノイド値
Cardiovascular Disease Mortality and Serum Carotenoid Levels: a Japanese Population-based Follow-up Study

伊藤宜則(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学/医学推計・判断学教室)、倉田美穂、鈴木康司、濱嶋信之、菱田仁士、青木國雄
食物や血清中に存在するカロテノイドは、循環器疾患死亡と関連することが幾つかの観察的疫学研究で示唆されている。そこで、1988年から1995年に北海道某地域住民を対象とした一般住民検診を受診した39歳~80歳の3,061名(男性1,190名、女性1,871名)を対象として、11.9年間追跡調査をした。その間、循環器疾患死亡80名(男性49名、女性31名)うち、心疾患死亡40名、脳卒中死亡37名が確認された。血清カロテノイド値は、高速液体クロマトグラフィーを用い、αーカロテン、βーカロテン、リコピンに分画定量した。統計解析は、コックス比例ハザードモデルを用いて、性、年齢などを調整して各死亡に対するハザード比(危険度)を算出した。その結果、血清αーカロテン、βーカロテン及びリコピンなどのカロテノイド値の高い者では循環器疾患死亡に対するハザード比が低い傾向が得られ、統計学的にも有意性が示された。しかしながら、血清リコピン値の高い者における脳卒中死亡に対する低いハザード比は必ずしも有意性は確認されなかった。これらの結果は、日本住民における血清αーおよびβーカロテンなどのカロテノイド値が高いことは、その後の循環器疾患死亡リスクを低めることを推測させるものである。
(P154~160)

Age at Menopause and Mortality in Japan: the Jichi Medical School Cohort Study

Yoko Amagai, et al.
(P161~166)

Social Course Patterns of Urban Dwellers with Tuberculosis under Fragile Living Conditions in Tokyo, Japan

Masashi Kizuki, et al.
(P167~175)

 
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