調査・報告・声明
日本疫学会タバコ対策宣言
タバコによる健康障害は、肺がん、喉頭がん、慢性閉塞性肺疾患、心疾患、脳卒中、早産・流産、など広範囲に及びます。これらのタバコによる健康障害は、喫煙者本人のみならず他人の吸うタバコ煙に受動的に曝されることによっても生じます。
わが国男性の喫煙率は、2004年現在、50%を切ったものの依然他の先進工業国に比べ高く、20歳代女性の喫煙率は年々増加し20%に達しました。また、最近の調査では、未成年者の喫煙者率も高校3年生で男子40%、女子20%に達するとの報告もあります。これらのことから、今後より一層国民の喫煙率低下を促すには、禁煙支援のみならず、若年女性及び青少年に焦点を当てた喫煙防止教育が重要となります。
もし、タバコの無い社会が実現すれば、わが国のがん死因の首位を占める男性肺がん死亡者を現在より40-70%、全がん死亡者を30%減らすことができると推計されます。同様に、男性において循環器疾患の代表である脳卒中および心筋梗塞の発症あるいは死亡者を30-40%減らすことができると推計されます。
2003年より健康増進法が施行され、官公庁や公共施設、職場における無煙化にはずみがつきました。しかしながら、飲食店における分煙化すら未だ不十分であり、社会全体における受動喫煙の完全防止にはほど遠い現状です。わが国は2004年にWHOタバコ規制枠組条約を批准しまたが、今後、わが国のタバコ対策がWHOタバコ規制枠組条約の内容にそって一段と推進されるよう、学会としての取り組みを強めます。
そこで、日本疫学会は以下の行動目標を採択します。
1.タバコの無い社会を目指し、タバコの健康影響、禁煙の効用、禁煙方法の開発、禁煙環境整備の効用、喫煙の医療経済等の研究推進に努めます。
2.タバコによる健康障害、禁煙の効用や禁煙方法に関する知見の普及に努めます。
3.若年女性・青少年の喫煙防止のための疫学研究と喫煙防止対策の推進に努めます。
4.喫煙防止・禁煙促進の施策がより一層推進されるよう、政府および関連機関に働きかけます。
日本疫学会理事長
吉村健清
2005年1月21日