過去の提言等
新型コロナウイルス感染症対策における積極的疫学調査にかかる提案(3/12/2020掲載)
2020 年 3 月 12 日
新型コロナウイルス感染症対策における積極的疫学調査にかかる提案
日本疫学会 理事長 祖父江友孝
現在、新型コロナウイルス感染症は、一部地域で小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態です。感染拡大の防止のためには、患者の発生状況等必要な情報を十分に収集し、その特徴を理解すること、そしてそれに応じた対策を講じることが必要です。厚生労働省では、新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班が、内閣府新型コロナウイルス感染症専門家会議との連携の下、主には保健所から報告されるデータをもとに、日夜分析に務められています。すなわち、現段階で、優先的に取り組むべきは患者クラスターの把握とその感染ルート解明、次の感染を防ぐための積極的疫学調査と考えられます。
しかし、現場レベルでは、ルーチン業務に加え、新型コロナウイルス感染症の増加に伴う相談業務などに人手と時間が割かれ、積極的疫学調査を適切なタイミングで継続的に実施することが困難となりつつあります。また、現時点では、保健所から厚労省への報告様式がオンライン化されていないことも、現場の業務を煩雑にしていると考えられます。
そこで、クラスター対策を徹底し、新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大を阻止するため、日本疫学会は早急に以下の対策を立てることを提案します。
- 保健所が適切に積極的疫学調査を行い、感染制御のための任務に専念できる環境を整えること。
- オンライン化を進めること等により調査データ収集と分析の効率化を図ること。
- これらのために、関連学術団体、大学等に自治体・保健所への人的、技術的支援を求めること。
なお、日本疫学会ではすでにクラスター対策への人的支援に協力しており、今後も自治体・保健所への支援等について関連する他の学会と連携して最大限に協力する所存です。さらに、変化する国内外の感染状況ならびにWHOがpandemicを宣言したこと等を受け、今後、国内の対応フェーズが次のステージに移行するに際しても、政府・自治体・保健所に対して積極的に支援を行う所存であることを表明いたします。