過去の感染症等に関する研究紹介

↡過去のパンデミックレビュー

↡2009年の新型インフルエンザ対策について

↡感染症とリスクコミュニケーション

 

過去のパンデミックレビュー

 

2009年の新型インフルエンザ対策について

【日本公衆衛生雑誌に掲載された論文から】

  • 尾身 茂.新型インフルエンザ:公衆衛生学的観点から.
    日本公衆衛生雑誌.2009年 56 巻 7 号 439-445
    https://doi.org/10.11236/jph.56.7_439

    2009年4月にメキシコから流行が始まり、5月には日本でも感染拡大が確認された新型インフルエンザの対策について、国内流行後約2か月の時点での課題とそれまでの対策への評価が記載されています。

  • 上田 博三.新型インフルエンザ対策の経緯.
    日本公衆衛生雑誌.2010年 57 巻 3 号 157-164
    https://doi.org/10.11236/jph.57.3_157

    新型インフルエンザの発生から流行期において厚生労働省で対策に当たられた著者による記述で、どのような背景のもとで対策が取られたかなどを知ることができます。

  • 足立 ちあき, 毛利 好孝.2009年新型インフルエンザ(A/H1N1)集団発生事例に対する入院措置 兵庫県の初期対応.
    日本公衆衛生雑誌.2011年 58 巻 1 号 14-21
    https://doi.org/10.11236/jph.58.1_14

    兵庫県において新型インフルエンザの国内初発例が確認され、早期にまん延状態といえる状況となった段階で地方自治体が行った対策について記述されています。

  • 和田 耕治, 太田 寛, 阪口 洋子.新型インフルエンザの流行初期における停留措置の意思決定のあり方の検討.
    日本公衆衛生雑誌.2011年 58 巻 4 号 259-265
    https://doi.org/10.11236/jph.58.4_259

    新型インフルエンザ流行初期に行われた停留措置を踏まえて、停留の意思決定には停留の必要性の検討、対象者を最低限にするための対応、対象者の人権確保、代替策の検討が必要であると述べられています。今回の新型コロナウイルス対策で取られた隔離措置の評価においても参考になると思われます。

  • 白井 千香, 藤山 理世, 内野 栄子, 入江 ふじこ, 高鳥毛 敏雄, 磯 博康.国内初発患者に対応した神戸市の2009年新型インフルエンザ(H1N1)対策における相談および医療体制の課題 神戸市と茨城県の比較から.
    日本公衆衛生雑誌.2012年 59 巻 9 号 684-692
    https://doi.org/10.11236/jph.59.9_684

    新型インフルエンザに関する自治体での電話相談件数や医療体制について、国内初発事例を経験した神戸市と遅れて発生した茨城県との間で比較した研究です。地域によって発生状況が異なり、地域の実情に応じた対策を行うべきと提言されています。

 

感染症とリスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションとは、リスク分析の全過程において、リスク評価者、リスク管理者、消費者、事業者、研究者、その他の関係者の間で、リスク評価の結果および意見を相互に交換することである、という定義があります(下記、高岡論文より)。ここでのリスクとは、危険を引き起こす要因(ハザード)と事象の発生確率をかけあわせたもの、とされ、ハザードや発生確率に不明な部分や不安な要素が含まれると、主観的なリスクは増大すると言われています(下記、同論文より)。今回の新型コロナウイルス感染症のリスクコミュニケーションを考えるときに参考になりそうな研究をいくつか紹介します【医学中央雑誌による検索(2020年3月5日実施)】。

  • 黒田 恵美, 工藤 宏一郎, 川名 明彦, 西岡 みどり.新型インフルエンザ発生時にリスクコミュニケーションを促進する感染管理看護師の活動.日本環境感染学会誌.2017年32巻2号 Page74-84
    https://doi.org/10.4058/jsei.32.74

    本研究でのリスクコミュニケーション(RC)を、感染管理看護師(ICN)と病院内外の組織や個人との間における情報の交換と定義し、2009年の新型インフルエンザパンデミック発生時のRC促進に関連する平時のICN活動について分析した研究です。

  • 高岡 志帆, 尾花 尚弥, 濱田 美来, 植原 慶太, 今村 知明.健康危機情報の及ぼす社会反応の新聞報道量を指標にした定量分析の試みと比較.医療情報学.2011年29巻6号 Page255-264
    https://doi.org/10.14948/jami.29.255

    健康危機が発生した際の社会反応は行政機関や学識経験者等の予想に反して拡大することが多いと言われています。その反応の大きさを表す指標として「新聞報道量」を用いた指数を提案し、健康危機事例の社会反応の特性について指数を用いて分析した研究です。

  • 宮川 雅充, 枡谷 清太, 村山 留美子, 松井 利仁, 内山 巌雄.都道府県におけるSARS対策の実施状況.日本公衆衛生雑誌.2005年52巻9号 Page824-832
    https://doi.org/10.11236/jph.52.9_824

    本研究ではリスクコミュニケーションに加えて、流行時における危機管理対策を行うことをクライシスコミュニケーションとし、これらについて2003年のSARS対策の分析をした研究です。他県との連携に関する結果など興味深い内容です。