第28回日本疫学会学術総会を2018年2月1日から3日まで、福島県福島市で開催させて頂くことになりました。学会長として一言ご挨拶申し上げます。
2011(平成23)年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波により東日本大震災が起こり、東北沿岸を中心に甚大な被害をもたらしました。多くの方が亡くなり、また、家を失い、現時点でも約12万3千人が避難生活を送っています。特に、福島県では東京電力福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が飛散するという事態になりました。国は直ちに、原子力発電所周辺の住民への避難勧告指示を出し、約16万人以上の住民が避難を余儀なくされました。震災後7年目になり、避難指示解除になる地域、町村が徐々に増えていますが、未だ多くの避難者がおり、「震災は続いている」というのが実感です。
また、2016(平成28)年4月14日に熊本県、大分県を中心に震度7の熊本地震が発生し、現在も不自由な避難生活をしている方が多数いらっしゃいます。遡れば、1995年(平成7年)1月17日に阪神淡路大震災が発生し、多くの犠牲者が発生する甚大な被害をもたらしました。このように、日本は自然災害多発の国ですが、人的災害(人災)も少なくなく、健康影響も大きい点で、社会的に重要な問題です。しかし、災害による健康影響については科学的に十分に明らかになっていません。本学術総会では、現在まで災害については取り上げられたことはありません。そこで、今回、メインテーマを「災害と疫学」とし、シンポジウムとして、「東日本大震災における健康課題とエビデンス」(仮題)、及び、「震災時の健康課題とエビデンス」(仮題)を企画しました。災害に関して、疫学は何ができたのか、どのような貢献があるのかを考える機会になればと思っています。
また、近年、ヘルス・リテラシーが注目されています。この用語は、人々が情報にアクセスし、情報を理解し、活用するための動機や能力を決定する認知的、社会的なスキルと定義され、健康を維持・増進する上で重要です。そこで、特別講演は、Rima Rudd先生(ハーバード大学)をお願いしました。さらに、疫学セミナーも、Rima Rudd先生と石川ひろの先生(東京大学)にヘルス・リテラシーをテーマとし、特別講演と併せて参加頂けると大変有益と考え、企画致しました。
2月の福島は春まだ遠く、寒く、場合によっては、大雪の可能性もありますが、会員の皆様の熱気あふれる議論の場となり、新たな学びが一つでもあればと願っております。 |