2009年度第1回日本疫学会理事会 議事録
日時2009年(平成21年)1月22日(木)18:00-20:00
場所金沢市文化ホール 3F大会議室
出席者(順不同、敬称略)児玉和紀、中村好一、三浦宜彦、山縣然太朗、田中恵太郎、津金昌一郎、黒沢洋一、辻一郎、浜島信之、祖父江友孝、岡山明、橋本修二、斎藤重幸、玉腰暁子、秋葉澄伯、田島和雄、磯博康、深尾彰、中川秀昭、中山健夫*、岸玲子*、山口直人*
*)委任出席者
オブザーバー(順不同、敬称略)森河裕子、萱場一則
欠席者(敬称略)大井田隆

理事会に先立ち、児玉理事長より、委任状提出者を含めて理事の過半数の出席により理事会が成立していることが確認された。


<協議事項>
1. 2008年度第3回日本疫学会理事会議事録が承認された。
2. 2008年度事業が事務局から報告され承認された。
1) 第18回日本疫学会学術総会、第15回JEA疫学セミナー
2008年1月(丸井 英二 学会長)「地球時代の疫学に向かって」
学術総会 488名参加、疫学セミナー 101名参加
2) 将来構想検討委員会
*統計利用促進委員会
*疫学研究支援委員会
*学術委員会
*広報委員会
3) 会誌Journal of Epidemiology Vol.18(1)-(6)の刊行
4) ニュース・レター第31号、第32号の刊行
5) 日本疫学会功労賞受賞者(敬称略)
丸井 英二(順天堂大学)
6) 日本疫学会奨励賞受賞者(順不同、敬称略)
井上 真奈美(国立がんセンター)
大平 哲也(大阪大学)
岡村 智教(国立循環器病センター)
7) 疫学の未来を語る若手の集い
第13回疫学の未来を語る若手の会
(2008年1月24日 順天堂大学医学部9号館2階8番教室)
8) 国際交流委員会
第18回国際疫学学会、旅費補助4名
(2008年9月20日~24日 ブラジル ポルト・アレグレ)
9) 日本疫学会倫理審査委員会
申請件数3件(結果:承認1件、審査中1件、取り下げ1件)
10) 日本疫学会会員名簿・諸規則集(2008年10月)作成、発送
3. 2008年度収入支出決算について事務局から報告された。
《収入の部》
・ 前年度繰越金が予算額と異なるが、前年度まで会計報告をしていなかった、ニュース・レター編集委員会、若手の会から会計報告をしてもらったため、前年度繰越金が増額となった。
・ 特別会計に100万円の寄付金があった。
《支出の部》
・ 〔会誌発行費〕会費印刷製本費の決算額が予算額より1,246,000円少ないが、Vol.18(1)~(5)の支払いは済んでいるものの(6)に関しては2008年12月末までに支払いが出来なかったためである。
・ 〔JE編集委員会〕印刷製本費が予算額を587,800円超過したが、別刷印刷料をこれまでは事務局が管理していたが、JE編集委員会にて管理をするようになったためである。
・ JE編集委員会費が予算額を775,715円超過したが、査読謝礼388,000円を含み、さらに2008年度にオンライン投稿システムの導入をするため、昨年度までより頻繁に委員会を開いたことによる。
・ JE国際学会出張費については雑誌の編集に関する専門的な学会であり、情報収集やトレーニングを兼ねて参加した。
・ 〔将来構想検討委員会・統計利用促進委員会〕東北大学にて経理を担当してもらっている。
・ 〔名簿作成費〕名簿とニュース・レターNo.32の同時発送を行ったので郵送費を節約出来た。
・ 〔HP管理費〕2007・2008年度分のHP管理費を支払ったため。
・ 〔予備費〕JEオンラインシステム費については2008年度中にオンラインシステムに移行するかどうか昨年1月の時点では定かではなかったため。
次いで監査結果が玉腰監事から報告され、承認された。
4. 2009年度事業計画(案)事務局から提出され、承認された。
1) 第19回日本疫学会学術総会、第16回JEA疫学セミナー、本部企画
2) 将来構想検討委員会
*統計利用促進委員会
*疫学研究支援委員会
*学術委員会
*広報委員会
3) Journal of Epidemiology Vol.19(1)-(6)の刊行
4) ニュース・レター第33号、第34号の刊行
5) 日本疫学会功労賞・名誉会員
6) 日本疫学会奨励賞
7) 疫学の未来を語る若手の集い
8) 国際交流委員会
9) 日本疫学会倫理問題検討委員会
10) 日本疫学会倫理審査委員会
11) 理事及び理事長選挙
5. 2009年度予算(案)が事務局から提出され、承認された。
《支出の部》
・ 〔会誌発行費〕印刷会社の変更により予算額を前年度よりも高めに設定(Vol.18(6)の支払いも含む)。
・ 〔JE編集委員会〕前年度よりも編集委員会費の増額をした(2か月に1度の頻度で委員会を開催する予定)。
・ オンライン投稿システム維持費は200投稿で75万円の設定(昨年実績:144投稿)。
・ 〔国際交流委員会〕2010年IAEA Regional Meetingの際に日韓疫学セミナーをあわせて開催予定であり、3名分の旅費・交通費を負担する予定である。予算額を超える場合は予備費より支出。
6. 次期倫理審査委員(2009年-2012年)に下記9名(五十音順、敬称略)が推薦され、承認された。(★は委員長)
〔東日本〕浅井 満、井上 真奈美、武藤 香織、山口 直人★
〔西日本〕竹下 達也★、戸崎 絢子、中山 健夫、丸山 英二、渡邊 能行
東日本の残り1名については後日決定することとなった(その後、平林 勝政先生の承諾を得ることができ、再任が決定された)。
7. 2009年度理事選挙管理委員に、小笹 晃太郎、田中 恵太郎、玉腰 暁子、村上 義孝、山口 直人(五十音順、敬称略)が理事長から推薦され、承認された。
8. 下記4名の評議員の推薦が承認された(五十音順、敬称略)。
西條 泰明(旭川医科大学健康科学講座)
竹下 達也(和歌山県立医科大学医学部公衆衛生学教室)
玉置 淳子(近畿大学医学部公衆衛生学教室)
渡邊 至(国立循環器病センター)
9. 評議員の再任推薦について178名の方が再任希望され推薦することが承認された。
10. 第21回日本疫学会学術総会学会長に森 満教授(札幌医科大学医学部公衆衛生学教室)を推薦することが決定された。
11. 理事長より事務局固定化を検討中であることが報告され、前向きに検討することが承認された。

<報告事項>
1. 庶務報告(事務局)【「庶務報告」】
2. 各委員会報告
1) 将来構想検討委員会【将来構想検討委員会アンケート結果】
 辻委員長より将来構想検討委員会、統計利用促進委員会について以下の通り報告があった。
* 昨年度の本委員会の検討を受けて、本年度より4つの臨時委員会(統計利用促進委員会、疫学研究支援委員会、広報委員会、学術委員会)が組織された。臨時委員会の委員は将来構想検討委員会の委員を兼ねることとし、相互の連携を強めている。
本委員会では、各臨時委員会からの報告と討論に加えて、他分野の先生をお招きして勉強会を行った。これまでに、内閣府統計委員会の委員である廣松毅・東京大学教授、社会科学研究のデータ・アーカイブを構築された中澤渉・東洋大学講師をお招きして、討論を深めた。
 本学会の会員が臨床研究とどのように関わっているかについてアンケート調査を実施した。
* 政府統計の利活用の促進(とくに日本版National Death Indexの創設)に向けた調査研究と提言を行うこと、データ・アーカイブの設立に向けた調査研究と提言を行うことを目的として検討を行っている。
 前者では厚生労働科学研究「死亡統計データベースの作成とその研究利用のあり方に関する研究班(安村班)」とも連携して検討を行っている。さらに改正統計法のもとで政府統計の研究活用をさらに進めるための方策を検討している。

 中村委員長より疫学研究支援委員会について以下の通り報告があった。
* 2008年3月の理事会で設置が認められた疫学研究支援委員会は、中村好一(自治医科大学)を委員長として、辻一郎理事(東北大学)と齋藤重幸理事(札幌医科大学)で構成している。疫学研究を進めたいが、支援・協力を仰ぐ疫学者が周囲にいない、という研究を対象に、申請に基づいてマッチングを行い、学会の評議員クラスを紹介する、疫学研究支援事業を担当している。同事業の具体的な進め方については、学会のサイトで紹介している(http://jeaweb.jp/)ので、そちらを参照していただきたい。
 本事業のPRとして、(1)ニュース・レターでの紹介、(2)学会サイトでの紹介、(3)各種学会でのパンフレットの配布、に加えて、日本医学会から加盟学会に対して日本疫学会の新しい事業として電子メールで紹介していただいた(2008年6月13日)。
 今日に至るまで1件の申請があり、委員会での検討の結果、川村孝評議員(京都大学)にご協力をお願いすることとなり、川村先生のご了解も得られ、現在、共同研究が遂行されている。

 事務局より学術委員会について以下の通り報告があった。
* 学術委員会は、中山健夫(京都大学)を委員長として、岡村智教評議員(国立循環器病センター)、山本精一郎評議員(国立がんセンター)、若井建志評議員(名古屋大学)で構成している。
 本委員会の目的は、学会長が決定する学術総会の年ごとのメインテーマと併せて、中長期的な展望で疫学会と会員にとって重要な課題を継続的に検討、発表する企画を提案し、その運営をコーディネートすることである。
 平成21年1月の第19回学術総会での理事会企画シンポジウムで、学会員に活動状況、関連資料(*)を紹介し、テーマ候補について意見交換を行う。本年度内に学術委員会、将来構想委員会、理事会でテーマを確定して会員に周知し、第20回学術総会で同テーマの理事会学術委員会企画シンポジウムを行う。共通テーマとしての設定期間、学術総会でのシンポジウム企画の継続、次期理事会との連携、最終的な報告形式など検討を行う。
 平成20年度の本委員会の活動概要を以下に述べる。
 当初、重要課題に関して、関係者がエビデンスを共有し、今後の研究活動や社会的発言への共通基盤を作ることを目的にシステマティックレビュー・プロジェクトを検討した。しかし、がんや循環器疾患など固有の専門領域で既に取り組みが進んでおり、疫学会がテーマを限定したシステマティック・レビューを行うメリットは少ないことが指摘された。
 決断分析、費用効果分析等の2次研究(データ統合型研究)の専門家と連携することで、お互いの異なる視点、データの共有、活用の可能性を検討した。学術委員会企画としての当面の実現性は高くないが、これらの研究者との意見交換は有意義と考えられた。
 今後、共通テーマを会員から広く募るため、学術総会シンポジウムでの呼びかけ、メーリングリスト(若手の会メーリングリスト含む)、ニュース・レターなどを活用する。
 第19回学術総会での理事会企画シンポジウムでは、上記報告と共に、近年、提案された疫学研究の報告に関する各種声明、ガイドライン(STROBE声明[観察研究]、TREND声明[公衆衛生学的な介入研究]、MOOSE声明[観察疫学のメタ・アナリシス]、CONSORT声明[ランダム化比較試験]など)の概況を紹介する。

 岡山委員長より広報委員会について以下の通り報告があった。
*目的:
 社会で起こる種々の事件等について、おもに学術的な立場から発言していく。疫学会の特質として多方面の分野の専門家がおり、それらの意見を総合することで、社会に対する意見をまとめて、発言していく事が大切であると意見が集約された。
 その例として特定健診・保健指導のあり方について取り上げるとの提案があった。議論の結果、政策として現在実施されているものへの見解表明はハードルが高いので、比較的小さなテーマについて知見を高めた上で取り組んでいくとの結論となった。今後は具体的なテーマをもとに広報委員会の役割を考えていくことになった。また必要に応じて委員の補充を行うこととなった。
 経過:
 社会にタイミングよく発言して行くには、体制の整備が重要であるが、どのような内容に対して、どのような立場で発言していくべきかを明らかにしないと議論が進まない。そこで、検討課題として下記の課題を挙げて、各委員で議論をお願いした。
 医療機関での自己血糖測定用機器の針先を交換しないまま用いたことによる感染事故をきっかけに自己採血器具についてマスコミ報道が過熱している(別添資料1)。そのなかで、採血針は換えているが、その保持部分を共用(多くでは洗浄後使用)したことがあたかも重大な感染を引き起こすかのような報道がなされている。厚生労働省の通達でも(別添資料2)この違いを述べているが、報道では全くこうした違いが考慮されていない。健康祭りなどで使用されてきた経緯があり、現場ではこうした器具を使用したことが重大な過失があったかのように報道されることから、強く困惑していると聞いている。関連論文を精査した上で、感染危険性について正確な情報を意見として述べた方がよいかどうかについて委員の意見を伺った。議論の中で、やはり立場の整理が十分でないまま、社会的な発言をすることの問題点が指摘された。
 従来まで、学会が一定の発言を行う仕組みが我が国にはほとんどみられない、疫学会は幅広い研究者が所属していることから、社会的な発言に適した学会といえるが、実際には例えば感染症や食品衛生の専門家が少ないなど、社会で問題となりうる課題に対して専門家として十分な発言ができる範囲が限られている。「これは」という課題に遭遇しないままに一年が経過してしまったといえる。この一年を振り返り、発言すべき課題は何だったのかをさかのぼって検討することも重要と考えられた。
 今後の展望:
疫学における「広報」の意義を再確認するとともに、今年度は具体的な課題で1つでも具体的な発言に結びつけたい。
2) Journal of Epidemiology編集委員会【「Journal of Epidemiology編集委員会」】
海外からの投稿が国内よりも多くなった。
3) ニュース・レター編集委員会
第32号を10月15日に会員に発送したことが報告された。
4) 国際交流委員会
2010年1月にIAEA Regional Meetingとあわせて、日韓疫学セミナーを開催予定である。
前回のテーマはメタボリック・シンドロームだったが、今回のテーマは未定なので、MLを通して理事の各先生から意見を募りたい。
5) 倫理審査委員会(東日本・西日本:事務局)
1) 東日本に審査中案件が1件、承認が1件、西日本から1件審議の取り下げがあった事が報告された。
2) 玉腰監事より臨床研究に関する倫理指針の改正が平成21年4月1日より施行されるので、今後どのように活動していくか検討すべきではないかと意見が出された。
3) 山縣理事より今回の改正について会員に周知すべきと、今後の倫理審査委員会について検討すべきであるとの意見が出された。
6) 人類遺伝学会Research Medical Coordinator委員会
浜島委員長よりGMRCの役割、疫学会を初めとする他学会との連携の趣旨について報告があった。また、疫学会との連携について以下の事が日本人類遺伝学会にて決定されたとの報告があった。
1) 連携について「3年毎に見直す」という一文を挿入して人類遺伝学会理事会に諮り承認を得た後、正式に疫学会に申し入れる。
2) 個人が負担する受講料や受験料は人類伝学会も疫学会員も同額とする。
3) 提携案文書の提示条件4.と5.は混乱を生じかねないので、文章を再度推敲する。
変更案(羽田私案:委員会で検討後、理事会での承認を得る予定)
4) 日本疫学会員のGMRC取得希望者の受講料、受験料は日本人類遺伝学会会員と同額とする。
5) 日本疫学会員のGMRCが、5年ごとの認定更新する際の手数料は、GMRC制度委員会に一括して支払う。
6) 制度運営にかかわる費用は、原則として日本人類遺伝学会が負担する。
注:日本人類遺伝学会の非医師会費は8,000円であるが、GMRCは実質的な会費を5,000円とし、3,000円を更新料の積み立てとする。5年間での更新であるため、更新料は15,000円である。他学会のGMRCの場合は、更新時に委員会から15,000円を一括して請求する。
3. 第19回日本疫学会学術総会準備状況が中川学会長から報告された。
4. 第20回日本疫学会学術総会準備状況が三浦次期学会長から下記の通り報告された。
日 程:平成22年1月9日(土)~10日(日)
場 所:埼玉県立大学
テーマ:Return to the basics of epidemiology
事務局:埼玉県立大学内
5. 定年(満63歳)に伴う4名(五十音順、敬称略)の評議員の退任について、事務局から報告された。
小川 浩(中部大学)
杉田 稔(東邦大学)
中垣 晴男(愛知学院大学)
正木 基文(長崎県立大学大学院)
6. 疫学辞典第5版の日本語訳出版について
中村理事より45名の方に翻訳を担当してもらうとの報告があった。
7. その他
* 臨床研究に関する倫理指針の改正について、日本疫学会も臨床医学系の学会を対象に率先して講習会を企画する事も必要なのではないかと岡山理事より意見が出された。
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