文部科学省・厚生労働省による改正「疫学研究に関する倫理指針」が,2004年12月28日に告示され,2005年4月1日に施行されることとなった。個人情報保護法が2005年4月より全面施行されるため,同法と齟齬のないように改正されたものである。
まず,個人情報保護のための方策について,以前の指針では「研究責任者は,疫学研究の実施に当たり個人情報の保護に必要な体制を整備しなければならない」とだけ書かれていた部分が,「研究を行う機関の長」に課せられる責務を中心に,かなりのページ数を割いて書かれている。具体的な措置に関する項目としては,個人情報の利用目的の特定,利用目的による制限,適正な取得,取得に際しての利用目的の通知等,内容の正確性の確保,安全管理措置,委託者の監督,第三者提供の制限,保有する個人情報に関する事項の公表等,個人情報の開示,訂正等,利用停止等,理由の説明,開示等の求めに応じる手続,手数料,苦情の対応の17項目にのぼる(4(9))。
また,「連結可能匿名化」「連結不可能匿名化」された資料は,当該情報を保有する法人内において匿名化のための対応表を有していなければ「個人情報」とは扱われず,保存・利用や第三者への提供に際して,同意や倫理審査委員会などの手続きが異なってくることが規定された(10,11)。
新たな細則として,「研究計画に記載すべき事項に関する細則」(3(1)B),「インフォームド・コンセントの受領に関する細則」(3(3)A),「インフォームド・コンセントを受けない場合において,当該研究の実施について公開すべき事項に関する細則」(7(2)A)が加わっている。
やはり同日告示された「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」にも注目すべき点がある。「複数の機関が参画する共同研究において,主たる研究を行う機関が研究全体の推進及び管理を担う場合」には,主任研究者の研究機関の倫理審査委員会が研究計画全体について審査を行い,他の共同研究機関では迅速審査を行うことができる」(6(10))と明記されたほか,「地域住民等一定の特徴を有する集団を対象に,地域住民等の遺伝的特質を明らかにする可能性がある研究を実施する場合」の説明会実施や研究実施中の継続的な対話の必要性が述べられ(5(6)),インフォームド・コンセント受領に際して必要な業務を研究機関内外の者に委託できることが,研修機会の確保義務も含めて,初めて規定に加わった(10(6),(7))。以上の点は,分子疫学研究を計画あるいは実施する会員にとってはもちろん,そうではない会員にとっても参考になる点であろう。
改正された倫理指針は,旧指針とあわせて,「医学研究に係る厚生労働省の指針一覧」<http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/index.html>で読むことができる。各指針のホームページではまだ反映されていないようである(2004.2.18アクセス)。その他に,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」<http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1227-6.html>も同時期に公表されている。
(信州大学医学部 武藤 香織)