第10回疫学の未来を語る若手の集い開催される


産業医科大学環境疫学 寶珠山 務


 今年の学術総会の開催に合わせて,第10回の若手の集いが開催された。参加者も60余名と予想を上回り,急遽予備の椅子20脚を追加しなければならないほどであった。まずは,上島弘嗣学会長,岡村智教事務局長にこの場をお借りし,厚く御礼申し上げたい。
 今回は,米国ピッツバーグ大の関川暁先生をお招きし,「NIH grant,日本からの挑戦」のテーマでご講演をいただいた。内容は,現在携わられている研究の紹介,米国の研究環境や研究費獲得の実状などであった。関川先生はユーモアも随所に散りばめてお話しくださった。中でも,全米のみならず世界中の医学生物学系の研究者がその獲得を目指すNIH(National Institute of Health:米国国立衛生研究所)のgrant配分制度について簡潔明瞭にご紹介くださった。日本の研究者であっても,NIHのgrantを狙うことは十分に可能であり,例えば,一般的なR01研究費であれば,シングルスペース25頁のGrant proposal(研究費申請書)を書きさえすればよい(R03またはR21ならば10頁)とのことであった。その他に,米国留学のための心構えや予備知識などについても分りやすくお話しされ,私たちの知的好奇心を大いに刺激してくださった。
 関川先生のご講演に続き,私も日本の研究費獲得システムについて厚生労働科学研究費補助金と日本学術振興会科学研究費(文部科学研究費)補助金を取り上げて,配分状況(1件あたり平均額,採択件数,機関別の採択率ほか)などを紹介させていただいた(内容もスライドも関川先生と比べると何とも稚拙でありお恥かしい限りであったが)。
 総合討論では大いに盛り上がり,関川先生へ米国の研究生活や留学のメリットなどに関する質問,わが国の研究費の入金遅れや費目制限の緩和などの要望,若手の集いメンバーでの共同研究や臨床家との連携の実現を求める提案などが相次いで出され,会場の閉館時間(21時)以降は近くの居酒屋に場所を代えてさらに続けられた。
 例年とは異なり,学術総会前日の集いの開催であったため,翌日にほとんどの参加者と会場で顔を合わせることになったが,多くの方々から集いに好意的なご意見をいただいた。もちろん,関川先生の素晴らしいご講演に私たちの全てが勇気づけられたことは言うまでもないが,それだからこそ私たち同士も相互に元気を交換し合えた。若手の集いの原点が「元気」にあることを,多くの参加者が確認できたはずである。