日本疫学会奨励賞を受賞して

サーベイランスの鎖をつなぐ仕事


国立がんセンターがん予防・検診研究センター情報研究部
金子 聰


 このたび,日本疫学会奨励賞という名誉ある賞をいただくことになりました。関係諸先生方に感謝申し上げますと共に,これまで,ご指導,ご支援頂きました先生方に深く御礼申し上げる次第です。今回,受賞対象となった内容は,がん登録の整備に関する活動についてですが,ご存じの通り,我が国におけるがん登録の整備は,これまで大阪府立成人病センターの先生方をはじめ,多くの諸先生方,関係者の方々のご努力によりなされてきたものであります。これまで国立がんセンターは,がん登録に深く関わることはありませんでしたが,平成15年度に設置されたがん予防・検診研究センターの機能の一つとして,全国レベルでのがんサーベイランスの機能が加えられ,さらには,平成16年度から始まった第3次対がん10か年総合戦略の中では,がん登録の全国レベルでの標準化と精度の向上を図るための中央事務局を同センターの情報研究部が担当することとなりました。また,地域がん診療拠点病院における院内がん登録の整備に関する支援についても情報研究部が担当しており,がん対策の施策決定に関する情報基盤整備,すなわちサーベイランス網の確立を目指し,少しずつではありますが日々,前進しつつあるところです。そもそも,public healthにおけるサーベイランスの重要性を感じましたのは,10年前の国際協力事業団(JICA)グァテマラ共和国熱帯病プロジェクトへの参加まで遡ります。当時は,ただ単に,プロジェクトエリアの情報を集めていましたが,最終的には国レベルで実態把握(サーベイランス)の重要性を実感致しました。その後,サーベイランスの構築という機会を得ることはありませんでしたが,このたび,がん登録の整備事業の一端を担わせて頂くことになり,サーベイランスの重要性の再認識と構築の困難さを自覚しているところです。情報基盤の整備は,1個人,1機関の努力だけでは,機能はしませんし,整備も進みません。日本疫学会の諸先生方,関係者の方々のご協力とご理解,さらにはご支援を是非ともお願いしたいと存じます。どうぞ宜しくお願い致します。最後になりましたが,私のグァテマラ時代から留学,学位取得まで,家族共々親身にご指導・ご支援頂きました吉村健清先生にこの場を借りまして心より感謝申し上げたいと存じます。本当に,どうもありがとうございました。
(追記:がん登録の整備に関する情報は,http://ncrp.ncc.go.jp(地域がん登録),http://jcdb.ncc.go.jp(院内がん登録)において公開しております。)