日本疫学会奨励賞を受賞して

心理社会的指標の正確な測定を目指して


岡山大学大学院医歯学総合研究科衛生学・予防医学分野
堤 明純


 この度,日本疫学会の奨励賞を受賞いたしましたこと身に余る光栄に存じますとともに,日本疫学会奨励賞選考委員会の諸先生方に深謝いたします。
 母校自治医科大学の卒業生がそれぞれの赴任先で地域住民を対象として行っております循環器疾患の発症に関する研究(JMSコホート研究)に参加する機会をいただいたことが契機となり,臨床上関心を持っておりました疾病の背景にある心理社会的要因について勉強させていただいています。
 JMSコホート研究では,当時赴任しておりました小さな町の住民の協力をいただいてソーシャルサポート尺度の開発をさせていただきました。ご存知の通り,心理尺度は項目を収集しただけでは不完全で,測定しようとしている概念が理論上想定している概念(構成概念)を十分に反映していることが検証されていく必要があります。心理尺度を一から開発していく経験は,心理尺度が持つべき特性について勉強する良い機会となりました。
 スウェーデンのカロリンスカ研究所に留学し,今日もっとも有力とされる職業性ストレスモデルを適用した研究に触れることができたことが,もう一つの契機となりました。ストレスは,心理社会的要因のうちでももっとも注目を浴びている研究対象と思われますが,測定方法論上の課題が数多くあります。
 正確な指標の測定は,疫学研究の重要な前提となります。今回の受賞を励みにさらに研鑽を積み,この分野の発展に微力ながらも貢献することができればと考えております。今後とも,ご指導,ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。