日本疫学会奨励賞を受賞して

すばらしい出会いの連鎖は幸運の連鎖


金沢医科大学健康増進予防医学(公衆衛生学)
三浦 克之


 この度,栄誉ある日本疫学会奨励賞をいただきましたこと,心よりお礼申し上げます。受賞テーマである「高血圧の発症要因および長期循環器リスクについての疫学研究」については,今回ご推薦をいただいた中川秀昭教授をはじめ多くのすばらしい先輩方との出会いとご指導があってこそ成し遂げられたものであり,その幸運を感謝せずにはおられません。

 思い起こせば高校生の時にはエコロジーに興味があり,地球上で人類が生き残るにはどうしたらよいか真面目に考えておりましたが,金沢大学医学部入学時にはすでに人類の生存がテーマである(?)公衆衛生学が将来の選択肢に入っている変わり者(??)でありました。医学部に入学すると「社会医学」という名前の付いたサークルに即断で飛び込み,僻地で公衆衛生活動のフィールドワークをするなかで,住民の健康管理・疾病予防のうえで高血圧への対策がとても重要だとわかったことが現在の研究テーマとの最初の出合いでした。

 医学部卒業後すぐに公衆衛生学に進むことも考えましたが,諸事情で内科に入局したのも今では良い選択だったと思います。第一線の病院での研修で,脳卒中や心筋梗塞で担ぎ込まれ,ばたばたと死に至る患者さんを主治医として見送り,予防医学への情熱を再燃させて公衆衛生学の大学院に入りました。大学院では当時の岡田晃教授,中村裕之助教授(現高知大学教授)のご指導のもと,長年続いていた石川県白峰村のフィールドワークの分析を是非と希望し,高血圧発症要因に関するコホート研究の論文を書くことができました。

 大学院修了後も循環器疾患の予防と疫学をテーマにしたいと思い,脳卒中登録やインターソルト研究を手がけておられた金沢医科大学中川教授の研究室に入れていただき,これもまた私にとって大きな出合いとなりました。疫学研究は大規模な共同研究の時代に入り,その中で循環器疾患の疫学をリードされる滋賀医科大学上島弘嗣先生はじめ多くの先輩方と出会い,生活習慣病介入研究や国際共同研究インターマップで大変多くのことを学ぶことができました。インターマップ研究への参加により出会いは海外へと広がり,循環器疾患の疫学の世界的権威であるNorthwestern大学Jeremiah Stamler名誉教授のもとで勉強させていただくというすばらしいチャンスにも恵まれました。今では国際学会で世界の多くの友人に会う楽しみも生まれています。

 このようなすばらしい出会いの連鎖はまさに幸運の連鎖であり,感謝の一言ですが,一つのことに執着し続ける執念深さも幸いしたかもしれません。今後も循環器疾患予防,ひいては人類の生存(?)に役立つエビデンスを一つ一つ積み上げられるよう,微力を尽くしてゆきたいと思います。