理事長退任にあたって


前 日本疫学会理事長 能勢 隆之


就任早々 倫理指針作成の課題

 平成16年(2004)1月21日から22日まで山形で開催された第14回日本疫学会総会をもちまして理事長を退任致しました。会員および関係者の皆様には任期中の御支援・御協力に心より御礼申し上げます。
 平成13年(2001)1月に理事長に就任以来,すぐに疫学研究の倫理指針の作成という課題が勃発しておりました。厚生労働省,文部科学省のそれぞれの関係あるいは合同の会議で種々の案が検討されていて,疫学会のメンバーもそれぞれの立場で参画して意見を述べておられました。
 当時たまたま,医学部長を併任していましたので,医学部長会議でも,法医学などの関係者が検討をしていた中に入れていただき,小生(代理,稲葉理事)も検討に加わりました。当初の案では,疫学研究に大きな足かせとなることを危惧していましたが,関係されました疫学会会員の皆様の努力のお陰で,法律関係の学会以外の圧力にもめげず,本学会でも日本疫学会「疫学研究を実施するに当たっての倫理指針」(2002年10月25日施行)を理事会が中心に作成し,基本的に各省庁で作成した倫理指針の除外規定を活用することなどにより,大きな支障なく疫学研究が実施できることになり,一息つきました。同時に日本疫学会に倫理審査委員会を設置し,会員の研究の便宜と支援を行うことが可能となりました。

種々の研究分野まとめ疫学会発足へ

 本学会は,1990年に創設され,1991年に第1回総会が東京で開催されました。当時は疫学に関する研究会が各分野(がん,循環器,難病,感染病等)で活発に行われていました。これを一つにまとめて,疫学会として発足することの気運が高まり,学会設置に関与された疫学の大御所の大先生方は大変苦労されましたことを側聞しています。そして,研究分野でなく全国を6地域区分(ブロック)に分け,15名の理事と2名の監事およびブロック別の理事のほかに疫学の研究分野で不足している分野から若干名の理事を選出することで,理事会を構成して本学会の体制を構築されたわけです。
 この趣旨に沿い,本学会は分野ごとに分かれて発表するのではなく,全分野が一堂に会して研究発表と討論するところに特徴をもっています。しかし,これも学会運営を担当していますと,いろいろの観点から検討を行いながら時代に合わせて改変する必要があると感じています。

会員数1,000名超え学会運営もスムーズに

 学会発足当時より会員を増加することが大きな命題であり,歴代の理事長等の活躍により会員数もお陰様で,2002年度より1,000名を超え,学会の経理も黒字に転ずることができました。このことにより,学会の運営もスムーズに行えるようになったと考えています。これも,会員の皆様の御支援の賜ものと深く感謝しております。
 最後になりましたが,在任中,理事や多くの先生方に無理なお願いや業務をお願いしたにもかかわりませず,快くお引き受けいただき,業務を遂行していただきましたことを,心より御礼申し上げます。また,事務局を担当してくれました教室のスタッフの御尽力に重ねて御礼申し上げます。
 日本疫学会の益々の御発展を祈念して退任の挨拶を申し上げます。
 ありがとうございました。