ある研究室の一日
昭和大学医学部公衆衛生学教室の皆さん。前列左より,
白澤,星山,川口,神山,後列左より田中,星野,神田
先生の面々
昭和大学医学部
公衆衛生学
川口 毅研究室
昭和大学医学部公衆衛生学
神田 晃
昭和大学医学部公衆衛生学教室は,「社会に役立つ公衆衛生」を基本として,教育や研究を進めています。スタッフは川口 毅教授,星山佳治助教授,神田 晃助教授,神山吉輝助手,白澤貴子助手,星野祐美研究補助員の計6名と,スタッフを支える田中久美さんです。
地域とのつながりを重視
行政官出身の川口教授は,保健所長,厚生省(当時),県衛生部長等を経て,平成6年(1994年)に本研究室の教授に就任しました。その豊富な経験と行政の関わりを活かして,地域レベルの保健医療から市区町村,都道府県,国レベルの政策の企画,立案,実行から評価まで,幅広い領域にわたって,現場の公衆衛生活動と密接な関係を持ちながら,大学での研究を進めています。
現在進行中の研究テーマは,保健事業の評価方法,生活習慣病における保健行動と医療経済的評価(東京都世田谷区や茨城県つくば市における筋力トレーニングの効果,花粉症の医療費への影響等),埼玉県伊奈町における小児肥満と生活習慣病予防に関す研究,足尾町における健康管理システムの開発,東京都内幹線道路住民の騒音に対する健康影響の疫学,全国の血液製剤の適正使用に関する評価,がんの疫学,「健康日本21」の指標設定に関する研究,食物アレルギー予防等で,広範な研究分野を教室員がそれぞれ分担して行っています。
研究以外でも,地域とのつながりを重視して,地域保健医療計画の効果的な実施・評価などについて,講演や保健相談を行ったり,国や東京都の幾つかの区市で,地域保健に関わる委員会等に出向いたりして積極的に支援,助言を行っています。また,これからの生涯健康教育の進展を担うスペシャリストの養成のため,日本健康教育士養成機構が主宰する,健康教育士の養成と認定制度の進展の一助として,研究室ぐるみで,順天堂大学の大津一義教授をサポートしています。
ユニークな「公衆衛生ゼミナール」
昭和大学医学部における学生の教育にも,大いに力を入れています。社会医学の広い視点を持ち,治療のみならず予防を良く理解する医師を育てるため,公衆衛生学講義は,スタッフが常に講義内容をアップデートしながら工夫して,斬新で,学生への評価が高い講義を行っています。それに加え,第5学年においては,必修科目の実習である「公衆衛生ゼミナール」を実施しています。公衆衛生ゼミナールは,学生が4〜5名ずつスモールグループを作り,公衆衛生に関わるテーマを自分達自身で選び,調査研究ないし実験医学研究を行うものです。実習期間は,研究計画の立案から研究の実施,発表,論文作成まで約10カ月にわたります。まず,自分達が選択したテーマの是非を学会形式の「テーマ検討会」で発表・討議し,テーマの見直しと実施への指針を学生達自身が検討し合います。テーマが不適切ないし実現可能性が低いと判定されれば,その時点でやり直しとなります。研究実施後は,学会発表と同形式の「発表会」を行い,最後は,研究を学術論文投稿規定に則った論文にまとめます。全ての行程で基準を満たした班に単位が与えられます。各段階で水準の低い班は,やり直しを命ぜられます。このゼミナールは,予め教官が手持ちのテーマを学生に手伝わせるような手軽な実習では全くなく,学生自らのアイデア,オリジナリティー,実行力,研究をまとめる力や,社会的責任を培う,他ではほとんど見られないユニークなものです。それだけに,スタッフの負担は大変大きいのですが,医学教育の最も重要な一部分として,毎年尽力しています。
本学卒業生の多くは,臨床の場で医術を磨くのは勿論ですが,公衆衛生講義や公衆衛生ゼミナールで予防医学に興味を持った学生が,すでに東京都衛生局,厚生労働省などに就職しており,将来の公衆衛生行政を担う者として期待されています。
医療系専門職・教員への研究指導も!
教室のもう一つの活動として,医療系の専門職・教員に対する研究の指導を行っています。すなわち,保健師,看護師等を対象に,研究計画の企画・立案から実施,論文作成に至る一連の課程の習得を指導しています。これは,将来にわたって保健医療福祉系専門職の研究活動を発展させ,地域・職域や教育の現場での効果的な保健医療活動を推進させて行くための技術,取り組み方を身に付けてもらうことが目的です。
以上,本教室は,社会への貢献を重視した,活きた公衆衛生を周知し,実践することを旗印に,広範かつ専門的な公衆衛生領域での活動の展開に努めています。