ある研究所の一日
活動方針は「地域の一番課題に取り組む」!
岩手医科大学衛生学公衆衛生学
岡山 明
研究を支えてくれる袖林さんをはじめとするスタッフも粒ぞろいであり,次から次へと広がる仕事をこなしている。ようやく自前のデータセットが出来たので,そろそろ成果物に取り組む時期である。
「この調査のドライランの担当は誰だっけ」,岩手医大にほど近い矢巾町で町民から無作為抽出した対象者に行う栄養・代謝量・心機能・運動能力・骨に関する総合的な調査のドライランがいよいよ始まる。「本調査の前にはドライランを行う」という方針に基づき,最後の流れの確認である。
このドライランでは指定された時間内に出来ない調査もあり,本調査に向け最後の調整を行った。担当の小野田講師は本調査に向け対象者の募集に余念がない。微量分析を専門とする坂井助教授は,フッ素と骨代謝の観点から取り組み血液検査の精度管理を担当している。当地では臨床各科,他機関との連携もよく,この調査も循環器を専門とする第2内科,岩手大学体育学部,岩手県予防医学協会との共同研究である。
研究開始から2年を経てようやく手応え
「小栗先生,宮古医師会への依頼文書はどうしよう?」,宮古地区で進む地域住民の喫煙率を下げる研究では,研究開始から2年を経過してようやく手応えを感じ始めたところだ。宮古医療圏を介入地区,久滋医療圏を対照地区に設定した地域介入研究である。医療機関からの禁煙希望者を市町村保健センターに円滑に紹介することで,喫煙率が低下可能か否かが研究課題である。第3内科とともに基幹病院・医師会・歯科医師会・薬剤師会などの全面的な協力を得て,紹介システムの有効性を検討している。担当の小栗助手は,宮古地区へ往復4時間の道のりを,足繁く通っている。
草の根レベルの啓発活動「北リアス健康塾」
昨年4月から赴任した西助教授は,全国でも有数の自殺多発地区である久慈医療圏を介入地区,宮古医療圏を対照地区として設定した自殺率低下のための研究の事務局を担当している。「北リアス健康塾」と称して草の根レベルの啓発活動を企画している。こちらの方は,本年度より精神神経科と共同で取り組んでおり,大学院生の智田先生が地域住民を対象とした調査を基にうつ尺度の有効性の検討に取り組んでいる。新任の黒澤助手も精神科の出身で,臨床的な観点から地域におけるうつ診療体制の問題点を検討している。
「ひとり1プロジェクト」が嘘のよう
循環器疾患の危険因子に関する研究では,「岩手県北コホート」として2万人のコホートを3年計画で立ち上げつつある。この研究は脳外科・第2内科・岩手県予防医学協会,地区医師会と共同で実施しており,ミニ産学協同プロジェクトとなっている。今の時期は次年度候補地区への打診が主で,端境期のため担当の小野田講師は,矢巾町の調査にかり出されている。「ひとり1プロジェクトをこなすようになろう」といっていたのが嘘のようだ。
そろそろ成果物に取り組む時期
当教室では「地域の一番課題に取り組む」ことを活動方針として研究課題を決めてきた。研究を支えてくれる袖林さんをはじめとするスタッフも粒ぞろいであり,次から次へと広がる仕事をこなしている。ようやく自前のデータセットが出来たので,そろそろ成果物に取り組む時期である。