学会報告


第15回日本循環器病予防セミナーを終えて


実行委員長・金沢医科大学公衆衛生学 中川 秀昭


 第15回日本循環器病予防セミナーが7月14日から19日まで5泊6日の日程で石川県加賀市片山津温泉において開催された。47人と第1回セミナーに次いで多い受講生にご参加いただくことができた。
 講義は「21世紀の臨床疫学」と題した札幌医科大学名誉教授の飯村攻先生によるオープニング・レクチャーで始まり,疫学の基礎,臨床疫学,各疾患の危険因子,各疾患ガイドラインと盛り沢山であったが,特に今回は疫学の基礎の理解に重点を置いた。また,特別講義として,飯村先生の他,滋賀医科大学上島弘嗣教授による「NIPPON DATA」,富山医科薬科大学鏡森定信教授による「富山出生コホート研究」,埼玉県立大学副学長柳川洋先生による「健康日本21」のお話をいただいた。最後に放射線影響研究所名誉顧問の重松逸造先生による「予見医学」,また国立循環器病センター名誉総長の尾前照雄先生による「我が国における循環器予防の将来」と題した特別講演で締めくくっていただいた。本セミナー卒業生を中心とした中堅の先生方による熱のこもった講義や,飯村先生,重松先生,尾前先生の大先達の示唆に富んだ講演は受講生にとって大変意義深く,今後の研究に大いに利するものであったと考えている。
 また近年恒例となっているグループ演習では,8グループに分かれて疫学研究の想定プロトコール作成を行い,最終日にその結果発表と優秀グループの表彰を行った。
 今回のセミナーのプログラムを作る時には最初あれもこれもと欲張ってみたが,時間的制約で,削減を余儀なくされ,必ずしも十分な質・量の講義を盛り込めたといえないが,受講生にとっては満足のできるものであったと考えている。それでも講義22コマに演習を加え,内容的にはかなりタイトなスケジュールであった。しかし,受講生は最後まで熱心に受講し,また,演習ではほとんどのグループが連日,深夜まで討論を続け,講師陣をうならせるほど立派な結果発表が行われた。
 セミナー開催にあたっては日循協理事長上田一雄先生に全面的にご支援をいただいた。また,中村好一先生(自治医科大学教授)にはグループ演習の企画・実行を担当していただくとともに,児玉和紀先生(放射線影響研究所疫学部長)には実施に当たって様々なご助言・ご援助をいただいた。各講師の先生方にはご講義の他にも,グループ演習のチューターとして朝から晩まで仕事をしていただいた。関係各方面のご協力・ご支援に厚くお礼申し上げます。
 幸いにも本セミナーは来年第16回が北里大学教授和泉徹先生の下で開かれることになっており,第17回も決まっていると聞いている。本セミナーが今後ますます発展し,わが国の循環器疾患の予防・疫学を担う若き研究者・実践者を輩出し続けることを期待している。