昨年5月末,筆者は日本循環器学会と日本循環器管理研究協議会の主要な方々の協力を得て第5回国際循環器病予防会議(International Conference on Preventive Cardiology)を大阪で開催した。この会議を通じて感じたことは,日本の臨床医は未だ未だ予防医学に関心がうすいということであった。
初日,歓迎レセプションにはDr. Stamlerをはじめ欧米の代表的な予防医学者が多く参加されたが参加者の多くは外国の方々で,外国で行われる会議に少数の日本人が参加した格好のように思えるほどであった。4年前のカナダのモントリオールで行われた第4回会議への日本の参加者はさらに少なかったのであるが,臨床関係の国際会議には日本からの参加者が多く外国の人たちの関心を引くほどになっていることを思うと,日本はこれから予防に力を入れる必要性を強く感じた次第であった。
臨床医学と疫学,公衆衛生学の連携が不可欠
近年EBM(Evidence Based Medicine)の言葉がほとんど流行語のように使われているが,それはとりも直さず臨床判断のもとになる実証された科学的根拠が日本には乏しいことを一方では物語っているように筆者には思えるのである。欧米のデータを多くその根拠としてとり入れた日本人向けの診断・治療のガイドラインが各種疾患について作られているが,疾病の自然歴(natural history)と治療の効果を示す日本人のデータは甚だ乏しいのが現状である。その点においては日本は未だdeveloping countryの域を遠く出ておらず欧米追随の治療医学,予防医学ではないかといわれても致し方がないとさえ思う。その克服のためには臨床医学と疫学,公衆衛生学の連携と共同作業が必要不可欠である。それが真に国民のためになる医学・医療の道をひらくことにつながり,外国に輸出できる予防医学・臨床医学を生む基盤になると信じている。