Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.19-6

日本人におけるK6得点で評価される心理的苦痛と関連する要因:大崎コホート2006研究

栗山進一(東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)、中谷直樹、大森芳、島津太一、菊地信孝、柿崎真沙子、曽根稔雅、佐藤文美、永井雅人、菅原由美、アクタルムニラ、東口みづか、福地成、高橋英子、寳澤篤、辻一郎

【背景】Kesslerらが開発して近年国際的にも広く用いられている簡易調査票K6を用い、地域住民を対象として、心理的苦痛(Psychological distress; 心理的な苦痛を感じている状態、抑うつ・不安などを含む)と関連する要因を検討した報告はアジアからは存在しない。
【方法】大崎コホート2006研究は、2006年12月に宮城県大崎市の40歳以上の全住民に対して行ったベースライン調査に協力した49,855人(回収率64.5%)で構成される。本研究では、K6に回答した43,716人(男性20,168人、女性23,548人)を対象に分析を行った。K6は、6項目の質問(神経過敏か、絶望的か、そわそわ落ち着かなく感じるか、気分が沈みこんで何があっても気が晴れないか、何をするのも骨折りか、自分は価値がないと感じるか)に対し、いつも、たいてい、ときどき、少しだけ、まったくない、の5段階で回答する調査票である。本研究ではKesslerの提唱に従い、各問について、それぞれ0-4点を配分した合計点24点満点のうち13点以上をもって「心理的苦痛あり」と評価した。この質問票の妥当性、信頼性はすでに確認され、K6を用いることで抑うつ性障害や不安障害を鋭敏に検出できることが報告されている。性、年齢などの各種の特性、医学的要因、生活習慣、社会的要因と「心理的苦痛あり」の関連を、多重ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。
【結果】全員を対象とした解析では、女性、若年または高齢、疾患既往歴(高血圧、糖尿病、脳血管障害、心筋梗塞、がん)あり、現在喫煙、過去飲酒、低いbody mass index、短い1日歩行時間、ソーシャルサポートの欠如(5つのスケールのうち4つ)、地域活動への不参加(5つのスケールのうち4つ)が、統計学的に有意に心理的苦痛と関連していた。対象を40-64歳の男性に限ると「困ったときの相談相手がいないというソーシャルサポートスケールの欠如」及び「糖尿病の既往」のみが関連し、65歳以上の男性では対象者全員の結果とほぼ同様であったが、年齢及び現在喫煙と心理的苦痛との間に明らかな関連はみられなかった。女性に限った解析においても全員の結果とほぼ同様であったが、40-64歳の女性では脳血管障害との関連がみられず、65歳以上の女性では現在喫煙との関連がみられなかった。
【結論】多くの要因がK6で評価される心理的苦痛と関連していた。しかしながらこれらの関連は、男性と女性、若年者と高齢者では異なっていた。
キーワード:横断研究、K6、地域住民、心理的苦痛
P294~302

 
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