Journal of Epidemiology

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日本語抄録

 

Vol.18-1

女子短大生の休・退学の予測因子に関する1年間の追跡研究

村井秀子(大阪成蹊短期大学総合生活学科栄養コース)、中山健夫
【背景】近年、わが国では、大学・短大進学後に休・退学する学生が増加傾向にあり、その多くが精神面での問題をかかえていたと考えられる。そこで、著者らは、新入生に対するメンタルヘルスの支援体制の確立を目指し、質問票および追跡調査を実施し て女子学生の休・退学発生の要因を探ることにした。
【方法】1998年~2002年、大阪府下の女子短大に入学した学生485人を対象に、生活習慣、学生生活、主観的良好状態(GWBS:General Well-Being Schedule 日本語版使用)、セルフエスティーム、情緒的支援網について質問票調査を行った。さらに、1年間の追跡調査を行い休・退学情報を得た。
【結果】調査期間における入学後1年以内の休・退学者は37名。休・退学学生は在学学生に比べ、生活習慣、学生生活について消極的で健康に好ましくない回答が多く、主観的良好状態も低値を示し安定性に欠けていた。セルフエスティーム、情緒的支援網の各得点については両者間に有意差は認められなかった。ロジスティック回帰分析により、休・退学の予測因子として、興味のあるクラブ活動がない、喫煙する、GWBS下位尺度の生活満足度・情緒安定性得点が低値を示す、これら3項目が認められた。
【結論】入学時の学生の心理状態や生活習慣の調査結果から、休・退学のリスクを有する学生の判定が可能になると思われる。高リスクの学生に対しては学習を継続させるためにより一層の支援が必要である。
キーワード:学生、追跡研究、退学、メンタルヘルス、学校保健 (P26~36)

日本における多重心血管疾患危険因子を識別するための適切なウェスト周囲径カットオフ値:大規模横断研究

成澤幸子(新潟大学医学部保健学科)、中村和利、加藤公則、山田一美、佐々木寿英、山本正治
【背景】日本において、多重心血管疾患危険因子を識別するための現在標準的なウェスト周囲径カットオフ値に関しては、まだ議論の余地が残っている。本研究の目的は、日本人の大規模集団における健康診断データを分析し、ウェスト周囲径カットオフ値の修正を提案することである。
【研究方法】本研究の対象者は2006年4月から2007年3月に人間ドックを受診した12,725人であった。医学的検査により、ウェスト周囲径、トリグリセリド、HDL-コレステロール、空腹時血糖、血圧を測定し、人口統計学的特性をも収集した。多重心血管疾患危険因子、すなわちメタボリックシンドロームの日本基準による脂肪代謝障害(高脂血症または低HDLコレステロール)、高血圧、高血糖のうち2つ以上である場合、を識別するための適切なウェスト周囲径カットオフ値を見出すため、受診者動作特性(ROC)曲線分析が用いられた。
【結果】平均年齢は、男性50.7歳(SD;8.8)、女性49.7歳(SD;8.6)であった。ROC曲線分析により、ウェスト周囲径が男性87cm(感度0.66、特異度0.62)、女性83cm(感度0.73、特異度0.70)で感度と特異度の和が最大であることを示された。年齢別分析では、若年層のROC曲線が高齢層に比べ左上方に位置していたが、カットオフ値と年齢の関連性は明らかでなかった。 【結論】日本において、多重心血管疾患危険因子を識別するための適切なウェスト周囲径カットオフ値は男性87cm、女性83cmである。
(P37~42)

 
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